2016年10月25日

新テスト・記述式試験の行方<後編>

<中編から>

 国立大学協会の「論点整理」(8月19日)や、文部科学省の「高大接続改革の進捗状況について」(8月31日)において、新テストの記述式試験の具体的な実施方法に関する複数の案が示され、その中でも、答案の採点を受験生が出願する各大学が個別に実施する案がクローズアップされてきました。

 それに対し日本私立大学団体連合会は、10月5日に「『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』の検討状況についての意見」を発表し、記述式問題を各大学が採点する案について、反対を表明しました。理由として挙げられているポイントは2つで、1つは共通テストとしての採点の信頼性・妥当性に関する懸念、そしてもう1点はやはり、2月上旬から個別入試を実施する私立大学にとって、新テストの記述式試験の採点をするのは実質的に不可能という点です。

 しかし10月18日の毎日新聞の報道によれば、それでも文部科学省は、各大学で採点する方針を固め、11月4日に開催される国立大学協会の総会で説明する方向で調整しているとのこと。これが本当だとすれば、あまりにも残念な対応です。

 そもそも記述式問題の具体的な採点方法については、「高大接続システム改革会議」の最終報告や「高大接続改革の進捗状況について」においては、問題形式や回答字数等の諸条件に応じた採点者の実働人数や日数等の詳細な試算は示されているものの、その担い手としては、民間事業者の活用ということがさらっと書かれているだけで、その点の想定があまりにも甘かったのでしょう。答案のOCR読取やクラスタリング等の採点支援システムを活用するにしても、50万人を超える答案を採点するとなると、多数の採点者に対する研修等もしっかりと手当しなければならないのです。

 しかしそうであればこそ、記述式試験の採点者は受験生を送り出す側の高校教員こそ担い手とし、記述試験の導入が、受験生のみならず高校教員にとっても能力開発の機会となるように位置づけるべきだと思うのです。記述式試験の導入にあたってモデルとして参照されている諸外国の共通試験では、採点者は高校教員が担っている例が多く見られますし、2016年5月号の小論で紹介した米国のAPも、高校と大学の教員が共同して記述式問題の採点を行っています。

 もちろん現行の1月実施のスケジュールでは、高校教員の参画は難しいでしょうから、少なくとも記述式試験は12月頃に実施して、年末年始の期間を利用して採点にあたることが現実的でしょう。高大接続改革が、単に大学入試だけでなく高校教育・大学教育の改善を含めた一体的なものと掲げているのであればこそ、文部科学省には政策官庁としての気概を発揮して、高校の協力も取り付ける形での実施案を取りまとめてほしいと思います。

(出光 直樹)

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カルチャーが人を救う

 先日、IT企業の営業マンのTさんが来学し、本学のネット環境などの様々な提案をしてくれました。そのTさんがあまりにも、イキイキと輝いて見えたので、少し意地悪な質問をしてみました。「ところで、今年の御社の新入社員は何人辞めたの。」最近の私は、企業の方と話す時は、この質問をします。この質問のTさんの答えがとても印象的でした。「弊社では、3年間で一人しか退社していません。その一人は勉強をするために辞めました。」という驚きの返答でした。ここで興味がわいたので、なぜ、辞めないのか理由を聞きました。するとすかさず、「弊社には15のカルチャーがあり、そのカルチャーを全社員が遵守しているからだと思います。」というのです。その15のカルチャーは以下の通りです。

 1、組織成長への貢献、2、本質の見極め、3、スピード&クオリティ、4、プラステクノロジー、5、他部署への尊重、感謝、6、期待+α、7、脱・受け身、8、他責の否定、9、法令とモラルの遵守、10、Execution、11、創造のための効率化、12、変化を楽しむ、13、素直・謙虚・率直、14、迅速なリスク対応、15、知的好奇心の探究。

 なんと素晴らしい話だろうと思い、もうひとつ突っ込んだ質問をしました。「若い人たちは自己肯定感がなく、どこかに正解があると思っていて失敗したくない傾向が強い人が多いが、その対応策はどうしているのか。」すぐに却ってきた言葉が、「それに当てはまるのは、5番の他部署への尊重、感謝です。他部署の存在のおかげで、自部署の業務が成り立つ。私たちは得られる情報や経験の差を認識し、理解を深め、協力しあえる組織である。」と応えてくれました。そして、「答えは教えずに、なぜわからないのか、なぜ出来ないのかを一緒に考えるという仕組みが出来ていて、一緒に働きたいと思える仲間を作っています。」とアッサリと応えられました。Tさんは久しぶりに出会った、素敵な営業マンです。このTさんのような人たちが沢山いる会社となら、一緒に仕事がしたいと誰もが思うのではないでしょうか。

