2022年06月03日

梅雨を蹴飛ばせ

 今年の5月は5月病になる暇もないくらい怒涛のごとく過ぎ去ったが、心の支えになったのは朝日新聞「多事奏論」近藤康太郎氏の「19歳のあなたへ 失敗する権利 人間にはある」(2月19日)「向かない会社に35年 いや、おもしろく働ける」(5月7日)であった。

 「19歳のあなたへ」は大学入学共通テストのカンニング問題で「ふみはずした」19歳のあなたに向けての励まし、そもそも大学入試の受験勉強に対して、勉強は何のためにするのかを問いかけている。そもそも勉強には終わりがなく一生続くもの、勉強は役に立つかどうかもわからない。勉強しない人間は、ちょっとばかり成功すると「自分は特別」と愚かにも思い込む。でも勉強する人は知っている。「人間なんて どっこいどっこいだ。」 取り巻きを1万人以上集めて花見をする権力者も、莫大な費用をかけて宇宙旅行する大金持ちもべつにえらくない。つまり、勉強するのは「人にやさしく」なるためなんです。野生のけものは失敗できない生き物です。逃げ方をしくじると、天敵に食われてしまいます。失敗は死に直結する。でも人間は一度過ちを犯しても、やり直せるんです。長い年月をかけて、そういう社会を、システムを築いてきたんです。それこそが人間の勉強の成果です。人間には失敗する権利がある(人間は失敗してもいいのです。やりなおせるのです)。もう一回頑張りましょうよ。

 「向かない会社に35年」は「19歳のあなたへ」を授業の教材に使った学校の生徒の感想から始まる。多感な中学生は舌鋒鋭い。「理科の化学式、数学の連立方程式だって将来使う場面があるのか疑問。国語の詩だって将来使いますかね」、「勉強とは大人になることといってるけど、大人になって良いこととか大人になってなにがいいのかわかりません」。誠実に答えると難しい問題だ。そして働くといえば、気になる記事を読んだ。今春の新入社員はコロナでオンライン生活に慣れきっている。だからリアルな会社や通勤が「しんどすぎ」なのだそうである。そもそも会社の与える仕事がおもしろくないのは、ふつうだ。他人に与えられたモノはつまらんものだ。会社内で新しい仕事を創る。また、会社に全体重を預けない。社外でも働くチャンスはある。かもしれない。そんなの分からない。試す。失敗しても死にやしない。ていうか、毎日24時間ずつ死んでいるんだ。働くのはおもしろい。いや、おもしろくできる。そして、人間は人生の大半を働いている。ということは、働くのをおもしろくできた人は、ハッピーな人だ。ハッピーな人が多い社会は、住みよい社会だ。

(宮本 輝)

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タグ:宮本 輝
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言
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