2022年09月07日

受験勉強の「できる子」はなぜ「できる」のか?

 何十年か前の話。子どもが難関大学に進学すればご近所さんや親戚連中から褒め称えられたものだ。その子どもが超のつく有名企業に就職できても似た感じだったろう。それが微妙な評価になってから久しいと言われているが、昔から言われる「いい所」へ希求する心理も厳然として残っている。

 難関大学に進学したという事実が微妙な評価になったのは、高等教育の大衆化の当然の帰結の1つであって、所謂「大卒」が増えた事で難関大学の評価が相対的に低くなったからである。無論、高等教育の大衆化は必ずしも難関ではない大卒者の成功事例も増える結果をもたらすので,この事態も難関大学の価値を相対的に引き下げる結果になるだろう。一方、かつての有名企業の評価が微妙になってきたのは、技術進歩にもとづく新財の登場が人々のライフスタイルを変え、それが産業構造の変革をもたらしたのが1つの要因だろう。それに伴う価値観のズレもかつての有名企業には不利に作用したのかもしれない。

 ここ最近、定期的にFMICS例会で高大接続等の「モヤモヤ」がテーマになっているが、変な話、このテーマが継続している裏には、参加した時点で解消されたと思えたモヤモヤがちょっとでも時が経てば再度湧き立ってしまう実情があると思われる。ここで、昔から今に残る価値観をA群、A群とは異なる新規の価値観の一連をB群とすれば、たとえば、B群に立脚した報告を聞けばA群に立脚した疑問が湧く。逆は逆で、A群に立脚した報告を聞けばB群に立脚した疑問が湧く。こうした反芻が脳内を駆け巡る限り、モヤモヤは解消される事はないのではなかろうか。

 教育論における新しい議論はとかく旧来の議論を全否定する形で立論される。無論、反動が起こった際には新しい議論を全否定する形で旧来の議論が蒸し返される。これをA群・B群の話に置き換えれば、両群の共通部分は存在しないかのような印象を与えるし、圧倒的多数の教育関係者はそう思うだろう。これを高校数学の集合論で言えば、集合Aと集合Bの共通部分(A∩B)が空集合(φ)となると思っているようだ。

 無論、教育業界に携わる者として集合Aと集合Bの和集合(A∪B)を目指すべきだとする主張も可能である。ただ、これは組織の目的として備えておくべき事項であって、個々の教職員に要求するべき物ではないし、仮にそれができる人材が存在するとしても、徒にそれを一般化するべきではない。個々の教員にとって疑問を差し挟むべきは集合Aと集合Bの共通部分(A∩B)が本当に空集合(φ)なのか? 高大接続の関連で言えば、旧来の受験指導と総合型選抜に即した思考力・表現力を鍛える教育方針に共通部分が本当に存在しないかどうか、ここを疑うべきである。

 この疑問への回答になるかどうかは分からないが、そのヒントとして、拙著『学生の「やる気」の見分け方(文庫改訂版)』の終章で紹介した「学び習慣仮説」、もしくは「ラーニング・ブリッジング」の内容を紐解くのをお勧めする。

(中村 勝之)

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審判の甲子園

 第104回全国高等学校野球選手権大会は「審判」の「言葉」が注目された大会だった。コロナ対策で大声での応援ができず、審判の声が聞こえやすくなっていることも背景にあるとのこと。審判の多くは会社員などの本業と両立している。

 開幕戦となった国学院栃木(栃木)と日大三島(静岡)戦は、10−3と点差が開いた。球審の尾崎審判は試合後、両校がホーム前で整列すると、うつむく三島ナインに「大丈夫や、上を向け。甲子園で試合ができたことは誇りや。胸を張って終わります。礼」と声をかけて試合を締めた。

 八戸学院光星(青森)と愛工大名電(愛知)の2回戦では、延長10回、名電が美濃十飛外野手の一打で劇的なサヨナラ勝利。実に1981年夏以来、41年ぶりとなる夏2勝目を挙げた。今大会は6月に心不全で急逝したチームメイトの瀬戸勝登さんの思いも背負うナイン。試合終了後、勝利球を受け取った球審の金丸審判は、主将の有馬伽久選手に何事もなかったようにそっとボールを渡した。「勝登と共に」と頂点を目指すチームに粋な計らいとなった。

 新型コロナ感染が広がり、主催者の異例の配慮で第8日に初戦が組まれた浜田(島根)−有田工(佐賀)戦。5−3で浜田が18年ぶりの甲子園勝利を飾った。試合終了後、両校が整列すると球審の尾崎審判が「試合ができたのは奇跡。甲子園でプレーできるありがたさ、感謝の気持ちを持ってほしい」と選手に声をかけた。

 今春センバツ1回戦の敦賀気比(福井)−広陵(広島)では、二塁塁審のジャッジミスを認め、球審だった尾崎審判が場内アナウンスで「私たちの間違いでした。大変申し訳ありません」と謝罪。ミスがなかったらと仮定した状況からプレーを再開させ、関係者からも称賛を浴びていた。

 また山口智久審判員もSNSなどで高校野球ファンの話題になった。一塁、三塁の塁審はスピーディーな試合進行のため、イニング間に守備に回る側のベンチへ近づき「追い出し」と呼ばれるかけ声を行う。山口審判員は「切り替えていこう」「ここが勝負どころ」「集中して」など、試合展開に応じた声かけで選手の背中を押した。

 決勝の球審を務めたのも尾崎審判。球児に寄り添う姿が印象的で試合中に声をかけたり、笑って背中をポンとたたくシーンがあった。優勝決定後は速やかな整列を促し、全員がきれいに並び終わるまで時間をかけて待つと「終わります!」と声を張り上げたという。

(宮本 輝)

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