数値だけをみると状況が好転したようにも見えるが、私立大学の半分以上の大学が定員割れを起こしている状況は続いている。さらに定員数を詳しく見ると、中規模と大規模大学は増加しているが、小規模大学(収容定員4,000人未満)では減少している(前年度比97.2%)。さらに小規模大学では、志願者と合格者も減少しており、入学者のみが増加している(前年度比101.7%)。結果、充足率も上昇し92.9%となっている。小規模大学では依然として厳しい状況が続いていることが読み取れる。全体として定員数が減少したのは、2003年以降22年ぶりだ。今後、文科省の大学の規模適正化政策が進むにつれ、定員減少に起因する定員充足率の上昇傾向が続くことも予想される。
また「推薦等入学者」の割合は53.6%と1.3%増加した。入学者数は増加し、そのうちの93.4%は推薦等入試によるものである。推薦等入学者数は、令和2年度に50%を超えて以降、少しずつ増えている。昨年、話題になった東洋大学の件が発端となり、令和8年度入試では年内入試の学力試験実施が条件付きで認められることとなった。同方式を新規導入する大学も見られる。早く合格を決めたい受験生と早く入学者を確保したい大学側の思惑が一致することもあり、年内入試の入学者の増加傾向は今後も続きそうだ。
ところで「推薦入試等による入学者が50%超」という状況は、どの大学にも当てはまるわけではない。2024年度入試では、一般入試による入学者割合は私大で約4割、国立大で約8割となっている(文科省、令和6年度国公私立大学入学者選抜実施状況)。私大のうち、早稲田、MARCH、関関同立では5.5割から6割ほどを占めている。東大は95.4%、京大は93.4%だ(旺文社、大学の真の実力)。国立大学や私大の一部では、一般入試による選抜が主流を占めていると言える。
各私大は、生き残りをかけて入学者の獲得にしのぎを削っており、入試方式の多様化・複雑化はそのことを物語っている。加えて、入学試験は多くの大学が相互に関係し、高等教育や高等学校にも大きな影響を及ぼす。入試の設計・実施においては、私立大学の果たしている役割や立ち位置を十分に理解しつつ、人材育成という公共的観点を念頭において取り組む姿勢がこれまで以上に求められるのではないだろうか。
(佐藤 琢磨)
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