2019年01月25日

「大学入試英語成績提供システム」の課題 <前編>

 去る1月19日(土)と20日(日)に実施された大学入試センター試験は、全国的に天候に恵まれたこともあり、交通機関の乱れによるトラブルは少なかったようですが、インフルエンザについては“危機的”と報道されたように、例年以上の猛威であったことが、実施の現場では実感していました。2600名程の志願者を受け入れる横浜市立大学では、病気や事故等による追試験の申請者は、例年2名程度であるものが、今年は4倍程にもなり、実施側の教職員や学生補助員の病欠者もそれと同じように続出し、なかなか大変でありました。

 さてこの「大学入試センター試験」は、2年後の2021年度からは「大学入学共通テスト」に衣替えとなります。当初は、複数回実施などの大幅な変更案が議論されてきましたが、結局のところ現実的な線に落ち着き、現行のセンター試験や前身の共通一次試験と同様に、冬の悪天候やインフルエンザのリスクの高い1月中の土日に2日間の日程で実施することには、変わりはありません。

 1年程前の小欄「『高大接続改革』の忘れもの」でもご紹介したが、中央教育審議会の「高大接続改革答申」(2014年12月)、文部科学大臣決定の「高大接続改革実行プラン」(2015年1月)、高大システム改革会議の「最終報告」(2016年3月)までの議論の内容と、文部科学省が2017年7月13日に発表した「高大接続改革の実施方針等の策定について」を見比べると、大風呂敷な議論が些末な形に収斂した様子が見てとれます。

 今回の「大学入学共通テスト」への衣替えで加えられる主な変更点は、記述式問題の導入と、英語4技能評価の導入です。記述式問題については、国語と数学(数学T、数学TA)において従前のマークシート式問題に追加する形で実施され、それぞれ試験時間が、国語80分→100分程度、数学60分→70分程度に延長されることになります。

 英語4技能評価については、共通テストとして実施するのではなく、民間事業者等により実施されている資格・検定試験を活用する形で導入が図られます。これについて当初は、共通テストでの英語の出題を一切取りやめ、資格・検定試験のみを活用する案もありましたが、2020 2021年度〜2023 2024年度入試の4年間は、共通テストでの出題も引き続き実施する事になりました。共通テストの枠組みで活用される英語の資格・検定試験は、大学入試センターが定めた「大学入試英語成績提供システム 参加要件」(2017年11月)を満たしたと確認された資格・検定試験が対象となり、高校3年生の4月から12月までに受検した試験結果のうち2つまでが、大学入試センターを通じて各大学に通知される事になります。そしてこの具体的な運用方法や実施に向けたスケジュールの概要(2018年12月28日)が、ようやく公表されました。

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(出光 直樹)

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カリスマの要らない組織 その2

 第55回全国大学ラグビーフットボール選手権大会準決勝(1月2日、東京・秩父宮ラグビー場)で帝京大学は天理大学に敗れ大学選手権10連覇を逃した。2018年12月28日(金)日本経済新聞オピニオン欄で同紙コメンテーター・中山淳史氏が「カリスマのいらない組織」を論じていたのを思い出し、再度読み返してみた。

 帝京大学の岩出雅之監督は「選手が自律的に考え、自ら成長する集団をめざした」と著書で書いており、それより前に「自律的集団」づくりで注目され、同氏にも影響を与えたと考えられる監督が中竹竜二・元早稲田大学ラグビー部監督(現日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)である。指導法の根幹にあったのは「フォロワーシップ(追随者精神)」という精神、リーダーシップの逆である。

 ラグビーとはそもそも「ワンフォーオール、オールフォーワン(一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために)」を信条とするスポーツ。15人の選手一人一人が自らのポジションで役割を明確に意識し、チームの勝利のために最善を尽くす。それが徹底されるのであれば、カリスマ的な指導者やキャプテンは不在でもいいとの考え方であった。

 中竹氏に話を聞いたところ、フォロワーシップとは一般に忠実で献身的な姿勢や態度を選手に求めることだと思われがちだが、同氏の場合は「リーダーである自分に向けた言葉でもあった」と話す。

 つまり、フォロワーには選手と指導者という2種類があり、監督は「リーダーでありながら周りを『支える者』であり、フォロワーとしての選手全員をリーダーのように行動できるよう導く責任を負う」と言う。この話は企業経営に通じるとして昨今の不祥事や事件を踏まえ当事者の企業経営者はリーダーである一方、よきフォロワーだったのだろうかと問う。

 さらに企業内のフォロワーシップを長年研究する近畿大学の松山一紀教授によると、社員には経営層に対して意見を積極的に言う「プロアクティブ型」と、」意見はあるものの経営者に促されないと言えない「能動的忠実型」、全く意見を言わない「受動的忠実型」の3タイプがあるという。

 世界で比べると、プロアクティブ型は欧米で全体の約3割を占める一方、日本は16%にとどまり、日本は積極的に意見を言わない能動型忠実型と受動的忠実型が合わせて8割以上に達するので、「経営者の誤りを正すような自浄作用が働きにくい構造になっている」(松山氏)と言う。

 一方で不祥事が多かったスポーツ界では一足先にフォロワーシップやオーガニゼーショナル・シチズンシップ・ビヘイビア(OCB)という考え方を参考に再建が始まっているという。OCBは日本語で「組織市民活動」のことを言う。例えば、世界が称賛した日本人サポーターによるサッカー場でのゴミ拾いなど率先的な行動、奉仕のこと。強いリーダーシップに再建、再生を託すより、まずはフォロワーがそれぞれ自主性と指導力を磨くことを新年へ向けて提案している。(次号へ続く)

(宮本 輝)

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会報 『BIG EGG』 2019年2月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2019年1月25日(金) 午後6時〜9時+食事会

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