今回は職場の1回生向けの演習の最後に私が語った事項について、思い出しながら文字起こししてみようと思う。
今回のグループ・ワークでは、組織・グループにおけるリーダーシップとは何か、キーパーソンは誰かについて考えてもらい、発表してもらいました。各グループがそれぞれ大事と思う事項、たとえばリーダーシップなら「責任感がある」「行動力がある」「メンバーとの調和がとれる」など、キーパーソンなら「サポート役」などを指摘してくれました。話を聞いていて、皆さんは『じゃぁ、どれが正解なんだ?』と言いたくなったかもしれません。これに対する私の回答としては、たとえばリーダーシップやキーパーソンについて【僕・私にとっての】という接頭語をつけるべきだと。
たとえば、【私にとっての】リーダーシップとは「いざと言う時に謝れる事」だと思っています。組織トータルとして調子がいい時は各メンバーの調子も総じていいはず。そんな時にリーダーのなすべき事はありません。でも、逆のシチュエーションが起こった時、全ての責任を一身に引き受けて謝る事って一見簡単な様でおいそれとできるものではありません。リーダーの謝罪1つで不調の根源を一掃し、復調のきっかけにならなければならないからです。それだけの胆力のある事、それが【私にとっての】リーダーシップだと考えています。
一方、【私にとっての】キーパーソン、これには2種類あります。1つは「私より賢い人」もう1つは「地味ながら丁寧に業務をこなせる人」です。今回皆さんが指摘してくれたリーダーシップの要素、これらをすべて持ち合わせている人、言うなれば全能・万能な人ってまず世の中に存在しません。むしろ、不得手な部分の多いリーダー像というのが普通だと思います。その時、任務遂行に必要だが自分にとって不得手な部分があれば、得意な人に一任した方が成功確率は上がるはずです。私がリーダーになるんだったら、受任のための絶対条件は私より賢い人を私のそばに置くことを主張しますね。彼らに任せていたら間違いありませんし、無知な私が口出ししたって何ひとついい事ありません。
一方、組織・グループにとって生じて困るのがミスです。しかも、その発見が遅れるほど事態は深刻になっていきます。ところが、人はミスする存在です。そうなってくると、組織・グループにとって何が大事かと言えば、ミス生じさせない様にするのではなくそれを早期に発見する事です。その際に役に立つのが丁寧な仕事をするメンバーです。丁寧に仕事をする人の何が丁寧かと言えば、やった事に対する確認作業を確実に遂行する点です。私は割と確認作業を丁寧にやる方ではあるんですが、上には上がいるもの。鬼気迫る勢いで確認作業をする人がいる。そんな人がメンバーにいるんだったら鬼に金棒、ミスから生じうる損失を最小限に食い止める事が可能になるはずです。
この辺の話は、それこそ皆さんの倍以上の時間を生きてきた中で導き出したもので、だからこその【私にとっての】な訳です。勿論、異なる経験をすれば導き出される【私にとって…】は変わりますし、同じ経験をしても何処に力点を置いて次に活かすかで【私にとって…】のあり様は変わります。それで行くと、ネットで調べた内容や先輩・同期・後輩に聞いた内容は、結局の所【僕・私にとって…】を導き出す際のサンプルとしての役割しか果たさず、【僕・私にとって…】の答えにはなり得ません。くれぐれもここを間違えないようにして頂きたい。
このクラスでは就活絡みで様々なトピックを扱ってきましたが、皆さんにとって本当に大事なのは業界情報を得たり、企業研究をしたり、インターンシップに参加したり、各種対策講座に参加したり…ではなくて、大学生の時間で経験するあらゆる事柄から「【僕・私にとっての】〇〇」の「〇〇」の部分を少なくともひとつ、見つけ出すことです。これは皆にとって強力な武器になりますし、窮地に陥りかけた時のクッションにもなりますし、周囲のプレッシャーを跳ね返す盾にもなります。資格より、留学経験よりも、インターンシップ経験よりも遥かに皆さんの力になります。学生生活は始まったばかりですが、ここを目指して日々頑張ってください。
(中村 勝之)
posted by fmics at 18:04
|
TrackBack(0)
|
巻頭言