2021年10月06日

パルスオキシメーター

 新型コロナウイルスの感染拡大で感染者が重症化するかどうかを把握する医療機器「パルスオキシメーター」、原理を考えたのは日本の技術者で4月に84歳で亡くなった青柳卓雄さんであると朝日新聞天声人語(2021年8月28日)で知った。

 パルスオキシメーターは、血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結びついているかを示す「酸素飽和度」を光で測定する機器。酸素飽和度の数値は症状の程度を見極める目安の一つになっている。現在では指先に挟んで測るのが一般的である。

 新潟に生まれ、新潟大学工学部で学び島津製作所入社。光に関わる仕事を希望して1971年に日本光電工業に移り、医療機器の開発研究に力を注いだ。心臓から送られる血液量を光で測る機器を改良するための研究をしていた時、光を当てることで酸素飽和度を正確に測る原理を発見した。当時、酸素飽和度を安定的に測定することは不可能とされていただけに、青柳さんは学会誌の回顧録の中で「こんなうまい話が、この世にまだ残っているとは」と振り返っている。

 1973年に学会で発表。その後、日本光電は耳たぶに挟むだけで酸素飽和度が測れるパルスオキシメーターを開発した。指先に挟むタイプに進化すると世界に普及していった。パルスオキシメーターは現在、全身麻酔手術に欠かせない医療機器として定着。新型コロナウイルスの感染者が増えた際は、厚生労働省が軽症者の宿泊施設などに配備を促すなど注目が集まった。

 青柳さんは2002年に紫綬褒章を受章。2015年には米国電気電子学会が医療分野の技術革新者に贈る賞を日本人で初めて受けた。日本光電の小林直樹・特別研究員は「論文を書くより、役に立つものを作りたいという根っからの技術屋でした」。その死を悼んだ米イエール大の名誉教授は、青柳さんを2013年のノーベル医学生理学賞の候補に推薦したとの秘話を明かした。この計器に毎日お世話になりながらご冥福をお祈りします。

(宮本 輝)

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タグ:宮本 輝
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言
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