2016年04月26日

評価を通じての能力開発

 前回、高大接続を底支えするインフラとして、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」への期待を書きました。高校教育の質の担保や学力把握の仕組みを、大学の入学試験に依存しない形で作り上げていくことが重要であると思うからです。

 この点について諸外国の高大接続を比較して見ると、ヨーロッパ諸国やその影響をうけた旧植民地諸国では、フランスのバカロレア、ドイツのアビトゥアなど、国や州レベルでの中等教育修了資格(試験)が制度化され、それがすなわち大学入学資格や選抜の指標として用いられます。近年注目される国際バカロレアも、国際バカロレアが定める教育課程(DP課程)の修了資格として制度化され、国際的に同等の機能を果たしているのです。

 一方アメリカ合衆国では、ヨーロッパ諸国のような統一的な中等教育修了資格は制度化されず、また日本・中国・韓国のような筆記試験型大学入試とも違う、独特の高大接続インフラがつくられました。SATやACTといった標準テストはその代表的なものです。志願者は大学への出願に先立って、年に複数回実施されるそれらのテストを適宜受験し、そのスコアがアドミッションオフィスによる審査の材料となるのです。

 またテストとは違う形で、志願者の学力・資質を統一的に判断できる材料として活用されているものにアドバンスト・プレイスメント(Advanced Placement=AP)という制度があります。(深堀聰子「米国における高大接続の取組─ アドバンスト・プレイスメントによる共通理解形成 ─」『IDE現代の高等教育』2016年4月号に詳しく紹介されています。)

 このAPは、大学一般教育レベルの授業科目を高校生が在籍する高校で履修するプログラムで、その授業は当該高校の教員がカレッジボード(SATの実施団体でもある)の認定を受けたシラバスに基づいて行います。この科目を履修した生徒は、高校の単位として認められるとともに、高い成績を得た場合には大学における既修単位としても認められます。また当然に入学審査の段階においても、志願者がAP科目をどのような成績で履修しているかどうかが、有力な判断材料の一つとして重視されるのです。

 なおAPの成績評価は、毎年5月に一斉実施される試験によってなされ、それは多肢選択式問題と記述式問題から構成されていますが、記述式問題の採点は、6月に所定の資格を有する高校教員と大学教員が一堂に会して実施されます。

 このように高校教員が大学教員と協働して記述試験の採点に参加する事は、それ自体が高校教員の能力開発の貴重な機会となっていると思われますが、我が国においてもこのような仕掛けを積極的に取り入れていくべきと思います。
 
(出光 直樹)

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危機感からの学び

 今も余震が続いている熊本地震は、4月14日の21時26分頃に最大震度7が観測された。さらに、その28時間後の4月16日1時25分頃には、同じく熊本県熊本地方を震源とする、再び最大震度7が観測された。気象庁は同日、後者(16日未明)の地震が本震で、前者(14日)の地震は前震であったと考えられるとする見解を発表している。

 今回の地震は、私にとっては身近なものとなっていました。それは昨年4月から、長女が熊本県八代市で教員として勤務しているのです。八代市にも2度、現地の高校訪問を兼ねて行っていました。そんな矢先に熊本で大きな地震が2度もあり、市役所が崩壊している映像などを見ると心配で仕方がありませんでした。

 熊本県や八代市に何かできることはないのか。自問自答していた時に早々に南阿蘇村と菊池市がふるさと納税の仕組みを使って、見返りのないふるさと納税のサイトを立ち上げたのを知りました。私はその情報を、市役所を建て替えると発表のあった、八代市のHPから窓口にメールしました。以下がやり取りの抜粋です。4月19日、「八代には縁があるのでふるさと納税の仕組みを使って納税させてほしいです」4月20日、「皆さまからのご厚意を無駄にしないためにも、秋草様からご紹介いただきました方法で、「災害用の緊急フォーム」というものを作成し、災害支援の方が簡単にふるさと納税ができるよう、現在検討しております」4月22日、「さて、先日のメールで御案内しておりました、ふるさと納税「災害用緊急フォーム」を作成しましたのでご連絡差し上げました。ご検討のほどよろしくお願い致します。」というように地震被害の対応などで大変な時に、私から4月19日にメールが入ってからわずか3日後には対応していただけたというスピード感ある緊急対応でした。今まで市役所の仕事は、のんびりとしていて、スピード感などないと勝手に思っていましたが、危機感がある中で対応できる八代市の職員の方々の八代市と市民を守るという気概を感じました。この時、ふと思い出したのが、真義さんが閉校した短大に出向いたときに感じたというあの言葉でした。「閉校が決まってからの教職員の団結がすごかった。もう少し早く気づいていれば閉校しなくてもよかったかもしれない」という違和感のある言葉です。

 しかし、この言葉を思い出した時に、もしかして私たちの遺伝子の中に危機感の中に、何か特別な感情が沸き起こり、今まで以上の力を発揮できるようプログラムが出来ているのではないかと思いました。大学も定員割れを起こしてからV字復活した話を耳にします。だらだらと定員すれすれの状況では、大学は大きく変えられないのかもしれないと地震から学んだ気になりました。ちなみに、すぐに八代市にふるさと納税させて頂いたことは、いうまでもありません。
(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2016年5月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2016年4月26日(火) 午後6時〜9時+食事会

