企画に携わったプロデューサーは、10代自身の話を聞くうち、たとえ周りに家族や友人がいても悩みの本音を伝えられないことを知った。「同じように悩む人が世の中にはいて、自分だけじゃないと知ってもらう。その共有の場を作る。死にたいくらいつらい子どもたちに対して、メディアができることかなと思いました」とのこと。
毎年、番組の特設サイトにある掲示板「ぼくの日記帳」で投稿を募っている。学校や家庭の悩み、将来への不安。生放送の番組では、寄せられた投稿を紹介しつつ、ゲストが語り合う。今年のゲストは、タレントの中川翔子さんや音楽クリエーターのヒャダインさんら4人。毎年、10代の頃に葛藤した経験がある人を招いている。
番組の演出は毎回変わる。今年は水族館の水槽の前で中継。その意図をディレクターは「多様な生き物が思い思いに、水槽という同じ空間のなかで生きている。10代の方々が求めるような優しい世界に近いのではないかと考えました」と説明する。
番組では、悩みに対して助言したり励ましたりはしない。ただ受け止める。掲示板「ぼくの日記帳」は、放送後もしばらく書き込めるという。
私の職場の事務局で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生、事務局閉鎖という事態になってしまった。
〈備えていたことしか、役には立たなかった。備えていただけでは、十分ではなかった。〉書かれたのは7年前。『東日本大震災の実体験に基づく 災害初動期指揮心得』という資料の冒頭にある。国土交通省東北地方整備局がまとめた内部資料だが、電子書籍として一般にも無料で公開されている。
被災直後に、国が管理する道路や港、空港の復旧にあたった担当者たちが、その時どうしたか、どうすべきだったかが詳細に記されて、学ぶところは多い。例えば、防災ヘリコプターが地震直後に緊急発進し、空港を襲った津波を逃れたことなど後に称賛された対応の多くは、あらかじめ準備されていたという。その上でなお、臨機応変の対応が必要だったとのこと。本学の事態の原因究明もさることながら、入院中や療養中の方の回復を祈るばかりである。
(宮本 輝)

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