2017年07月27日

『オックスフォードからの警鐘 − グローバル化時代の大学論』


 苅谷 剛彦 著 中公新書ラクレ(2017/7)

序章 日本の大学が世界の「落ちこぼれ」になる
第一部 「スーパーグローバル大学」の正体
1 「国際競争力」という幻想
2 オックスフォードから見た日本
3 スーパーグローバル大学のゆくえ ― 外国人教員「等」の功罪
第二部 文系学部廃止論争を超えて
4 国立大学の憂鬱 ― 批判のレトリックをめぐる攻防
5 文系学問の国際貢献と大学ランキング
第三部 海外大学・最新レポート
6 EU離脱と高度化人材
7 グラマースクール復活から見るイギリスの教育論議
8 どこでも行ける者と留まる者
9 教育の不平等をめぐる国際会議
第四部 ガラパゴスからの脱出
10 大学院競争に乗り遅れる日本
11 成人力がトップなのに生産性が低い理由
終章 「グローバル大学」への警鐘 ― 日本の大学は何をめざすべきなのか?

 東京大学で学士・修士と修め、米国のノースウェスタン大学でPhDを取得し、東京大学教授から2008年よりオックスフォード大学の教授となった教育社会学者による、日本の“ガラパゴス化”した“グローバル大学”批判の書。2014〜2017年に学術誌・雑誌・新聞等で発表した論考(序章と1〜11)を加除修正し、書き下ろしの終章を加えて構成されています。併せて、2012年に同じく中公新書ラクレで「グローバル化時代の大学論」としてシリーズ刊行された『アメリカの大学・ニッポンの大学 ― TA・シラバス・授業評価』『イギリスの大学・ニッポンの大学 ― カレッジ、チュートリアル、エリート教育』も一読すると、より背景の理解が深まるでしょう。

 スーパーグローバル大学を巡る狂騒や、文系大学廃止論争の沸騰、大学院教育の振興と高度化人材の獲得競争(に遅れる日本)、といった問題を通じ、日本の教育政策に大きな影響力を持つようになったグローバル化という言葉が、現に社会で起きている社会変動の実態を表すよりも、イデオロギーとして用いられる側面が強く、実態の理解よりも外部に創られた序列(世界大学ランキング)に迎合していることが、日本の大学(政策)の混迷や迷走の背景と指摘します。

 日本の大学(政策)が取るべき道は、日本語での教育研究が可能になった知の遺産と独自性を活用し、自分たちの内部に参照点(自分たちにとって大学とは何か、何をすべきところかという原点)を持つこと。それは大規模研究大学に限らず、短期大学も含めて全ての大学人が肝に銘ずるべき事と思います。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 00:13 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年07月26日

短大は生き残るか?

 前回の保育系学校選びのポイントの中で、四大への進学について説明しました。では、短大はどうなるのかを説明します。その前に少しだけ、昨年10月頃にメディアで取り上げられたニュースでの問題のおさらいをします。当時は、保育士の給与は安く(手取り13万〜14万円)、労働環境が悪いなどと報道されていました。これについては、高校生や保護者と高校の先生がたも信じていたようでしたので、これは全国平均の金額だと、ことあるごとに説明していました。本学の近隣では手取り16万〜17万円です。ある県では、初任給が10万円強で、なおかつ専任として採用されない地域もあることも説明しました。これは高卒が工場のラインで働くより、条件が悪いのです。こういう地域もあるので、全国的にみると労働条件が悪いと報道されてしまったことを説明し、理解していただきます。お蔭様で、近隣の高校の先生方や生徒・保護者には、広く理解していただけたようです。

 この問題をクリアしても、短大の生き残りがどうなるかという根本的な問題が残っています。私は全国に大学関係の友人がいるので、情報が入ってきますので整理すると、地方ではすでに生き残り確定の短大も出ていると思っています。これについては、立地条件や競合校などが絡み合う問題なので、一概にいうことは出来ませんが、地方のある地域では如実に表れていることを知っています。果たして、この流れは都心部だとどうなるのか、未だ見えてきませんが、事実だけを積み上げてみます。来年度、募集停止を決めた立教女学院短大の今年の入学者は、定員300名の8割強の状況だと聞きました。さすが立教女学院さんは募集停止が決定しているのに、強い募集力だなというのが本音です。この他に渋谷区にあるブランド短大も募集停止を考えているようです。都心ではこのほかにも、四大併設の短大は募集停止を考えている学校もあるようです。まさにこの状況を見ると、短大は生き残れるのかという議論が高まると思うのです。コップの水が、半分の入っているのか、半分しかないのかに似ています。高校現場の先生方と話していて、不景気で進学するのも大変だ。という一方で、最近は四大志望者が増えているという話に似ています。

