2025年01月08日

2025年 〜超・超高齢社会の到来〜

 2025年は、約800万人といわれる「団塊の世代」が75歳以上となる「超・超高齢社会」を迎える。全体の20%、5人に1人が75歳以上という社会だ(一般に、65歳以上の割合が21%を超えた社会は「超高齢社会」と呼ばれ、日本はすでにその段階に入っている)。この変化によって、雇用、医療をはじめとした広い領域にわたって深刻な影響を及ぼす諸問題を「2025年問題」と呼んでいる。具体的には、労働人口の減少により生じる「社会保障費の問題」。従来の医療・介護等の体制維持が困難になる「医療・介護体制の問題」。また「国内市場の縮小」や企業における「労働力不足の深刻化」などがあげられてきた。ご存じのように、政府はすでに、各方面において様々な手を打っている。一例として、2025年4月からは、高齢者雇用安定法改正により、希望者全員の65歳までの雇用確保が、完全に義務化されることが決まっている(70歳までの雇用については努力
義務)。

 企業に関しては、激化する採用競争を勝ち抜くため「労働環境の改善」や「DX推進による業務の効率化や生産性の向上」「アウトソーシングによる人手不足の解消」などがあげられてきた。しかし、DX推進については、1,001名以上の大企業の96.6%が「取り組んでいる」一方、従業員100名以下の小規模企業では44.7%にとどまり、企業規模により進捗が異なるといったデータも示されている(独立行政法人 情報処理推進機構、DX動向2024)。

 勤務先の大学では、現在まで、基幹システムや全体業務に、有力な「DX」はみられない。AI活用を推進する組織的な取り組みも同様だ。例えば、最近では、多くの議事録作成ツールが発売され、オンライン会議ツールにも要約機能や文字起こし機能が搭載されている。しかし、これらの活用が、業務効率化対策として教職員全体を巻き込むような組織的な取り組みには至っていない。残念ながら、このあたりは「静かなる有事」にすでに飲み込まれ始めているような状況だ。

 総務省が、昨年の敬老の日に発表した報道資料によると、65歳以上の人口は「29.3%」で日本が「世界第一位」だという。また、世界人口が、現在の約82億から約97億に達する2050年には、日本の人口は約9,515万人まで減少するとも言われている(65歳以上の人口は39.6%)。これは、25年先の現実的な世界の話だ。恐ろしいことに、これらは、日常生活において、目に見える変化を伴わず進行するため、実感しにくい。2025年問題の後には、65歳以上の高齢者が人口の30%を超える「2030年問題」、さらにその後には、より深刻と言われる「2040年問題」が続く。私たちは、これまでどの「社会」も経験していない「未曽有の世界」にすでに突入し始めている。そして、これからその世界をなんとかして生き抜いていかなければならない。

(佐藤 琢磨)

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Ownership

 若い方には興味のない話かもしれないが,還暦を迎えて気づいたことがある。日本の平均寿命が長いのは医療制度が充実しているから。特に薬で生かされている現実がある。厚労省が公表している「高齢者の服薬に関する実態調査」によれば,1カ月に病院から処方された「常用薬」を服用している割合は約80%となっている。健康寿命は75歳あたりまでというが,これも常用薬あってのことかもしれない。かたや高齢者の犯罪率は上昇傾向にあって再犯率も高い(H29年度法務省犯罪白書)という。高齢者の比率が人口の約3割まで上昇している以上,仕方のないところでもあるが,再犯率の高さは何を意味するのだろうか。認知症や老化による影響もあるだろう。個人的には「当事者意識(ownership)の欠如」が要因のひとつなのではないかと考えている。「当事者意識」といえば, 780回例会で興津先生が問題提起された「人口減少」でも話題にあがり,つい先日の2024シンポジウムでも筆者が報告した「学びのかけ橋」で「当事者意識」の重要性を説いた。

 日本は「成熟した安全安心な社会(内閣府2018)」と言われるが,どれだけ国民一人ひとりが主体となって「安全安心に取り組んでいるか」は疑わしいところだ。日本財団がアジア・欧米の6か国の若者(各国千人)に実施している第62回18歳意識調査「国や社会に対する意識」によれば,質問7「自国の将来についてどう思うか」について「良くなる」は突出して低く15.3%。それ以上に「どうなるか分からない」と回答したのは31.5%と6か国の中で一番高いスコアとなっている。さらには,質問2「若者への支援は充実している」の回答は38.6%と,他国に比べ突出して低いだけでなく,「高齢者への支援は充実している」64.5%と,両者の乖離が他国よりも圧倒的に大きなことが特徴となっている。さらに,質問11「自身と社会の関わりについて」では,「自分は大人だと思う」49.6%「自分の行動で国や社会を変えられる」45.8%と他国に比べ著しく低い数値となっている。

 この調査は2019年から3回実施しているがいずれも同様の結果となっており,ここに日本社会が抱える課題の本質があるように思う。言い換えれば,この調査結果は若者に限定した事ではなく,大人の映し鏡になっているのではないか。という点だ。自身の周辺を眺めてみる。カスハラの一因ともいえる「サービス過剰」な社会。手取り足取りで教えるが「考えさせない」教育。枚挙に暇はない。こうした社会構造が「自立・自律」しない「日本人」を大量に社会に送り出しているのではないか。そして一様に(お薬とともに)高齢化して(ある意味において)磨きがかかる。

 どう解決していくべきか。その示唆を先日の2024シンポジウムで見つけたように感じた。別府大学の城さんがプレゼンテーションしてくれた「学びのかけ橋ってどんな橋?」である。ここにたくさんのヒントを確認できると思う。そして,城さんのようなたくましい若者をどう増やしていくか?が喫緊の課題であろう。と,他人事でなく自分事として捉えねばなるまい。

(新藤 洋一)

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