OIは大企業が新市場を生み出すためにベンチャーに出資したり共同事業を行ったりする手法、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が外の技術者と次世代機器を開発したり、韓国サムスン電子が社員と外部者の5〜6人でチームを編成して新製品を生み出したりするなどの成果を挙げた。日本でも2017年ごろから活発だが空回りが多いとの指摘あり。4月にはパナソニックや大和ハウス工業などが出資した家電ベンチャー、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(東京・港)が経営破綻。パナソニックは18年にセブン・ドリーマーズに派遣する技術者を増やしていた。一方で管理部門には「そう簡単にうまくいかない」などと冷めた声もあったとされる。
知財本部が6月下旬にまとめた報告書「ワタシから始めるオープンイノベーション」は、日本のOIの現状を分析し「日本においてもOIが重要との認識は向上し、具体的な取り組みもみられる」ものの、「社会にインパクトを与える実例が少ない」と指摘。日本のOIが振るわない背景として目的が不明確なままOIに着手しがちだと分析。@担当者は上司の指示や他社も成功など外的要因で取り組むA経営者は担当者任せB既存組織はOIに対して冷淡または反発―という意識が目立つとのこと。
担当者は「なぜ私がOIをやるのか」という内的な動機が薄いまま「どのようにやるか」という方法論に走る。その結果、形を整えることにエネルギーを使い、大きな変革につながらない「エセOI」に陥る例が多く、「やらされ型」「目先の利益型」「ポエム型」「クローズ型」「インバウンド型」「マウンティング型」「供給者目線型」「八方美人型」に類型。
報告書は「方法論よりまずは担当者、経営者、既存組織のマインドが重要」と指摘。企業がOIを進めようとする際に各関係者の意思や組織の風土をチェックする約200項目に及ぶ診断リストを提示。例えば担当者には「実現が困難でも大きな目的を達成したい」など約50の項目を設け、OIを進められる「とがった人」か情熱があるかなどを問う。経営者には担当者を支援し、自社事業と競合するような事業の開発を否定しないといった姿勢があるかを確認する。既存の事業部門や管理部門の意識も大きな壁となる。チェック項目では、事業部門に「チャレンジする個人の芽を育てる」風土があるか、人事部門に「既存事業と異なる評価軸を設ける」、知財部門に「自社の知財を開放し、新たな価値創造を円滑にする」などの意識があるかも問う。報告書のとりまとめに関わった渡部俊也・東大教授は「理想なのは、OI志向のマインドをもつ担当者と経営者がスキルや知識の高いチームを動かすこと。経営者は既存組織への配慮などで思い通りに動けない面もある」と話す。
報告書の序「(1)宇宙人から、Who Are Youと問われたら」にいきなり面食らうが、おわりに「2119年とある大学の「産業史原論」ゼミの議論を覗いてみたら」とあり、診断リストと合わせて活用してみたい。
(宮本 輝)

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