しかし、この思い込みが新たな「進路指導研究会」で見事に覆されるとは予測していなかった。会場に入ってみると高校教員16名に対して、「公務員」、「理容・美容」、「栄養・調理・製菓」、「動物」、「音楽」、「コンピュータ」、「簿記・会計」、「保育・幼児教育」の分野の学校の担当者が座っていた。「保育・幼児教育」分野以外はすべて専門学校だったのが印象的だった。
そこで司会者が、各学校の自己紹介の後に、高校教員が知りたい、教えてほしい質問を用意していて、すべての学校に鋭い質問を浴びせた。その質問内容は「公務員」分野では、「高卒、大卒、専門卒の違いは?採用試験の難易度、職場、役職、給料の観点から。大学の公務員コース(○○大学など)で公務員を目指す必要はあるのか?」に対して、「大学からの公務員試験は、優秀な大学の方々と勝負になるので、ただ公務員を目指すのなら高卒や専門学校から進む方法を考えさせる手もある。」また、「動物」分野では、「動物分野は就職が厳しいというが、ドッグトレーナーは特に厳しいと聞く。ドッグトレーナーを目指す場合、就職や職場の状況は?また目指している生徒がいた場合、その厳しさの伝え方や諦めさせ方は?」という質問に、「はっきり言ってドッグトレーナーはそんなに簡単なものではない。私に相談があった場合は、危険性が高いのであきらめた方がいいと答える。」など、誰もが興味を示す質問に真摯に応える研究会であった。この冒頭の勢いのまま進んだ研究会は、質疑応答が活発に行われ有意義な時間があっという間に過ぎた。進路担当の教員にとっては、聞きたいけれどなかなか言い出せない質問だったと思う。この質問にしっかりと受け応えた、当該学校の方々は本当にあっ晴れだった。
終了後は、司会を担当した二人の業者に賞賛を称え、次回の開催を期待していると伝えた。結局は当初のうがった見方を覆された気持ちのいい研究会となっていた。同時に今後は学校選びを本音で語り合える「場」を創って欲しいと願うばかりであった。しかし、内心は本音で語ってもいいのかという学校も多いことも承知しているので、ここは早急に学生のための大学改革を進めていただきたいと切に願うばかりである。
(秋草 誠)

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