
高大接続・大学入試の抜本的な改革を提言した昨年12月の中教審答申は、2つの新テストの導入とともに、我が国の大学入試実施のガイドラインとなっている「大学入学者選抜実施要項」(文部科学省高等教育局長による通知、民主党政権下では副大臣名で出されていました)についても、“入学者選抜全体の多面的・総合的な評価への転換を図るため、一般入試、推薦入試、AO入試の区分を廃止し、大学入学者選抜全体の共通的な新たなルールを構築する”ために抜本的に見直すことを提言しました。
これを受けて去る5月27日付けで通知された「平成28年度大学入学者選抜実施要項」では、「第1 基本方針」と「第2 入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)」については、早速にも答申の趣旨を反映した文言が大きく追加されましたが、さすがに具体的な入試方法に関しては、以下のように従前の内容をほぼ踏襲したものになっています。
「第3 入試方法
1 入学者の選抜は、調査書の内容、学力検査、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーションその他の能力・適性等に関する検査、活動報告書、大学入学希望理由書及び学修計画書、資格・検定試験等の成績、その他大学が適当と認める資料により、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定する入試方法(以下、「一般入試」という。)による。
2 一般入試のほか、各大学の判断により、入学定員の一部について、以下のような多様な入試方法を工夫することが望ましい。
(1) アドミッション・オフィス入試
<中略>
(2) 推薦入試
<中略>
(3) 専門学科・総合学科卒業生入試
<中略>
(4) 帰国子女入試・社会人入試
<中略>
3 上記1及び2の入学者の選抜に際しては、スポーツ・文化活動やボランティア活動などの諸活動、海外留学等の多様な経験や特定の分野において卓越した能力を有する者を適切に評価することが望ましい。」
下線部が昨年度版から加筆された文言ですが、この変更点の有無にかかわらず、一般入試を定義したこの部分は、実態に即したルールと言うよりも、理想に基づくフィクションと言えましょう。もしここに書かれている方法が実際に行われていれば、殊更に“入学者選抜全体の多面的・総合的な評価への転換”を掲げるまでもないのです。
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(出光 直樹)

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