2017年12月26日

「高大接続改革」の忘れもの<前編>

 もう2年近く前になる2016年4月の小欄に、『「高等学校基礎学力テスト」への期待』という一文を書きました。教育再生実行会議の第4次提言(2013年10月)、中央教育審議会の「高大接続改革答申」(2014年12月)、文部科学大臣決定の「高大接続改革実行プラン」(2015年1月)そして高大システム改革会議の「最終報告」(2016年3月)が出そろい、現行の大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と、新たに導入する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方向性が固まってきたタイミングでの事です。

 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に改革のエネルギーを注ぐよりも、高等学校段階の基礎学力の定着度合いを客観的に把握する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」をしっかりと作り上げることが、高校教育の質の向上につながり、高大接続の土台となると期待を表明しました。4年制大学志願者の約7割を超える50万人以上が志願するセンター試験ですが、センター試験を利用する選抜方式で大学に入学する者は3割ほどに過ぎません。短期大学・専門学校進学者や就職者も含めた教育接続や質の担保の為には、センター試験をいじることでは無く、より基礎的で包括的な学力把握のインフラを、高校と大学の関係者が連携して構築しなければ、意味がないからです。

 しかしその後の展開を見ると、ある程度予想もしてましたが、残念な方向に変わってしまったように思います。2017年7月に公表された「高大接続改革の実施方針等の策定について」において、それまで議論してきた「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の正式名称は、それぞれ「大学入学共通テスト」と「高校生のための学びの基礎診断」とする事になりました。「大学入学共通テスト」は、大学入試センターが引き続きその実施運営の中心組織になるのに対し、「高校生のための学びの基礎診断」については、それまで検討していた大学入試センター(ないしはこれを改組した新組織)による直接実施案などは退けられ、一定の要件を満たした民間の試験等を認定するという仕組みになることになってしまいました。なお、現在その認定基準・手続等についてのパブリックコメント(意見)募集が、1月13日締切で実施されています。

 高大システム改革会議の「最終報告」(2016年3月)の段階でも、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について、当面は大学入学者選抜(や就職)には活用しないとするなど、腰の引けたスタンスが気にはなっていましたが、結局のところ改革のリソースは、「大学入学共通テスト」にばかり注がれてしまったようです。

<後編へ>
(出光 直樹)

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タグ:出光 直樹
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大学50分以内選択

 先日、数校の大学関係者と忘年会がありました。各大学の理事長や事務局長や理事のそうそうたるメンバーでした。その時の会話で印象に残っているのが、「最近の学生の通学時間」です。参加していた大学の方から、高校生から選ばれる通学時間がドアツードアで50分だというのです。自分の偏差値で、推薦合格できる50分圏内の大学に進学するというのです。まるで、短大と同じような話に驚きました。その後、どれくらいのレベルの大学なのか聞きたくて「日東駒専は違うでしょ」というと「いやいや、同じようなもんですよ」というのです。では、どのくらいのレベルの大学が通学時間を考えないで受験するのか聞くと、MARCHクラスでギリギリだというのです。以前、高校の進路の先生方に聞いて驚いたのは、「私の成績で60分で、自転車で通える大学ありませんか」という話でしたが、それが10分短縮していることに驚きました。都心に住む高校生は、通学時間ドアツードア50分が当たり前の感覚になってきているということです。

 なんとなく思い当たるフシがあります。私は、現在東村山に住んでいますが、20年前は高田馬場に住み、職場は新宿や日本橋でした。当時は、時刻表など確認せずに日々通勤していました。なんといっても、池袋や新宿で呑んでいてもタクシーに乗っても2,000円以内で帰宅できる環境でした。都内に住んでいると、どこに行くにも近い感じがしていました。それが、東村山に移り住んで変わったことは、家を出る時には時刻表を確認するという習慣が身についたということです。住んでいる地域によって、人間の行動が変わることを、身を以て知りました。

 ふと気になって、最近の電車の時刻表を調べてみました。山手線のピーク時は、9時台で1時間に22本の電車が走っていました。東西線は8時台で24本、銀座線は8時台で27本です。都内では、ピーク時は当たり前に2〜3分毎に電車が走っている状況です。少し地方の時刻表も調べてみました。栃木県宇都宮駅からJRで東京方面行きは、6時台5本、群馬県高崎駅からJRで東京方面行きは、8本でした。やはり、10分前後に1本という感じです。通学に不便すぎるというわけでもなさそうです。

 現状の高校生たちにとって、何かが変化し通学時間の許容範囲が50分に変わったということだと思います。

 ここで気づかなければいけないのは、50分圏内の大学という表現でくくられている重要性です。高校生にとって、大学のブランド力など関係なく、自分の偏差値で推薦入学できる50分圏内の大学を選択しているということです。大学改革、特色ある大学と騒いだ結果、50分圏内大学選択になっていたという皮肉ですね。

(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2018年1月号 発送作業

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