2020年10月06日

果たしたい約束

 2020年10月3日(土)日本経済新聞オピニオン面(コメンテーター・上杉素直氏)で損害保険大手のSOMPOホールディングスが今年夏に始めた働き方改革の一環を取り上げ、社員の人生と組織の成長をいかにうまくつなげていくかというテーマにコメントしていた。社員一人ひとりに「あなたの使命は何ですか?」と人生観を正面から問いかけるユニークな試み。コロナ禍による就労環境の激変を奇貨として、桜田謙悟社長がかねてから温めてきた構想を実行に移したとのこと。

 SOMPOが取り入れたのはマイ・ミッションという耳慣れない概念。業務上の目標ではなく、あくまでその人が生涯かけて目指す何かを指す。「日本社会や企業に新しい価値やインパクトを与えていく」など。研修をのぞくと「Zoom(ズーム)」で集まったのは持ち株会社の管理職たち。まずは部長陣が外部講師の助けを借りて自分の人生を見つめ直し、マイ・ミッション・ステートメントを作ってみる。心が動かされるWANT(ウォント)、社会で果たすべき責務のMUST(マスト)、運命が与えた能力のCAN(キャン)。3つの切り口から自分を洗い出し、人生の使命を定義していく。

 部長は、自分のマイ・ミッションを作った経験を生かし、部下のマイ・ミッションづくりに携わる。部下のものの考え方や強みを面談で引き出したうえで、チームの業務を進める中で適切な役割を見つけ出す。この人間対人間のやり取りを促すプロセスこそ、リモートワークであっても結びつきの強いチームを築く土台になる。「仕事帰りに一杯やりながら語り合うノミニケーションの代わりみたいだ」と感じる人もいたそうだ。

 SOMPOが社員への福利厚生や社会活動として個人の使命探しを手伝っているわけではない。桜田社長は約8万人のグループ社員に宛てて8月に発信したメッセージで、働き方改革に取り組む理由に「圧倒的な生産性を発揮し続ける」ことを挙げていた。使命に基づくから高い生産性を発揮し「続ける」のが可能になる。SOMPOが出した答えである。

 朝日新聞「経済気象台」(9月29日(火))ではコピーライター・岩崎俊一氏(2014年67歳逝去)が1993年にセゾン生命保険で使われたコピー「仕事の約束は誰でも守る。遊びの約束をすぐ破ってしまう人が私はさびしい」を紹介し、このところ知人友人とのメールを「コロナ禍が落ち着いたらぜひお会いしましょう。楽しみにしています」と結ぶことが多く、約束は果たしたいとしていた。学生の学び、マイ・ミッションづくりを止めない約束を果たしていきたい。

(宮本 輝)

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posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言
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