これについて、2月中旬、日本経済新聞社と日本経済研究センターが、経済学者47人を対象にアンケート調査を行った。「私立高校向け支援額の引き上げ」については、70%が反対という結果だった。主な理由は「私立高校の支援額を引き上げると、私立高校は学費をあげるため」である。また「所得制限の撤廃」については、賛成が39%、反対が49%と賛否は割れた。賛成する理由には「正確な所得把握のしにくさ」や「教育機会の平等」が多く挙げられたという(日経エコノミクスパネル)。
今回の改正については、注意も必要だ。高校の費用について、すべて無償となるわけではない。支給対象となるのは「授業料相当額」のみであるが、実際には、修学旅行、教材、通学費などの諸費用が必要となる。東京都の私立高校で、2025年度に授業料以外にかかる初年度費用は、48万6789円とされている(入学金含む)。もう一つ、私立高校の授業料は高校によって異なるため、進学する高校次第で支給が一部となる場合もある。例えば、東京都にある私立高校の授業料は36万円から約136.1万円と幅広い(2025年度平均額は50万648円)。
なお、私立高校(全日制)は全体の31.1%、私立に通う生徒数は35.5%を占める。高校進学率が約99%であることを踏まえると、公教育における私立の担う役割は大きい。また、地域によって「公・私」の位置づけは大きく異なる。各都道府県における私立高校(全日制)の割合は、徳島県の10%(3校)から東京都の2.8%(218校)まで様々だ(文科省・令和6年度学校基本調査)。
公教育の費用を負担する主体は、国であることに異論はないだろう。少なくとも、今回の改正で、国が教育の責任を引き受けることが明確にされた点は評価に値する。今後、制度を運用する上では「地方と都市」「公立と私立」にある「違い」をいかに調整するかについて、これまで以上に十分な議論が必要だ。
今春、東京大学では、学費の値上げが行われた。一方で、子供3人以上の世帯への大学授業料等の無償化も開始された。高等教育においても「大学の費用は、誰が負担するのが望ましいか」という資源配分に関わる議論が、より活発に行われることを期待したい。
(佐藤 琢磨)

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