(2)は「国内留学等の取組を支援し、地域の大学や自治体等との連携により、都市と地方の循環を促進し、地方の人口増加を図る」というものだ。具体的には「都市部と地域がリソースやフィールドを提供しあい、持続的な人材交流や循環に向けた緊密な体制づくりや教育プログラムの構築」などが挙げられている。つまり、人口増加につながる都市部と地方の交流推進を加速する事業だ。利害関係者で構成されるコミュニティに全体最適化をもたらす「コーディネーション」が鍵となりそうだ。
大項目に記載はないが、小項目として新規要求されている案件もある。
例えば「(3)大規模文理横断転換枠の新設」だ。これは、2023年から公募が開始された学部学科の成長分野(デジタル・グリーン等)への転換を促進する事業への追加である。背景には「3回の公募を経てもなお、ボリュームゾーンである大都市圏の大規模大学で理系転換が進まない状況」がある。現状で対応しきれない課題を補う格好だ。具体的には、産業界や他機関との連携、大学院の設置・拡充などを行った場合、上限額や助成率を引き上げるなどの施策が用意されている。
この他に将来の生成AIやロボットの利活用の推進に向け、文系学生にも理系的素養を身に付ける教育の質的転換の加速を目的とした事業に5億円を要求している。
上記から、喫緊の課題への対策は「地域大学の振興」「成長分野への学部転換」「AI・ロボット活用人材の育成」「文理横断領域へのシフト」というキーワードでまとめられそうだ。大学経営は予想を超える少子化進行により待ったなしである。概算要求からは、現在進行中の危機と、近未来の危機に対し、せっぱつまった状況に直面していることが読み取れる。当然、その対策はこれまでと比べ、チャレンジングな政策となる。しかし、小規模組織の集合体とも言える大学は、意思決定を行うには時間がかかり、合意を得るための調整コストも大きい。規模が大きいほどその傾向が強いだろう。文科省が振る旗の速さについていけるだろうか。「笛吹けど、踊りたくとも、踊れず」という結末は回避したい。
(佐藤 琢磨)
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