8月19日に国立大学協会の「論点整理」が公表された後、8月31日に文部科学省は「高大接続改革の進捗状況について」を公表しました。この中で、現行の大学入試センター試験に替わる新テスト・「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における記述式試験の導入と実施時期を含む全体の制度設計については、先の国大協の「論点整理」と同様な、以下の3つの案が示されています。
【案1】1月に実施し、センターが採点する案
【案2】12月に実施し、センターが採点する案
@記述式とマークシート式を同一日程で採点する案
Aマークシート式は従来通り1月に実施し、記述式を別日程で実施する案
【案3】1月に実施、センターがデータを処理し、それを踏まえて各大学が採点する案
それぞれのメリット・デメリットについての見解も、先の国大協のものとほぼ同じですが、国大協の検討案では避けられてたマークシート式と記述式の別日程での実施案も、案2Aとして列挙されいます。国大協の文書も文科省の文書も、各論併記で特定の案が有力と明記している訳ではありませんが、現行の入試日程の枠組みを前提とすれば、比較的出題・採点の制約の少ない「各大学での採点案」が有力かの様に受け止められ、報道でも強調されているように思います。
しかしこの各大学での採点案は、おそらく採用されないのではないかと私は思います。1人の受験生の答案を、複数の大学が重複して採点する事の無駄や、入試業務以外でも多忙な各大学教員の負担増への反発もそうですし、2月上旬から合否発表が相次ぐ私立大学の入試日程のから見てみれば、多くの私立大学はこのスキームに乗ることは出来ないでしょう。国公立大学の中ですら、個別採点の負担から記述式試験を利用しない大学・学部が続出することも考えられ、国家的事業としてすすめる高大接続のインフラ造りにふさわしい発想とは思えません。
新しいインフラを機能させる為には、現行の入試日程の前提そのものを見直して考えるべきであり、新テストを12月に実施することについて積極的に検討すべきと私は思います。受験日程が前倒しになることについての高等学校側の反発が取りざたされますが、すでに推薦入試やAO入試が早期に実施され、一般入試にも活用されつつある英語資格の検定試験なども12月以前に受験をしているのです。そもそも、国公立大学の一般入試受験者の進路決定(合格発表)が、多くの生徒にとって高校の卒業式以降となる3月中旬以降という現行日程こそが不自然であり、高校3年生の2学期に教科に関わる学力試験が実施されることについてタブー視するかの発想は、見直すべきだと思うのです。
<後編へ>
(出光 直樹)

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