 この中で短大が生き残っていく、道があるのかを考えることが、学生募集の先方隊で戦っている私の仕事だと思っています。

 結論は、短大進学者の数はある一定で下げ止まり、多くの四大併設短大が無くなった後までこらえ切れた短大は生き残ることが出来ます。それまで、多くの短大がマーケットから消えてなくなるのでしょう。その時に、日本私立短期大学協会が存在しているのかは、神のみぞ知るですね。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年07月12日

FMICSの総括の日

“合議制のカルト集団”…去る3月に高橋真義さんとともに桜美林大学を定年退職となり、今後は教育関係の付き合いから足を洗うと宣言していたものの、今回やはりというか、先日のFMICSシンポジウムに登場していただいた諸星裕先生が、工学院大学で開催してた頃(おそらく2000年か1998年)のFMICSシンポジウムの壇上で述べたのが冒頭の言葉。当時は私学事業団に在職していた高橋さんを中心に、そうそうたるメンバーがワイワイがやがやと熱く運営しているFMICSの姿を、言い得て妙な表現だと心に残っていました。

 諸星先生が最初にFMICSの月例会で話をされたのは、秋田県の国際教養大学の前身とも言えるミネソタ州立大学機構秋田校の学長として、同校の運営を軌道に乗せていた1990年代初頭の頃。振り返ってみれば、日本の高等教育をめぐるチョットした歴史ともいえる月日が流れている訳です。

 さて今回のシンポジウムでは、私は「総括」のお役を仰せつかりました。なぜか予めレジュメを作成しておかなければならないので、議論の方向を予想しつつ「まとめときづき」「自分自身の当事者になる」「1人1人の新たな縁へ」との3点を準備しておいて、その日のシンポジウムを振り返ってのコメントをしましたが、当日に4点目として付け加えてお話(ご提案)したのが表題の「FMICSの総括の日」です。

 これは結論から言うと、FMICSの軌跡と意義をきちんと後世に伝える為に、来年のシンポジウムまでには、FMICSの活動に終止符を打つ=総括する日を決めましょう、という事です。

 ほぼ毎月開催し発行している月例会や会報の『BIG EGG』。伝説の『100回BOOK』や『100人BOOK』、10号くらいまで毎年刊行していた『FUSION』などなど。FMICSの歩みとその記録は、1980年代のマス化から現在のユニバーサル化した我が国の高等教育の歩みを振り返る貴重な歴史資料となるものですし、それはきとんと後世に伝えられなければなりません。

 1981年3月14日にFMICSが産声をあげた時、高橋さんは34歳。その後間もなく加わった滝川義弘さんは27歳だったそうですから、紛れもなくFMICSは当時の若手の大学人が集って成長してきた集団です。創設メンバーの大学人としての人生や当事者性が色濃く反映しているのですから、そのパッションを代替わりによって継続していくことは、まず不可能と思います。

 FMICSとは何なのか? 創設の当事者が歩んだ歴史とともに、その果たした役割を総括をして記録に残し、次の世代の人たちにはFMICSという器ではなく、それぞれの当事者性に基づいた新しいご縁の形を創ってもらう方が、そのパッションは様々な形で受け継がれていくことでしょう。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

保育系学校選びのポイント

 保育士を目指しているのですが、四大・短大のどちらに進学したらいいのか迷っています。とか、短大と専門学校の違いって何ですか。という質問を多くの高校生からいただきます。時には、高校の先生からも同様の質問を受けることもあります。こんな時の答えは、出口から説明します。まずは、就職先の幼稚園や保育園での学歴による仕事の違いがあるのかです。これは、どの学歴でも仕事には、影響しません。保育士さんは、おむつ替えもしますし、掃除もします。幼稚園では、バスにも乗ります。というわけで、学歴によって仕事内容が変わることはありません。

 次に、学びの内容について説明します。専門学校は、仕事と直結していて実践的な技術を先生から学びます。簡単に説明すると、師弟関係のような学びで私の技術を伝えます。四大と短大は研究機関なので、研究しますが専門学校では、学生は研究しません。四大と短大には図書館を設置しなければいけませんが、専門学校には図書館がない学校や、あっても家のリビングくらいの広さの学校もあります。

 学費については、四大は約450万円、短大は約250万円、専門学校は180万円〜300万円です。収入は初任給で、四大卒業の先生が7千円〜1万円、短大や専門学校卒業の先生より多いので、四大卒業の先生の方が、年間に約12万円給与が多いです。しかし、初期投資を考えるとコストパフォーマンス的にどうなのかは、考えた方がいいです。四大と短大では、200万円の差がありますから、これを12万円で割ると16.6年でペイできる計算です。これが高いか安いのかは、保護者の方と相談してください。

