梅雨が明けて夏の盛りを迎える頃にまで授業日程や試験期間などが設定されているこの光景。近年の我が国の大学では一般的なスケジュールとなっていますが、高温多湿な気候の中で年々違和感が募ります。
振り返ってみると、私が現役の学部学生だった20年くらい前には、もっと早く夏休みに入るのが一般的であったと記憶しています。また前期授業の終盤日程や期末試験を、夏休みを挟んだ9月に実施していた大学も多かったはずです。
実際に図書館に所蔵されている『学生便覧』を遡って調べてみると、1992年までは7月11日〜9月10日が夏休みとなっており、9月に入ってから前期の終わりの授業と試験を行って、10月から後期の授業を開始していました。しかも1981年以前には、10月初頭に前期試験、後期の授業開始は10月12日からとなっていました。
このように横浜市立大学(独自の学事日程を組む医学部医学科を除く)では、1993年度から夏休みの前に前期の学事日程を終える学年暦になったわけです。その明確な理由については『学生便覧』を眺めただけでは判りませんが、1991年に大学の設置基準が大綱化され、この頃からセメスター制の導入などのカリキュラム改革が進められていった事が、その背景にあるのではと推測されます。もっともこの時点では、まだ殆どの授業科目は通年の4単位科目であり、学期毎の科目開講(但し本学では週1コマの2単位科目が主流)が基本になるのは、21世紀に入ってからでした。
おそらく、1990年代以降にセメスター制(1年を2つの学期に分け、学期毎に成績評価・単位認定を完結させる)が普及する中で、多くの大学が4月に始まる学期(前期・1学期・春学期・夏学期・等々名称は何であれ)の学事日程を、夏休み前に完結させるようになり、また特にここ数年、授業時数(週数)についても厳しく運用が求められるようになった事も相まって、夏の盛りを迎える7月末から8月初め頃まで学事日程を組まざるを得なくなった大学が増えてきたものと思われます。
東京大学が打ち出した「秋入学」が、我が国の大学の国際化や教育改革を進める観点から話題になっていますが、秋入学に全面移行するにせよ、春入学の現状を維持するにせよ、4月から始まる学期の学事日程の不自然さこそ、国を挙げて検討すべき課題ではないかと思うのです。
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(出光 直樹)

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