開幕戦となった国学院栃木(栃木)と日大三島(静岡)戦は、10−3と点差が開いた。球審の尾崎審判は試合後、両校がホーム前で整列すると、うつむく三島ナインに「大丈夫や、上を向け。甲子園で試合ができたことは誇りや。胸を張って終わります。礼」と声をかけて試合を締めた。
八戸学院光星(青森)と愛工大名電(愛知)の2回戦では、延長10回、名電が美濃十飛外野手の一打で劇的なサヨナラ勝利。実に1981年夏以来、41年ぶりとなる夏2勝目を挙げた。今大会は6月に心不全で急逝したチームメイトの瀬戸勝登さんの思いも背負うナイン。試合終了後、勝利球を受け取った球審の金丸審判は、主将の有馬伽久選手に何事もなかったようにそっとボールを渡した。「勝登と共に」と頂点を目指すチームに粋な計らいとなった。
新型コロナ感染が広がり、主催者の異例の配慮で第8日に初戦が組まれた浜田(島根)−有田工(佐賀)戦。5−3で浜田が18年ぶりの甲子園勝利を飾った。試合終了後、両校が整列すると球審の尾崎審判が「試合ができたのは奇跡。甲子園でプレーできるありがたさ、感謝の気持ちを持ってほしい」と選手に声をかけた。
今春センバツ1回戦の敦賀気比(福井)−広陵(広島)では、二塁塁審のジャッジミスを認め、球審だった尾崎審判が場内アナウンスで「私たちの間違いでした。大変申し訳ありません」と謝罪。ミスがなかったらと仮定した状況からプレーを再開させ、関係者からも称賛を浴びていた。
また山口智久審判員もSNSなどで高校野球ファンの話題になった。一塁、三塁の塁審はスピーディーな試合進行のため、イニング間に守備に回る側のベンチへ近づき「追い出し」と呼ばれるかけ声を行う。山口審判員は「切り替えていこう」「ここが勝負どころ」「集中して」など、試合展開に応じた声かけで選手の背中を押した。
決勝の球審を務めたのも尾崎審判。球児に寄り添う姿が印象的で試合中に声をかけたり、笑って背中をポンとたたくシーンがあった。優勝決定後は速やかな整列を促し、全員がきれいに並び終わるまで時間をかけて待つと「終わります!」と声を張り上げたという。
(宮本 輝)

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