 よく聞くと業界では2番目に大きな会社で、社員は500人を超えているといっていました。500人の社員がいて、3年間で一人しか辞めていない会社なのです。思わず出た言葉が、「本業のITの営業もいいけど、人材育成のコンサルをした方がいい。最近の企業は、人材が辞めてしまうことの対策が出来ていないので、必ず売れるはずだ。」というのと、同時に考えたのは、Tさんの会社のカルチャーが大学の中退問題の解決に繋がらないかです。一度、Tさんの会社に伺ってその空気を感じてみたいと思いました。

(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2016年11月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2016年10月25日(火) 午後6時〜9時+食事会

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2016年10月15日

FMICS 10月例会 (第679回例会) 『大学ランキング』から見続けて来た 私立大学のきのう・きよう・あした

■高等教育問題研究会 FMICS 10月例会は、お二人が同じ席に座られることは、まずあり得ないと言われている、朝日出版取締役書籍本部長で『大学ランキング』前編集長・中村正史さんと『大学ランキング』編集統括・小林哲夫さんに登壇いただきます。

■大学倒産はジワジワと来るものではありません。気がついたときには、ドサッと底が抜けています。高等教育機関のボリュームゾーンを占める私学にとっては、今が、正念場です。浮き足だって、安易に成功事例を追いかけていては戦いには必ず負けます。大学の活きた資産であり、未来の学生さんを元気にできるのか否か。大局観を持って、この原理原則に忠実であること、大学力のボトムUPが急がれます。

■『大学ランキング』を通して23年間の長きにわたって、あたたかく大学を観てこられたお二人のお話に対する指定討論者には、可能性たっぷりで元気な学生さんたちに登壇してもらいます。

【日時】 2016年10月15日(土)
 月例会 午後4時〜7時(受付 午後3時30分)
 懇親会 午後7時〜8時30分

【会場】
 月例会 学校法人立命館 東京キャンパス (サピアタワー8階)
☆「サピアタワー」のセキュリティの関係から午後3時30分〜4時に入館くださいますよう、時間厳守でのご参加をお願いいたします。

 懇親会 パパミラノ・サピアタワー店 (サピアタワー3階)

【テーマ】 『大学ランキング』から見続けて来た
   私立大学のきのう・きよう・あした


【パネリスト】
 ■問題提起
  中村 正史 (朝日出版取締役書籍本部長・『大学ランキング』前編集長)
  小林 哲夫 (『大学ランキング』編集統括)
 
 ■学生指定討論者
  広田 卓未 (桜美林大学 リベラルアーツ学群 1年)
  玉田 侑也 (桜美林大学 リベラルアーツ学群 2年)
  白井 誠也 (桜美林大学 リベラルアーツ学群 2年)
  西川 晟珠 (桜美林大学 リベラルアーツ学群 3年)
  上堀内 太郎 (大正大学 人間学部 3年)
  萩原 美佳 (ヤマザキ学園大学 動物看護学部 3年)

 ■司会
  高橋 真義 (桜美林大学 大学アドミニストレーション研究科教授)

【例会参加費】 会員1,000円 非会員2,000円 学生(会員・非会員問わず)500円

【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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2016年10月03日

新テスト・記述式試験の行方<中編>

<前編から>

 8月19日に国立大学協会の「論点整理」が公表された後、8月31日に文部科学省は「高大接続改革の進捗状況について」を公表しました。この中で、現行の大学入試センター試験に替わる新テスト・「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における記述式試験の導入と実施時期を含む全体の制度設計については、先の国大協の「論点整理」と同様な、以下の3つの案が示されています。
 
【案1】1月に実施し、センターが採点する案

【案2】12月に実施し、センターが採点する案
 @記述式とマークシート式を同一日程で採点する案
 Aマークシート式は従来通り1月に実施し、記述式を別日程で実施する案

