2018年04月03日

「高大接続改革」の忘れもの<後編>

<中編から>

 集団準拠型のテストと目標準拠型のテスト。入学者選抜制度を考える際には、そこで用いる試験がどの様な性格を有する(有しなくてはならない)ものなのかを、理解する必要があります。

 大学入試センター試験は、“高等学校における一般的かつ基礎的な学習の達成の程度を評価する”ことも目的として、目標準拠型の性格も併せ持ってはいるものの、基本的には利用大学に対して“公平・公正な選抜資料”を提供する為のものであり、各大学での個別試験と組み合わされるにしても、選抜のための集団準拠型の試験としての機能が求められているのです。

 現行のセンター試験であれ、それに代わる「大学入学共通テスト」であれ、はたまた個別大学の試験であれ、1月〜3月にかけての一般選抜の一環で行われる試験は、それが機能するとすれば、一定の受験倍率のもとで受験者の中から募集人員に応じた合格者を選別するための集団準拠型の性格を、基本的には持たざるを得ないのです。

 一方、各種の検定試験など、目標準拠型の試験も入学者選抜のプロセスに組み込まれるようになってきていますが、それは選抜に“程よく”結びつくことによって機能します。例えば、部分的な加点や一部の科目のみなし満点に用いたり、出願要件に用いるなどの方法です。

 なお、多くの大学で集団準拠型の選抜が機能せず、高等学校における一般的かつ基礎的な学習の達成が担保されていないどころか、学習への意欲すら不十分な学生を入学させざるを得ない事態も進行しているのは、承知の通りです。

 高等学校における基礎的教科・科目の普遍的学習を担保は、大学のみならず専門学校等も含む広い意味での高等教育機関への接続の基盤であり、また高卒で就職し社会に出る者に対しても、責任をもって及ぶべきものです。しかし選抜機能を求められる大学入試の集団準拠型試験でそれを実現していく事は、もはや不可能です。

 それには大学入試とは別個の、しかし大学の入学者選抜や就職選考にも程よく結びついた、全国共通の目標準拠型の試験として、高校在学中のある程度の期間にわたって複数回実施し、受験者した生徒や高校へのフィードバックも機能することによってでなければ、その実行性を担保することは出来ないでしょう。

 しかし今回新たに導入されることとなった「高校生のための学びの基礎診断」は、全国共通の試験ではなく、一定の要件を満たした民間試験等を認定するというものであり、喫緊の課題となっている高等学校における基礎的教科・科目の普遍的な学習の担保には、あまりにも不十分な仕組みです。今回の高大接続改革には、大きな忘れ物が残ったままと言わざるをえません。

(出光 直樹)

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タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言
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