 私が個人的に感じている四大へ進学する条件として、3つ挙げます。1、幼稚園の園長先生になりたい人。(本学の専攻科では、幼稚園教諭1種が取得できます)2、研究者になりたい人。(大学の教員などですが、大学院まで考慮しましょう)3、家庭が裕福で、勉強が好きな人。上記の条件の方には、四大をお勧めします。これ以外は、短大か専門学校で充分です。

 学校選びのポイントとして、1都3県の東京・神奈川・埼玉・千葉について就職率は、ほぼ100%に近いので、就職率がいいのは当たり前だと考えてください。それよりも多くの生徒が不安を抱えるピアノについて、確認してください。保育系の学校の多くが、ピアノは初心者でも大丈夫といっていますが、そのための環境が整っているかです。本学には、ピアノ個人レッスン室の個室が46室あり、電子ピアノは48台、合計で94台のピアノは、誰でも使用できます。初心者でも大丈夫といいながら、個室がほんの数室しかない学校もあるので、確認してくださいと、迷っている方にはお伝えしています。5〜6年前は高校の先生方の中に、保育分野は四大へといっていた先生が目立っていましたが、最近は短大がいいといってくれる先生も増えてきました。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年06月07日

さようなら理科館!お別れ会

 去る4月22日(土)、表題のイベントが横浜市立大学の金沢八景キャンパスで開催されました。このイベントは、1970年に竣工した「理科館」(理系の研究室が入っていた建物)が、老朽化に伴い取り壊されるに際して、卒業生や学生・教職員によびかけて開催したものです。

 私自身はこの企画の直接の担当では無かったのですが、このイベントのアイデア自体は、私の発案が担当者を通じて実を結んだものでした。本当は先月号の小欄にて様子を報告するべく、私も楽しみに参加する予定でした。しかし前日の夜に突然体調を崩して救急搬送され、命に別状はなかったものの、数日は安静を強いられていたために、このイベントへの参加はおろか、原稿掲載も見送ってしまった次第です。

 さて当日の様子は、大学のWebサイトや、Facebook内に設けられたイベントページに掲載されていますが、300人以上の方々(上は70代の方から、比較的若い卒業生の赤ちゃんまで)が集まり、機器が撤収されて空になった建物の内部を見学し、一角に設けられた落書きコーナーに思い思いのメッセージを残し、懇親会にて旧交を温められたようです。Facebook内のアルバムには多くの写真が収められていますが、研究に明け暮れた学生時代の思い出を懐かしんでいる様子が、皆さんの愛おしそうな表情から伺えます。

 古い建物を壊す際にお別れのイベントを開く、というアイデアは、以前からうすうす考えていたものです。たしかFMICSの月例会か合宿のオールナイトの議論か何かだっと思いますが、卒業生にとって自分の記憶のある建物がキャンパスから無くなってしまうと、母校という感覚が失われてしまう、というような話しがあったのが、長らく印象に残っていました。また、数年前に東京電機大学が神田から北千住に移転した際に、古い校舎(それでも高層でなかなかのものですが)を使ってアート作品の展示イベントが行われ、それを実際に見に行った事もヒントになっています。

 今回取り壊しになった「理科館」は、それこそ昼夜を問わず学生達が研究に打ち込んでいた建物です。老朽化で新しい建物に変わっていくことは不可避であるにせよ、その建物が無くなる際には、当時の関係者に呼びかけたお別れの集いを持って“供養”をし、替わりの新しい建物を紹介して行くことが事が大切だと思います。

 自分自身が参加できなかったのは、つくづく残念でありましたが、イベントが実現した事ともにうれしかったのは、普段からキャンパスツアーを手伝ってくれている現役の学生で、しかもこの建物にはあまり縁のない文系の学生も何人かこのイベントに参加して、知られざる大学の一面を楽しんでくれた事でした。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

大学のアルアル

 5年前から、毎年6月と9月に青森県と秋田県に高校訪問に行っています。まずは、青森県の八戸からスタートします。今年、八戸の駅に到着して気づいたのは、降りるお客の多さです。駅の観光案内の人に「観光客が増えましたか」と質問すると「ハイ、最近増えてきました」という答えでした。同じようにレンタカー会社の人にも聞いてみると、やはり観光客は増えたというのです。レンタカー会社の方に「八戸の魅力が広がってきた結果ですね」と確認すると、「田舎なのにどこがいいのですかね〜」というのです。すかさず、「だって八戸には朝5時からやっている天然温泉の銭湯が市内に約50カ所もあるし、日曜日の朝市は多いときは500軒の屋台が出るし、平日は一般人でも市場で新鮮な海の幸が廉価でいただけるし、夜は26軒の屋台があるみろく横丁で楽しめるじゃないですか」というと「お客さん八戸のことをよく知っていますね」といわれました。「でも他の町では、朝5時から銭湯はやっていないのですか」と不思議な顔で尋ねられたのでで、「恐らく八戸だけだと思います」というと驚いていました。普通だと思っていたことが、地元だけだと気づくと驚きに変わるのです。

