それより前はブザー音だったそうだが、目の不自由な方々の利便性を高めるため、分かりやすい内容に変更。担当者によると「聞き飽きず、流行に左右されない」との理由からクラシック音楽に絞り、「風呂に入る高揚感や幸福感を感じられる」としてこの曲を選んだという。
メロディー、文言ともに97年から一貫しているが、実は細かい変更が繰り返されている。2000〜01年の製品からメロディーが更新、リモコンのバージョンアップに伴い給湯温度の変更など搭載する音声案内が増え、データを圧縮する必要が出てきたため。どうせ変更するならと、コンピューターで鉄琴の音に変換していた従来の方法を改め、シンセサイザーの生演奏に変えた。演奏は当時の従業員が担い、譜面の正確な再現は機械に劣ったものの、「耳になじみがいい」と評判はよかったという。
湯張りの完了を告げる女性の声は声優に頼んでいる。現在は3代目も務めた5代目の声優が担っている。リモコンは5〜10年で新しいものに切り替えるため、案内する内容や種類の変更に合わせて音声も定期的に録音し直している。
各家庭に流れ続けてきた音楽と音声だが、商標は長年文字や図形だけだったため、これまで商標登録されることはなかった。2015年4月から音も認められるようになった。特許庁が新たに「音商標」の登録を始め、小林製薬の「ブルーレット置くだけ」、大正製薬の「ファイトー、イッパーツ」などテレビCMでなじみ深い音声も認められている。
ノーリツは2017年7月に特許庁へ商標登録を出願したものの、2018年6月オリジナル曲ではない上に、社名や商品名が入っておらず「ノーリツと識別できない」として却下された。それでも諦めず、テレビ番組で取り上げられたことやCMの放映回数、導入当時の製品カタログなど四半世紀にわたり親しまれてきた実績を追加で資料提出し、2021年3月に念願の登録がかなった。ノーリツによると、クラシック音楽を含む音声としては初の登録、音声は同社の公式ユーチューブチャンネルで聴けるとのこと。
(宮本 輝)

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