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2016年04月22日

FMICS 4月例会 (第672回例会) 就活スケジュールの変更につぐ変更どうなる就活2017 学生・大学・企業は何をすべきか

●高等教育問題研究会 FMICS 4月例会は、日本経済新聞社日経カレッジカフェ副編集長・日経就職ナビ編集長の渡辺茂晃さんをお迎えします。コメンテーターは、人事コンサルタント荻野恵一さん、東京成徳大学生生活課長寺田稔さん、桜美林大学リベラルアーツ学群4年生磯部愛香さんです。

●就活スケジュールは、学生にはより多くの時間を学びに充てるべきだということで、めまぐるしく変更されています。この変更は、学生たちのためのものなのでしょうか。選考が2カ月前倒しされた2017、学生・大学・企業は何をすべきかについてお話しいただきます。

★渡辺さんからのメッセージです。
 昨年に続いて2年続けて就職活動スケジュールが変更されたことによって、就職活動にはどんな影響が出るのでしょうか? 就活解禁から1カ月が過ぎた現在、就活戦線は落ち着いているように見えます。今春入社した先輩たちの就職環境が良かったこともあり、学生ものんびりしているように見えます。単にスケジュールが前倒しになっただけで選考そのものに大きな変化はないという声も聞こえますが、本当にそうなのでしょうか? 就活解禁の3月1日から6月1日の選考(面接)開始まで、就活期間は過去最短となっています。これによる影響はどんなことがあるのでしょうか? 就活をする学生はどんな対策が必要なのでしょうか?

●渡辺さんは、2016年1月に『人気企業内定者に聞いた 面接の質問「でた順」50(2017年度版)』を上梓されました。著書には『実況中継 これまでの面接VSこれからのコンピテンシー面接』などがあります。間違い・勘違いだらけの面接の極意についても紹介していただきます。大学関係者はもとより、短期決戦を強いられている就活本番の学生さんには、是非ともお声掛けくださいますようお願いいたします。
 

●ワイワイガヤガヤと大いに語り合った後は、四川中華料理「陳記」で情報交換会をいたします。

【日時】 2016年4月22日(金)
   月例会 午後7時〜9時
   懇親会 午後9持〜10時30分

【会場】 桜美林大学 四谷(千駄ヶ谷)キャンパス SY304教室
   (JR 千駄ヶ谷駅 徒歩6分 / 地下鉄 北参道駅 徒歩5分)

【テーマ】 就活スケジュールの変更につぐ変更どうなる就活2017
   学生・大学・企業は何をすべきか


【問題提起】 渡辺 茂晃 (日本経済新聞社日経カレッジカフェ副編集長・日経就職ナビ編集長)

 コメンテーター
  荻野 恵一 (人事コンサルタント)
  寺田 稔 (東京成徳大学学生生活課長)
  磯部 愛香 (桜美林大学リベラルアーツ学群4年生)

 司会
  高橋 真義 (桜美林大学 大学アドミニストレーション研究科教授)

【参加費】 会員1,000円 非会員2,000円 学生(会員・非会員問わず)500円

【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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2016年04月18日

FMICS SD 293

■激動の時代を教育業界の枠にとらわれることなく、多面的・大局的視座からじっくりと展望いたします。新聞・雑誌等から教育&経済トピックスを持ちより、侃々諤々とディスカッションいたします。トピックスは、厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、簡単なMEMOを付してご持参ください。10分間程度のコメントをしていただきます。

【日時】 2016年4月18日(月) 午後6時30分〜8時30分

【会場】 四谷・蔵や
(JR・東京メトロ 四ツ谷駅 徒歩1分)
*会場の予約名は「フミックスの高橋」です。


【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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2016年04月08日

「高等学校基礎学力テスト」への期待

 去る3月31日、文部科学省の有識者会議・高大システム改革会議が「最終報告」を出しました。教育再生実行会議の第4次提言(2013年10月)、中央教育審議会のいわゆる「高大接続改革答申」(2014年12月)、そして「高大接続改革実行プラン」(2015年1月)をうけて昨年2月に設置された同会議は、高校教育、大学教育、そして大学入学者選抜の三位一体の改革の具体案を検討し、提言をとりまとめました。

 現行の大学入試センター試験に取って代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(まだ仮称)と、新たに導入する「高等学校基礎学力テスト」(同じく仮称)のあり方について注目が集まっていますが、両者ともに、まだまだ詰めるべき課題が山積です。

 この2つのテストに対する私の考えですが、まず「大学入学希望者学力評価テスト」については率直なところ、現行のセンター試験の廃止ありきで突っ走るべきではないと思っています。もちろん、長期的には記述式の導入などで評価できる能力の幅が広がることは良いと思いますが、個別入試で対応出来る事もあり、限りのある改革リソースの割り振り先として、優先度の高いものとは思いません。それよりも現行のセンター試験で変えるべき点は、費用対効果の悪い英語リスニングを廃止することと(その機能は必要に応じて各種検定試験で代替)、降雪等のリスクが高くその後の大学入学までの日程が窮屈な現行の1月実施を12月に早める事と思っています。

