2020年01月09日

逆境にあっても前向きに生きる

 新年明けましておめでとうございます。昨年末の締めくくりは「このごろ通信」(2019年12月23日(月)毎日新聞夕刊)の人生の先達の伝言。北九州を拠点に活動する「生笑(いきわら)一座」、ホームレスのおっちゃんらが全国の学校に出前授業をして回っている。授業は、空き缶拾い歴十数年の達人にアルミ缶とスチール缶を一瞬で見分ける凄技を教えてもらい、最後は子どもたちとおっちゃんどちらが時間内に多くの空き缶を当てることができるか真剣勝負。凄腕といいながらもあっさりと子どもに負けてしまうおっちゃん。1日200キロの空き缶を拾えば3000円になるとのこと。

 おっちゃんたちは、子どもが知らない話も教えてくれる。「中国でオリンピックが開催されるとアルミの価格が高騰し、おっちゃんの稼ぎは上がるけど、逆にリーマン・ショックが発生すると、その価格は暴落し、いくつ空き缶を拾っても生活できなくなる。海の向こうの出来事が、おっちゃんたちの生活に影響しているんだよ」。

 なぜ彼らは授業をするのか。日本では子どもの死因のトップが「自死」、いじめや人間関係が要因だと言われている。生笑一座のメンバーは全員、一度は「死にたい」と自死を選ぼうとした経験がある。メンバーの一人は子どもたちに訴える。「路上で生活している間、ずっと自業自得だと思っていました。頑張れないのは自分のせいだと、自分で自分を責めてばかりいました。けれども、今はあの時、死なないでよかったと本当に思っています。生きていさえすれば、いつか笑える日が絶対にくる。それが人生なんです」。

 今や小学生の子どもでさえ自己責任という言葉を使う時代。おっちゃんは子どもたちに、つらいことがあったら誰でもいいから助けてと声をあげてと教える。彼ら自身が、誰かに助けてと言えた日が助かった日だったという経験をしているから。元ホームレス一座の命の授業は、人間は一人では生きてはいけないことを知っている人生の先達から次世代への伝言である。

 そして新年の幕開けは株式会社そごう・西武の正月広告「さ、ひっくり返そう。」。炎鵬関を起用した11行のメッセージ、そのまま読むとネガティブな文章、下から1行ずつ読むと正反対の意味になる。「大逆転は、起こりうる。わたしは、その言葉を信じない。どうせ奇跡なんて起こらない。それでも人々は無責任に言うだろう。小さな者でも大きな相手に立ち向かえ。誰とも違う発想や工夫を駆使して闘え。今こそ自分を貫くときだ。しかし、そんな考え方は馬鹿げている。勝ち目のない勝負はあきらめるのが賢明だ。わたしはただ、為す術もなく押し込まれる。土俵際、もはや絶体絶命。」2020年度大学入試センター試験まであと少し、逆転劇が始まる!

(宮本 輝)

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タグ:宮本 輝
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言
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