KnKは1997年日本で設立された国際協力NGO、世界の子どもたちと「共に成長する」ことを理念に現在は7カ国(地域)で活動している。「友情のレポーター」は、日本在住の11歳から16歳までの子どもを対象にしたKnKの教育プロジェクト。二つの大きな使命があり、世界の国々で取材を行いながら日本と取材先の子どもたちが友情を育み共に成長すること、帰国後、見たこと、知ったことを日本の人々に広く伝え、日本で暮らす私たちにはどのようなことができるのかを考えること。子ども一人の力は小さくても人に伝えることで大きな力を生むことができる。1995年以来、13カ国に計66名のレポーターが派遣されている。
前述の記事は「僕の右手が宝物、のわけ」(2019年9月10日毎日新聞・小国綾子記者)。今年の夏は女子高生と男子中学生が選ばれ、フィリピンの青少年鑑別所や路上で暮らす同世代の子どもたちを取材。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが同行し、写真ワークショップを行った。
テーマは「自分たちの大切なもの」。カメラを手渡された女子高生や男子中学生、現地の子どもたちは市場や公園で自分なりの宝物を探して撮影した。「今はノロマでもいつか空を飛べる」とイモムシを撮った子。「人の成長に似てる」と石の割れ目から芽を出す植物を撮った子。被写体を大切に思う子どもたちの素直な心のうちが写真に透けて見える。「途上国の子ども」「ストリートチルドレン」というイメージの陰に隠れてしまいがちな一人一人の存在感が伝わってくる。
日本の中高生2人が見つけた“宝物”、少しだけ紹介すると女子高生は現地の子どもたちの笑顔を撮った。仲良くなることで「助けてあげたい」ではなく「友だちになって応援したい」と気持ちが変わったという。そんな出会いこそが宝物だと。一方の男子中学生、自分の右手のひらを撮った。理由が胸を打つ。「たくさんの子どもたちと出会い握手し、手を握った。子どもたちの声が聞こえる、この右手が僕の宝物になった」。
宝物を探す旅は、自分自身と出会う旅。写真を通じて他者と出会う旅でもある。ヘイトが飛び交い、国や民族の対立する時代に顔の見える関係を結び合うことは未来につながる“宝物”と小国記者。フォトジャーナリストの安田氏は、レポーター2人にとってもうこの国は「発展途上国」という曖昧なイメージの場所ではなく、大切な時間を共に過ごした、友達が暮らしている場所であるとエールを送る。
(宮本 輝)

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