秋入学の導入を打ち出した東京大学の「入学時期の在り方に関する懇談会」の報告書(中間まとめ平成23年12月8日、最終版平成24年3月29日)には、「新たな学事暦のシミュレーションと外国大学との比較」と題した表が掲載されています。
そこには、米国・カナダ・英国・オーストラリア・シンガポール・中国・韓国の10大学の学事暦とともに、現行の東京大学の学事暦、そして秋入学を実施した場合のシミュレーションとして、以下の4パターンが掲載されています。
パターンT: [1]9月〜12月 [2]3月〜6月
パターンU: [1]9月〜12月 [2]2月〜5月
パターンV: [1]10月〜1月 [2]4月〜7月
パターンW: [1]10月〜1月 [2]3月〜6月
([1][2]は学期で、それぞれ試験期間を含む)
私が注目しているのは、春の学期の期間です。パターンVを除き、遅くとも3月から始まって夏の盛りを迎える前に終了します。また、比較されている諸外国の大学の例を見ても、3学期制を取っている英国の2大学(オックスフォード大学とケンブリッジ大学)を除き、2学期制の学事日程の場合、4月から始まる例は無く、1月〜2月、遅くとも3月から学期が始まり、6月までには終わる様になっています。
そしてさらに注目したいのが、韓国(ここで紹介されているのはソウル国立大学)の例です。第1学期が3月2日〜6月15日、第2学期が9月1日〜12月15日となっており、学年の始まりは秋ではなく春ですが、北半球の諸外国や季節が反転したオーストラリアと比較しても、学事日程のズレはあまり目立ちません。
国際化の観点が全面に出ている秋入学論議ですが、こうやって学事日程を比較して見ると、学年の始まりが春か秋かという事よりも、学期の期間のズレの方が、国際交流促進の妨げになっている様に思えます。また、比較的過ごしやすいはずの3月や9月が、春休みや夏休みとなって授業が行われない現行の4月始まりの学年暦は、気候風土の面から見ても不自然です。
東大の秋入学構想は、小中高には手をつけず、大学だけでこれらの問題を解決する方法ですが、大多数の大学には、高校卒業からのギャップタームを伴う秋入学への全面移行は、現実的では無いでしょう。
教育活動の基盤を支えるインフラという観点で学年暦を考えると、滋賀大学の佐和隆光学長や桜美林大学の舘昭教授などが提唱されるように、初等中等教育を含めて全ての学校を3月始まりに移行する事も、国家レベルで真剣に検討されるべきと思うのです。
(出光 直樹)

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