「デザイン(形態)は機能に準じる」
この名言の起源は諸説ある様だが、アメリカの建築家ルイス・ヘンリー・サリヴァンが語った事で有名で、ドイツの時計学校バウハウスでも語られていた様だ。ある製品においてデザインと機能を高次元でバランスさせる事は案外難しいものだ。機能を追求するほどにその(外装)デザインは類似する傾向にある。今各人の手にあるスマホと隣人のそれを見比べてみるといい。大きさや厚み、カバーはそれぞれ異なるが、中身はほぼ同じである。それはスマホに含まれる機能を具現するのにあの形が最適だからだ。類似した機能を持つ類似したデザインの2つの製品、我々がどっちを買うかと考えれば、結局「価格」の話になってくる。価格を基礎にするマーケットシェアの奪い合いは共倒れする可能性があるため、デザイン面での差別化を図ろうとする。ただ、デザインを重視する程に機能を犠牲にする可能性がある事に注意しなければならない。
次に2つ目。
「美は細部に宿る」
この名言はドイツの建築家ミース・ファンデル・ローエが語ったものと言われている。この名言を理解するには装飾品をイメージすればいい。どれだけ繊細に作り込まれた装飾品を手に入れたとしても、それを身につける人とのバランスが悪ければお話にならない。なので、上質な装飾品を手に入れたいのであれば、身につける人自身の品格をその装飾品とバランスの取れるレベルにしなければならない。で、この品格なるものは実に些細な部分から表出するものである。ちょっとした気遣いの言葉、文房具の使い方、箸の上げ下げ、…。枚挙に暇ないが、大半の人が意識しない所にその真髄があるのは間違いない。
上記2つの名言を確認できる局面がどこかと考えて思いついたのがプレゼンである。上手いと評されるプレゼンターを真似る事、プレゼンは今回の文脈だとデザインに置換できるし、デザインを真似る事自体は学ぶ上で重要な事である。だが、それで終わっている人が案外多い。なぜそれに気付けるかと言うと、中身がスカスカだから。中身は今の文脈だと機能に置換できるが、機能すなわちプレゼン内容が形態すなわちプレゼンデザインとバランスしていないのである。とはいえ、プレゼン大会等で概してプレゼンデザインのいいグループが入賞する実態を思えば、上記2明言を理解してもらうのは至難の業の様だ。
(中村 勝之)

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