平成28年6月12日の朝日新聞では、関西の女性が、大学時代に奨学金を月16万円借り、その後に専門学校に入学して10万円を借り、返済額は1千万超という状況で卒業後に結婚した。そのパートナーも500万円の奨学金返還を抱えていて、最終的には離婚し自己破産に至り、連帯保証の母親に請求が来ているという記事が載っていました。
以前から聞いていた話だが、本学にも美香さんと同じような母子家庭の学生が、沢山いるので身につまされる思いでした。先日、うちの幼児教育学科第二部(夜間3年制)の3年生Aさんと話しました。Aさんは、東北地方から、保育士の資格を取得するために本学を選んでくれて近隣に住んでいます。親からの仕送りは一切なく、奨学金とアルバイト代で家賃、生活、学費を自分で支払っています。このAさんの奨学金は毎月10万円だそうです。3年間で奨学金の借入額は360万円になります。
当たり前の話ですが卒業後、21歳の女性が360万円の借金を返済するということです。本学の近隣の保育士の手取りは、16〜17万円ですが、美香さんのようにならないかという心配が頭をよぎります。こんな時にいつも思うのですが、資格を取得するために本学に入学してくれた学生たちに対して、期待以上の何かを与えられたのかと自問自答しています。それは、私たち大学に携わる人間は、目の前の学生たちの現状をもっとよく見ないといけないのではないか。資格を取得し、内定して卒業できたからいいのか。本当に満足なカタチで学生たちを社会に送りだしたのだろうか。という思いです。
国は平成29年春に、まずは無利子貸与型(第一種)の奨学金を対象に、新しい所得連動型変換方式を選択できるようにする見込みです。これでもまだまだ、現状を理解できていないと思います。第一種の奨学金の返済より、第二種(有利子)の返済のことを先に考えるべきではないかと思うのは私だけではないはずです。
私たちは学生たちの支払う学費等で給与を得ています。それも多くの大学の教職員は、学生が卒業後に得られないような年収を得ているはずです。国が悪い、制度が悪い、最近の学生はだめだ、とかいって人のせいにして、何も変えようとしなかった私たちが学生の前に立っているということを考えると責任の重さを感じます。本当にこのままでいいのでしょうか。
(秋草 誠)

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