一つめの諮問は「2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿」である。これに対し答申では、「知の総和(数×能力)を向上し、社会実装へ繋げること」としている。そのためには、高等教育全体の「規模」の適正化を図りつつ、それによって失われるおそれのある「アクセス」の確保策を講じるとともに「規模」の縮小をカバーし、教育研究の「質」を高めることが必要だとしている。
二番目は「高等教育全体の適正な規模を視野に入れた、地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方」である。「質」については、新たな認証評価制度が提示された。従来の評価基準である「適合・不適合」ではなく「在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのか」という教育の質を数段階で示す。加えて「新たな評価におけるデータベース」と連携したデータプラットフォームである「Univ-map(仮称)」を新たに構築する。これにより各大学の比較が可能となるという。
「規模」の適正化については、より「厳格な設置認可への転換」をはじめ、設置者の枠を超えた、連携、再編・統合、縮小、撤退に関する具体的な支援策を示している。最後に「アクセス」については、大学、地方公共団体、産業界等が、各地域で実効性のある取組を推進する協議体として「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」の構築が提示された。さらに、地域にとって真に必要な一定の質が担保された高等教育機関への支援として、大学間の連携をより緊密に行う「地域教育研究連携推進機構(仮称)」の導入も提示されている。
三番目は「設置者別の役割分担の在り方について」だ。答申では、国立大には地域の高等教育の牽引役としての機能強化や「連携、再編・統合」の推進に向けた検討の必要性が示された。その一方で、私大については「縮小、撤退の支援」が追記され、国立大との「差」が明示されている(答申要旨C)。
全体を通してみると、新しい提案はあったものの、対策については具体的なイメージがわかなかった。特に、長い間、問題となっている「質」の向上については、答申された内容を見た限りでは、十分な議論がなされたのか疑問が残る。「おわりに」では、18 歳人口が急激に減少する2035 年頃まで「たった10年しかない」と記載されている。しかし、すでに大学が「渦中」にあることは、昨今の短大の募集停止に触れるまでもなく明らかだ。今後、文科省が10 年程度の工程を示した政策パッケージを策定するという。どのような内容になろうと、優先されるのは「スピード感」だろう。
(佐藤 琢磨)

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