【案3】1月に実施、センターがデータを処理し、それを踏まえて各大学が採点する案

 それぞれのメリット・デメリットについての見解も、先の国大協のものとほぼ同じですが、国大協の検討案では避けられてたマークシート式と記述式の別日程での実施案も、案2Aとして列挙されいます。国大協の文書も文科省の文書も、各論併記で特定の案が有力と明記している訳ではありませんが、現行の入試日程の枠組みを前提とすれば、比較的出題・採点の制約の少ない「各大学での採点案」が有力かの様に受け止められ、報道でも強調されているように思います。

 しかしこの各大学での採点案は、おそらく採用されないのではないかと私は思います。1人の受験生の答案を、複数の大学が重複して採点する事の無駄や、入試業務以外でも多忙な各大学教員の負担増への反発もそうですし、2月上旬から合否発表が相次ぐ私立大学の入試日程のから見てみれば、多くの私立大学はこのスキームに乗ることは出来ないでしょう。国公立大学の中ですら、個別採点の負担から記述式試験を利用しない大学・学部が続出することも考えられ、国家的事業としてすすめる高大接続のインフラ造りにふさわしい発想とは思えません。

 新しいインフラを機能させる為には、現行の入試日程の前提そのものを見直して考えるべきであり、新テストを12月に実施することについて積極的に検討すべきと私は思います。受験日程が前倒しになることについての高等学校側の反発が取りざたされますが、すでに推薦入試やAO入試が早期に実施され、一般入試にも活用されつつある英語資格の検定試験なども12月以前に受験をしているのです。そもそも、国公立大学の一般入試受験者の進路決定(合格発表)が、多くの生徒にとって高校の卒業式以降となる3月中旬以降という現行日程こそが不自然であり、高校3年生の2学期に教科に関わる学力試験が実施されることについてタブー視するかの発想は、見直すべきだと思うのです。

<後編へ>
(出光 直樹)

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器は大きく! 入れたら出す!

 自然の摂理は、「入れたら出す」ですね。たとえば、車にガソリンを入れたら、動力となって車を動かすことに変わります。人間も栄養を摂って動き出すように創られています。これが自然なのですが、どうも現実の世界では、何かの知識を入れてしっかりと吐き出すことが出来ない人が大勢います。そのため、吐き出すトレーニングが必要になります。これを大学職員に例えると、学会や勉強会・セミナーなど、様々な場所で入れてきた知識を上手く吐き出せない方が多数いることに気づきました。そんな方々の口々から出てくる話は、大学改革をしたいけど「上が悪くて」、「勉強しなくて」、「理解してくれない」などの言葉がならびます。気持ちはよくわかるのですが、アナタの中にあるその知識をしっかりと伝える努力をしていますか、相手が聞いてくれないのは、アナタにも責任があることを気づいていますか。と問いかけたくなります。

 今回のFMICS例会では、いいたいことをいわせていただき、その中で参加者のみなさんの反応の良かった点を記します。私が常々思っていることは、同じ日本語を話しているのに相手に上手く伝えられないことがあるということです。その原因は、持っている情報の量や質が違うので、同じ言葉を使っても受け取り方が人それぞれ違ってしまうのです。だとしたら、やることは決まりますよね。相手にも自分の持っている情報を共有していただくことで解決策が見えてくるのです。そのために具体的に何をするのか?私は新聞、本、雑誌、セミナーなどの資料から、気になるキーワードの所にラインマーカーを引きます。(なるべく短めに)それを情報共有したいと思う人(理事長や学長など)に持っていきます。そして一言、「お忙しいでしょうから、ラインマーカーの部分だけ読んでください」とお願いします。すると人間は、その周りにある文章も読んでしまうという習性があるらしいです。というわけで、これを繰り返し行うことで、情報共有は出来てきますし方向性も一致するはずです。ここまでできれば、後は会議などで相手を否定せずに発言すればスムーズに事は進むはずです。

 私の辛口の友人Sさんが、最近は「外で元気な大学職員」が増えてきたと思います。といっていましたが、まさに外で元気を出して、うちでも元気を出していただきたいと感じています。大学改革を外で大きな声で話すのではなく、この方法で身近な仲間を作って情報共有する努力をした方が大学改革をスムーズに行えるはずです。SNSやツイッターでつぶやくのではなく、目の前にいる仲間と話をしましょうよ。綺麗な水も同じ場所に溜まっていると澱みますよね。結局は「入れたものを上手に出す」です。

(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2016年10月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2016年10月3日(月) 4日(火)  午後6時〜9時+食事会

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