私の居住する新潟県上越地方を例に、少し様子を探ってみましょう。
1.地方の広さと大学数のアンバランス
新潟県は全国5位の面積があり、4つの「地方」(上越・中越・下越・佐渡)に分けられることが多いです。上越地方には上越市・妙高市・糸魚川市の3つの市が含まれます。上越地方の面積は2,165㎢であり、これは大阪府(1,905㎢)と東京都(2,199㎢)の平均面積2,052㎢と比較すると5%ほど広いことがわかります。
上越地方の大学は2つだけです。上越教育大学(1978年10月開学)と新潟県立看護大学(1994年看護短期大学として開設、2002年大学へ昇格)であり、いずれも上越市内に立地しています。
比較として、東京都八王子市は面積が186㎢(東京都で2番目の広さ)のなかに21の大学・短大・高専があります。また、佐賀県は2,439㎢の面積のなかに2つの大学と2つの短大があります。
2.地方に居住して
私は1991年に東京方面から上越地方に転居して転職しました。通勤は自家用車で、仕事での移動もほとんど社有車を使用。当時の北陸自動車道(高速道路)は上越から富山まで26箇所のトンネルに暫定2車線区間もあり、運転は怖かったです。北陸新幹線は影も形もありませんでした。
その後の30年間に道路事情は改善され、新幹線も長野から金沢・敦賀へと延伸されて、日本海側の地方もようやく首都圏が近くなりました。反面で、ストロー効果による地方からの若年層人口流出の加速も懸念されています。
そもそも、明治時代から近代化を推進するための東京への一極集中政策によって、地方は優秀な人材の供給源となっていました。
3.「地方大学」関係者はいかなる道を歩むか
上越教育大学は2018年10月に創立40周年記念式典と記念講演会を行いました。国立情報学研究所の新井紀子氏による講演「AIが大学入試を突破する時代の社会変化」には私も参加しました。遠方からの参加者も多く、地方大学でも人が呼べるのかと少し驚いたことを覚えています。
新潟県立看護大学は2022年度から「新潟学」という講義科目で「地域への愛着と誇りを持ち、全国的・世界的な視点から地域の存在意義を広く発信する力を養う」ことを到達目標としています。
私は縁あって上越教育大学の教職大学院で学び、2024年3月に教職修士(専門職)の学位を取得しました。COVID-19による社会の混乱と「オンライン教育の質」の問題も経験しつつ、大学関係者の歩むべき道を探り続けてきました。真の「学修者本位の教育」が求められる時代だと認識しています。
(補足)非営利組織の経営についても詳しく研究したドラッカーは、教え子60人ほどへの電話インタビューを欠かさなかったと述べています。現役教員の皆様はどうされていますか?
(土屋 郁夫)

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