 一方「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については、高大接続を底支えする大切なインフラとして、重点的に育てて行くべきものと思います。我が国の高大接続は、激しい進学競争の背景のもとにもっぱら大学入試の「選抜」のあり方に焦点があたり、高校教育の質担保や学力把握の仕組みそのものについては、適切な制度化や改革が伴わないままでした。

 しかし、大学入試の選抜機能だけで高大接続の諸課題を解決することは不可能であり、土台となる高校教育の質の向上には、大学入試とは別のインフラ(学力把握の仕組み)が不可欠です。

 なお提言では、2019年度から2022年度までの基礎学力テストは「試行実施期」と位置づけ、その間は大学入学者選抜(や就職)には活用しないとしています。“過度に利用された場合には、高校生活への悪影響を与えるおそれがあることも踏まえ”ての理由だそうですが、それは杞憂が過ぎるでしょう。選抜制の高い大学にとっては、選抜のツールとして直接的に活用する事は考えにくいです。しかし推薦入試などにおいて高校の成績を評価する際に、学校間の差を補正したり、学校内の成績順位は低くとも実力のある生徒を評価する指標などとして、良い形で活用出来る事を期待しています。
 
(出光 直樹)

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未知なる研究会

 先日、ガイダンス業者が主催する面白い企画に参加した。この企画の当初の案内は、埼玉県内の教員を対象にした「進路指導研究会」となっており、本学は不参加としていた。なぜ、不参加にしたかは、他のガイダンス業者が主催する同様の企画に辟易していたからである。それは、「進路指導研究会」とは名ばかりの上級学校が、高校教員に対してのPR合戦だからであった。まあ、今回の企画も同様な結果だと思い込んでいた。その後、もう一度担当者から、私に直接電話があり「ぜひ参加してください」と懇願されたので、お付き合いだと思って参加した。

 しかし、この思い込みが新たな「進路指導研究会」で見事に覆されるとは予測していなかった。会場に入ってみると高校教員16名に対して、「公務員」、「理容・美容」、「栄養・調理・製菓」、「動物」、「音楽」、「コンピュータ」、「簿記・会計」、「保育・幼児教育」の分野の学校の担当者が座っていた。「保育・幼児教育」分野以外はすべて専門学校だったのが印象的だった。             

 そこで司会者が、各学校の自己紹介の後に、高校教員が知りたい、教えてほしい質問を用意していて、すべての学校に鋭い質問を浴びせた。その質問内容は「公務員」分野では、「高卒、大卒、専門卒の違いは?採用試験の難易度、職場、役職、給料の観点から。大学の公務員コース(○○大学など)で公務員を目指す必要はあるのか?」に対して、「大学からの公務員試験は、優秀な大学の方々と勝負になるので、ただ公務員を目指すのなら高卒や専門学校から進む方法を考えさせる手もある。」また、「動物」分野では、「動物分野は就職が厳しいというが、ドッグトレーナーは特に厳しいと聞く。ドッグトレーナーを目指す場合、就職や職場の状況は?また目指している生徒がいた場合、その厳しさの伝え方や諦めさせ方は?」という質問に、「はっきり言ってドッグトレーナーはそんなに簡単なものではない。私に相談があった場合は、危険性が高いのであきらめた方がいいと答える。」など、誰もが興味を示す質問に真摯に応える研究会であった。この冒頭の勢いのまま進んだ研究会は、質疑応答が活発に行われ有意義な時間があっという間に過ぎた。進路担当の教員にとっては、聞きたいけれどなかなか言い出せない質問だったと思う。この質問にしっかりと受け応えた、当該学校の方々は本当にあっ晴れだった。

 終了後は、司会を担当した二人の業者に賞賛を称え、次回の開催を期待していると伝えた。結局は当初のうがった見方を覆された気持ちのいい研究会となっていた。同時に今後は学校選びを本音で語り合える「場」を創って欲しいと願うばかりであった。しかし、内心は本音で語ってもいいのかという学校も多いことも承知しているので、ここは早急に学生のための大学改革を進めていただきたいと切に願うばかりである。
(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2016年4月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2016年4月8日(金) 午後6時〜9時+食事会

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2016年04月01日

FMICS あざみ野 SD 79

●ゼミナール型勉強会「SD(Staff Development)」の首都圏西部地域での集いです。この勉強会の原理は極めてシンプルです。参加者がそれぞれにネタ(話題)を持ち寄り、みんなで議論します。

【日時】 2016年4月1日(金) 午後7時〜9時+懇親会
 *次回は5月20日(金)に桜美林大学 四谷(千駄ヶ谷)で開催します。

【会場】 横浜市山内地区センター 会議室3A
  東急田園都市線・横浜市営地下鉄 あざみ野駅徒歩3分
  (横浜市青葉区あざみ野2丁目3−2 山内図書館と同じ建物です)
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