2022年04月01日

新年度の訓示っぽく

 2022年度の始まりに当たり、今回は少々趣を変えて話してみようと思う。

 さぁ、2022年度が明けました。私は桃山学院大学経済学の中村と申します。ここでの皆様との出逢いを大切に日々邁進していこうと思います。本日は新年度に当たり訓示…ではありませんが、少々堅いご挨拶をさせて頂こうと思います。

 ここ数年、「VUCAの時代」などと呼ばれる様になりました。VUCAのVはVolatility、変動性・浮動性ですね。VUCAのUはUncertaintyで不確実性、CはComplexityで複雑性、最後のAはAmbiguityで曖昧さです。要は何がどう動いてどこに着地するのか、さっぱり予測できない時代になったと言う事でしょうか。こうした時代状況をどう生きていけばいいのか? この課題に対する教育部門の役割はこれまで以上に重責を担う事になるでしょう。

 とはいえ、「VUCAの時代」と言う、キャッチ―と感じる時代表現は教育現場にとって邪魔な概念になる可能性を含んでいます。「何が起こるか分からない」と言い出したら、いくらでも事象を挙げる事ができます。自分の周囲に大地震が襲う、車が突っ込んでくる、カラスに襲われる、絶世の美女・美男に告白される…、挙げたらきりがないと思います。「そんなん、起こる訳ね〜だろう」とお思いでしょうが、本当に起こらないんだったら、それを論理的に証明する必要があります。でないと安心できませんから。でも、一人の力であらゆる事象の実現する程度を明らかにする事なんて不可能ですから、あらゆる人と協力・分担して作業に取り掛かるはずです。で、全てを明らかにできたとします。が、それは少しの時間の経過で妥当性・頑健性が怪しくなってきます。VUCAなんですよね? 証明に際して採用した前提だってどうなるか分からないんですよね? そう考えると、せっかく苦労して確かめた事が瞬く間に役立たず…。ここまでイメージした時、人ってどんな振る舞いをすると思います? 答えは簡単、「何もしない」徒労に終わるのが分かってる事に対して膨大なエネルギーなんて注ぎませんよ、人間って。そう、人間って面等臭がりな存在なんですよね。つまり、「VUCAの時代を考えよう」と言う程、それを聞いた人の最適解は何もしない、考えないと言う事になってしまうんですね。これはまずそうですね。

 上の話、もっともらしいのですが、考えねばならない部分があります。先に挙げた事例、大地震、交通事故、野生動物の襲撃、告白。これらはどちらかと言うとアクシデントに近い。告白を除けば、これら事象は事前に予防策を講じる事はできる。でも、予防策を超えた所でやってくるのがアクシデントでしょうから、究極的な対応としては反射に近い訳です。変な話、考える暇があれば反射を鍛えようと、こんな話に着地してしまいそうです。

 もう1つの着地としてはこんなのがありそうです。起こりそうな事象を「…があるかも」とした時、何を考えれば良いのかと言うと「どうする」になります。これについては似た事象とその対応の経験をかき集めて総覧すれば割とレベルの高い答えに到達しそうです。この到達したもの、これがまさにマニュアルであり、教育実践としてはマニュアル作りに落とし込む事ができそうです。

 なるほど…と思われたかもしれません。片手落ちかな…とも感じられたかもしれません。ここまでの話は「…があるかも⇒どうする?」という図式で、VUCAがどこに関わるかと言えば「…があるかも」つまり前提の部分です。でも、我々の日常、そして教育現場において意外と多く直面するのが「こうする⇒どうなる?」という図式です。この場合、VUCAは「どうなる?」つまり結果の部分に関わります。そもそもの立脚が違いますから、ここまでの着地点の候補である反射やマニュアルでは話にならないのはもうお判りでしょう。じゃあ、どうすればいいのかという話になるんですが、そのアプローチや方法論がありそうでなかったり、なさそうで案外あったりします。何故かようにくどい言い回しになるのかと言えば、「どうなる?」のキャッチの仕方が人それぞれ違うからです。個々人で違うのはもちろんですが、世代間でも全然違うんですよ。ここを直視しないと「なんのこっちゃ?」で終わってしまい、これが折り重なれば学びから逃げる若者を大量生産してしまうかもしれません。

 これはあくまでも私なりの着地点ですが、「どうなる?」の処で関わってくるのが初等・中等教育での学習内容、高等教育での学習内容はもちろんの事、教育機関を中心にして若者が体験すること全てであると言う事です。こう言えば組織としてどうすべきかと議論が行きがちですが、無論、この辺は学校の対外アピールを中心にした重要事項であるのは間違いありませんが、あくまで若者が体験するのは先生と言う個人との関係性の中でしか実現できない事ばかりです。その意味で、皆さん一人一人が「どうなる?」をできるだけ沢山キャッチして、それを若者にどう伝えればいいか? ここを自分の中で明確にしておく事が肝要
ではないかと思うんです。

 何やら尻すぼみな話に行ってしまったようですが、ここはザ・大学教員クオリティと言う事でお許し頂ければと。以上、私からのご挨拶は以上でございます。有難うございます。

(中村 勝之)

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タグ:中村 勝之
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言
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