
いよいよ、デジタル時代を活きることが、リアルな今になります。国は、行政改革の成長戦略の柱に据える恒久的組織としてのデジタル庁を新設します。
コロナ禍のもと、我が国は、世界のデジタル時代の波に乗り遅れていたことが、白日の下に晒されてしまいました。理系デジタル人材養成が、声高に叫ばれています。一方、文系のデジタル感性のある人材養成については、今ひとつカタチが見えません。最新のテクノロジーを文系の感性を用いて縦横無尽に操ることができる文系人材の養成も急がなければなりません。
少なくない文系大学は、数学・統計学、プログラミング系科目、データ分析科目などのカリキュラムの見直し、企業などとの連携を深めながら、情報系大学に生まれ変ろうとしています。
時代の変わりゆくスピードは、日進月歩をはるかに越えています。今月は、文系人材と理系人材の強みと足りないことを整理し、デジタル時代を活き抜くための人材養成のカタチについて多面的多層的に語りあいます。
問題提起のお三方には、基本の「き」として、私たちは、何をしたら良いのかを考えるためのヒントを提言していただきます。
コメンテーターには、学生、大学人、企業人、多彩なお立場の皆さまから一言をいただきます。
ブレイクアウトセッションには、登壇者の皆さまにもメンバーに加わっていただきます。ワイワイガヤガヤ、積極的に意見を交換していただき、問題点を掘り下げます。
皆さまには、お仲間、学びの主役の学生さんにもお声かけいただき、ご参加くださいますようお願いいたします。
野村さまからのメッセージです。
■データサイエンス教育やAI産学連携で見えてきた企業と大学のギャップ
ここ3年の間で、データサイエンスやAIという分野で大学と企業との連携が数多く行われてきました。しかし、双方とも満足した結果を得られている例は少なく様々な課題が浮き彫りになってき
ています。
最も大きいのは、データサイエンスやAIという葉だけが先行し、双方ともに教育に期待する方向にギャップがあり、ここを十分に協議しないままにスタートした失敗例が多いようです。この事例を提示し、今後はどのように取り組めば良いのかを皆様とともに考えたいと思っています。
また、文系AI人材という言葉が出てきましたが、
私には、この言葉の意味がピントきません。
そもそも、AIが社会に浸透していく中で、なぜ文系、理系を分けて議論する必要があるのかがわかりません。
従って、私としては今後のデータサイエンスやAIが使われる社会の中で企業としてどのような人材を必要としているかに論点を絞ってお話したいと思います。
長谷川克也さまからのメッセージ
■「デジタル社会って何?」
世の中をデジタルという言葉が走り回っていますが、世間ではデジタルという言葉をどんな意味で使っているのかが私にはピンときません。もちろん「数学的、工学的」な意味は十分理解しています。しかし、世の中の人が言うデジタルはもちろん「それ」ではないことは当然です。そうでなければ「デジタル庁」なんて名前の役所ができるわけはありません。
急速に発展したデジタルによる技術が何をもたらしたかというと、情報の在り方を変えてしまいました。ペンで書かれた原稿をもとに活字を拾って印刷した本、PCで原稿を書いてプリンターで出力した本、タブレットで表示した本は、内容が同じなら情報は全く同じものです。情報自体には重さはないのですが情報伝達が物理的である以上そこに重み(資源)が発生してしまいます。社会にとって情報の重要さは今も昔も変わりませんがデジタルは高速大容量通信や大容量記憶装置のおかげで情報伝達の物理的重みを取り去ってしまい、情報を扱うためのリソースを激減させ重圧を取り除いてくれるようになりました。
会えて文理の役割分担を示せば、デジタル社会の基盤を維持するのは理系なのかもしれませんが、それを使って何かを作るのは文系の人の英知だと思います。
中村勝也さまからのメッセージ
■歴史に萌えろ!
理系は人間を含んだいわゆる「自然」を研究対象にしています。そして、研究を進めるうえで「数学」なり「データ」は強力な*道具*として操っています。そこで蓄積された脳は文系にも流入し、いまや、数学とは無縁と思われていた思想系にも数学を取り込むことがトレンドの1つになっ
ています。ただ、現在はまだ過渡期なのでしょう。さまざまなレベルで文系分野で数学を操る手法に一種の「拒絶反応」が生じています。AIへの反応もこの1つと捉えることができるかもしれません。
本当の所を言えば、文系も理系も究極的に目指しているものは同じです。一言で言えば(人間存在を含んだ)森羅万象の理解です。文系と理系の相互交流を進めるためには互いの分野がどういうアプローチをしているのか、ここを知る必要があります。それを知るためには、森羅万象の「歴史」を知ることです。およそすべての学問に未来予測をすることができませんが、過去を知ることで未来を指向して現在を生きる、そのヒントが歴史に刻まれています。そんな話をコンパクトにできれば…と思います。
【 参 考 図 書 】
●安宅和人 『シン・ニホン』 NEWS PICKS 2020.2.20 2400円
●野口竜司 『文系AI人材になる』 東洋経済新報社 2020.1 1600円
●藤井保文・尾原和啓 『アフター・デジタル』 日経BP社 2019.3 2200円
●菅付雅信 『動物と機械から離れて』 新潮社 2019.12 2000円
●太田裕明 『AIは人類を駆逐するのか?』 幻冬舎 2020.6 800円
【 オンライン文献 】
●OECD Education 2030プロジェクトについて
●未来投資会議・2020年4月12日第15回会議議事要旨
●『文系AI人材になる』を要約! AIを「使いこなせる人」になるには?
●AI時代の文系人材。武器にすべきは「大局観」
【日時】 2020年11月21日(土)
研究会 午後8時〜9時30分
Breakoutsession 午後9時30分〜10時30分
茶話会 午後10時30分〜
【使用媒体】 Zoomミーティング
【テーマ】 デジタル時代に求められる文系の感性
〜 文系デジタル人材をいかに育てるか 〜
【問題提起】
野村 典文 (伊藤忠テクノソリューションズ 広域・社会インフラ事業グループ担当役員付エグゼクティブ・プロデューサー / 広島大学特任教授)
長谷川 克也 (JAXA宇宙科学研究所 研究開発員)
中村 勝之 (桃山学院大学 経済学部教授)
【参加費】 会員1,000円(年会費を完納している場合は無料) 非会員2,000円 学生(会員・非会員問わず)500円
【申込&問合先】 yoneda(アット)fmics.org 担当:米田敬子
参加定員 40名
申込締切 2020年11月18日(水)
*お名前、ご所属、連絡方法、本月例会を何によってお知りになられたかをお知らせください。
*参加エントリーをいただきますと参加費の入金を確認の上、資料を送付いたします。
*当日、ミーティングへのご招待をいたします。
