内容を詳しく見たい。354校のうち「充足率50%未満」の大学は43校で全体の12.1%(約1割強)を占めており、前年の29校から約1.5倍に増えている。続いて「充足率が50%から80%未満の大学」は138校、39.1%となり全体の約4割を占める。あわせると、定員割れの大学のうち、「充足率80%未満」の大学が、約半分を占めるという状況だ。
次に、地域別にみると、定員割れの大学が多い地域は上から「東北(宮城を除く)」と「四国」だ。両エリアとも、充足率は8割を切った。東北は84.0から78.1%(△5.9%)、四国で、84.4%から76.2%(△8.2%)へ減少した。なお、数字からは見えないが、地方では県庁所在地に大学が集中している。例えば、私立大学の場合、青森では3つの市に7大学、秋田と山形は2つの市に3大学、岩手では4つの「市・町」に4大学、福島は3つの市に5大学が置かれている。上述のうち、入学定員数400名以下の大学は「80.2%」を占めている(「高等教育の在り方に関する特別部会(第1回)」【参考資料3】)。アクセスが限られ、大学の規模が小さく数も少ないエリアにおける定員割れの影響は、何らかの形で、すでに出始めているのではないだろうか。
8月8日には、文科省の中教審大学分科会に属する「高等教育の在り方に関する特別部会」により「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」と題された中間まとめが公表されている。その中で、高等教育政策の目的の一つとして、「「知の総和」の維持・向上のために高等教育政策を実施する上で、政策目的(追求すべき価値)として、「質」「規模」「アクセス」を設定することが必要である」と述べられている。
「中間まとめ」冒頭の「はじめに」は「今、危機は私たちの足下にある」から始まっている。その後「正に今、我々の世代で解決する姿勢が求められる。そのためには、これまでの発想を大きく転換することも求められる。」と続く。残念ながら「具体的方策」として示されている内容には、発想の転換が感じられる目新しいものは見つけられなかった。部会では、今後も引き続き、精力的な議論を重ねるという。最終答申に期待したい。
(佐藤 琢磨)

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