2019年11月07日

『検証 迷走する英語入試 ― スピーキング導入と民間委託』

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  南風原 朝和 編 岩波書店(2018/06)

はじめに
1 英語入試改革の現状と共通テストのゆくえ
  ……… 南風原 朝和
2 高校から見た英語入試改革の問題点
  ……… 宮本 久也
3 民間試験の何が問題なのか ― CEFR対照表と試験選定の検証より
  ……… 羽藤 由美
4 なぜスピーキング入試で、スピーキング力が落ちるのか
  ……… 阿部 公彦
5 高大接続改革の迷走
  ……… 荒井 克弘
年表 入試改革全体と英語入試改革の流れ

 大学入試にて英語民間試験を活用するための「大学入試英語成績提供システム」は、この問題の本質を人々に分かりやすく実感させた“身の丈”という文部科学大臣の発言が決め手となり、導入が延期となりました。2021年度入試での運用(原則として2020年4月〜10月に受検する英語民間試験が対象となる)に向けて受験生に発行する「共通ID」の申込受付開始の11月1日(金)に大臣の記者会見で発表され、「共通ID」の受付業務を行う大学入試センターも報道で延期を知ったという、劇的な展開となりました。

 大学入試での英語民間試験の活用については、一連の審議会や有識者会議等ではほとんど議論されておらず、南風原氏も委員として参加した「高大接続システム改革会議」の最終報告(2016年3月)では“民間の資格・検定試験の知見の積極的な活用”と表現されていたものが、その後の文部科学省内での立案プロセスの中で、共通テストでの英語出題廃止と民間試験を活用する方針が出され、専門的な検討や当事者に開かれた議論は不十分なまま進められてきた訳です。

 大学入試英語成績提供システムについては、本年2月〜4月の小欄でも取り上げましたが、この問題に危機感をもって警鐘をならした心ある専門家が、昨年6月に緊急出版していたのが本書です。

 100ページほどのコンパクトなブックレットには、東京大学高大接続研究開発センター長で心理統計学・テスト理論が専門の南風原氏、東京都立八王子東高等学校長で全国高等学校長協会 前会長の宮本氏、京都工芸繊維大学教授でコンピューター方式のスピーキングテストを開発・運営している羽藤氏、東京大学教授で英米文学が専門の阿部氏、そして大学入試センター名誉教授で高等教育研究・教育計画論が専門の荒井氏が、それぞれの専門的視点や立場から、問題点と危険性を指摘してします。これから検討すべき課題はほぼ全て網羅されており、多くの方が手に取られる事を願います。
(出光 直樹)

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タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言
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