2019年06月05日

シンポジウムのテーマを考えるために

 時代の変化は、私たちが思う以上に大きなうねりとなっています。「MOOC革命で日本の大学は半数が消滅する」と言われていました。わが国のように、学校歴こそが命という発想は、世界的には非主流です。MOOCのプラットフオームに「ユダシティ」があります。これまでの就活戦略がドラスティックに変わることになります。学習履歴(学位歴)の次は、修了証や資格認定で対応する、ナノ・ディグリーを重視する方向に向かっていくのではないでしょうか。世界では当たり前のスタンダートが、わが国の大学を襲うことになります。

 VUCA(ブーカ):Volatility=不安定、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧、は大学界にも吹き荒れることになります。近視眼的・表層的に時代を観て、爪先立ったアクションをすれば足元をすくわれます。社会の転換期を迎える中で、各大学・短期大学が社会との契約を根本から見直し、結び直すタイミングにきていると感じます。あたらしい時代は、学生には、AI時代を意識した、美意識のある「可愛がられる力」や「教わる力」を高める教育、「必要な情報を編集する情報編集力」やAIを活用するために必要となる「課題設定力」を求めます。リベラル・アーツ分野や観察力をいかに身につけるかを本気で考えて、カリキュラムを変えることができる大学・短期大学しか残らないのではないかと思います。

 この時代の要求は、私たち大学人にとっても、変わるための努力に他なりません。法改正や規制で大学淘汰の政策誘導も図られる中で、財界が求めるエリート以外を育成するほとんどの大学・短期大学で、この転換について真剣に戦略事項として叩いているのでしょうか。変わることに対して覚悟と勇気が今こそ必要です。大学人一人ひとりが大局観を持ち、原理原則を大切にして、周りに惑わされず信念を持って生き抜かねばなりません。大学が持てる全ての資源を束ねることなく、「私は頑張っています」をいくら束ねても、この時代の波を乗り切ることはできません。

 教員と職員の優位性を問うことがいかに馬鹿げていることか。「学生教員職員三輪車論」を肝に銘じます。打上げ花火的な派手なアクションではなく、学生が着実に活動してきたことを学生とともに整理するきめ細かいサポートを地道に積み上げていくことに注力します。学生の可能性を引き出す役割分担こそが求められているのです。

 らしくしてぶるべからず、「時代を少しでも動かすために、堂々と変わり続けること」を FMICS の今年のモットーにします。時代に先回り。皆さまには、この1年間がワクワクドキドキハッピー×ハッピーに充実したものになりますことをお祈りいたします。

(高橋 真義)

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入試で「死」を考える

 1990年に始まった「大学入試センター試験」は、2020年1月の実施を最後に廃止され、2021年1月からは「大学入学共通テスト」(新テスト)が実施される。取り上げられる機会も多くなる中、2019年5月31日(金)毎日新聞「滝野隆浩の掃苔記」より『入試で「死」を考える』という記事に目が留まった。

 滝野氏が昨夏に出版した「これからの『葬儀』の話をしよう」(毎日新聞出版)が今春の江戸川学園取手中・高等学校(茨城県取手市)の入試に使用、葬儀や墓、そして死生観の変容についての本である。例えば平成期、散骨や樹木葬まで墓の代わりに認められるようになった実情など5000文字以上ある。驚いたのはそのテーマ、最後はこんな設問。〈問10「散骨ブーム」が広まった経緯を100文字以内でまとめなさい。解答には「イエ(家)制度」「自然葬」「法」の3語を入れること〉。

 滝野氏は出題した先生に会いに行き、中高一貫校と聞いてまさかと思って確認したら、なんと中学入試、この問題文に小学6年生が取り組んだ。あっけにとられながら先生に入試や国語教育のことを聞いた。今の子たちは「友情」とか「夢」とかに関する出題をしても、ほぼ完璧に答える。だからあえて「簡単には答えられない」テーマにしたかった。そうすればその子自身の考えを引き出せるし、これから先もっと知りたいと思うかもしれない。さらに先生によると国語の教科書に載る「死」をテーマにした作品は、井上ひさしさんの「握手」くらいだとか。「ナイン」という短編集(講談社文庫)に収録、児童養護施設にいたことのある「わたし」が園長だったカナダ人の修道士との対話を思い出していくストーリー。戦争中のつらい話や「先生、死ぬのは怖くありませんか」と問う場面も。修道士は亡くなり、葬儀に参列した「わたし」の思いを問う問題がテストで出たら・・・滝野氏は「小学生の私はたぶん100文字どころか言葉にできなかったろう」。これまで続いてきた人の死にまつわる儀式やしきたりが今の時代に合わなくなってきた。みんな気づいてはいるけど、どうしたらいいのかわからない。そうしたことを文章を読んだ子供たちがいつかちょっとでも思い出してくれたら嬉しいと滝野氏は結ぶ。

 関連して2019年5月25日(土)毎日新聞「土記」にて青野由利専門編集委員による『人体をコンポストに』という記事を紹介したい。墓じまい、無縁墓、合葬墓、散骨、お墓のあり方の変化を示す言葉をよく見聞きする。そうした変化は日本に特有の問題かと思っていたら、あっと驚くニュースを欧米メディアが伝えていたと青野氏。米ワシントン州が全米で初めて「遺体をコンポスト(堆肥)にすること」を合法化し、知事が法律に署名、施行は来年5月。米国では通常、遺体を保存処理してひつぎに入れて埋葬するか、火葬にするかのいずれか。コンポスト化はそのどちらでもない第3の方法として登場。提唱者として紹介されているのは、シアトルで「リコンポーズ」という会社を設立したカトリーナ・スペードさん。自然のプロセスを利用して体を土に返すこと、短期間で微生物に分解してもらおうというアイデア。では日本だったら?青野氏がスペードさんにメールで尋ねると「日本の文化にもふさわしいのでは?もちろん、人々の感じ方次第だけど」。宗教や文化だけでなく、科学や環境の視点からもお墓を考える。そんなきっかけになるかもしれないと青野氏。今回「簡単には答えられない」テーマと向き合った小学生に未来の大学受験で再度同じテーマを問いたいと思った。

(宮本 輝)

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会報 『BIG EGG』 2019年6月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2019年6月5日(水) 午後6時〜9時+食事会

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