 私は、新しい土地に行くと必ず次のことを聞きます。その町の人口はどれくらいか、学生の住む家賃はどれくらいなのか、自慢の場所は何処か、地元の人が好んで食べる食べ物や飲むお酒は何かなどです。

 そして、そこで得られた情報を元に行ってみますし、食べたり飲んだりするのです。その次の行動は、高校訪問した先生方に、あの景色はきれいだったとか、美味しいごはんだったとか、お酒が最高だったという感想を伝えます。地元のことを褒められて悪い気がするはずがありません。そうすると会話が弾み、今度はあれを試してみてくださいとか情報をいただけます。それをまた試していくと地元の情報がドンドン集まります。このおかげで、先生方との距離がグーンと縮まります。

 ここで気づいたことは、先生方は「自分たちは好きだけれど、ここは都会の人には田舎過ぎて、理解されないだろうな」という気持ちがどこかにあるということでした。せっかくの魅力を他県の人には伝えていないということです。

 まるで、大学と同じだと感じました。大学の教職員で自大学の悪いところを沢山見つけて発信している人の多いこと。どんな土地だって、大学だって魅力はあるはずなのに、あまりにも身近過ぎて見えなくなってしまうのでしょう。どんな組織だって、どんな場所にだって、他人が見たらいいところがあるはずです。それを見つけて魅力発信していくことが、重要だということを改めて感じます。あれがない、これがないと悩むより、アルアルを見つけましょうよ。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年04月27日

元気な大学創り

 最近、学生募集に苦しむ大学の方々から、相談を受けることが多くなりました。そういった事情の大学の方々との面談の中で感じたことがあります。それは、どこの大学も悩みは同じだということです。以前からの知り合いも、人づてに初めてお会いする方も、同じような悩みなのです。その方たちがいう学生が集まらない理由として挙げられるのが、「広報戦略がない」「広報担当者が勉強をしていない」「新たな企画を提案をしてもコンセンサスが得られない」「組織が上手く回らない」「上がいうことを理解してくれない」等です。最近は、相手から相談を切り出す前に、「現在、あなたの大学では上記のようなことが起きていて悩んでいるのですよね。」と具体的な話を交えながら質問をします。すると、みなさん「なぜ、わかるのですか?」と不思議そうな顔で私を見ます。種明かしをすると、まずは相談の電話が入ってくると、HPや広報関係で付き合いのある業者から情報収集します。そして、高校の進路担当の先生方に何気なく、当該大学の印象などを聞き込みします。大体、それで状況は掴めますから相手が私の前に現れた瞬間で、ほとんどのことができます。というわけで、そこからは内部と外部の対策を少しずつ気づかせながら話します。

 先ずは、入学者のエリアと対象高校の偏差値の確認です。この質問にさえ、答えられない方が大半ですので、ここは宿題とします。次に広報予算の配分がどのようになっているかです。これも明確に応えられる人は少ないです。次に、高校生との直接接触の重要性を理解していただきます。具体的には、オープンキャンパスとガイダンス状況の確認と変更点です。オープンキャンパスについては、とにかく在校生と高校生が数多く接触する機会を作ることです。ガイダンスについては、なぜガイダンスに参加できないのか、高校から呼んでもらえるようにするには、どうするのかです。

 このあたりまで、話を進めると大体自大学の進む方向が見えてくるようです。ここからは、学内事情に言及します。多くの方は、自分は一生懸命に大学を思って、頑張っているといいます。他の人たちは危機感がなく、何も考えていないというニュアンスです。しかし、ここがポイントなのです。「アナタは、学内の人たちに現状を理解してもらえるうな行動をしましたか? もし、動いたとしたら、どんな方法で動きましたか?」と質問します。ほとんどの方は、理解してもらうための行動をしていません。ここで若干アドバイスします。

 まあ、ここまで気づきを得られれば、元気になってくれて、翌日はお礼のメールが届きます。この返信には、多くの方からお礼メールを頂くが、モチベーションは3日以内に下がることを伝えます。そして、モチベーション維持のため FMICS の参加行動という言葉があればいいことも。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年04月04日

『アメリカン・ロイヤーの誕生: ジョージタウン・ロースクール留学記』


 阿川 尚之 著 中公新書(1986/10)

プロローグ 三人のロイヤー
T ジョージタウン・ロー・スクールへ
U 第一学年秋学期
V 第一学年春学期
W ワシントンの夢、ニューヨークの夢
X お茶の子さいさい
Y 司法試験狂騒曲
エピローグ ロイヤー誕生

 慶應義塾大学総合政策学部の教授や学部長、駐米大使館の公使を歴任した著者は、今でこそ著名な法学者・エッセイストとして、多くの著作を残していますが、本書はその最初となるものです。 1951年生まれの著者は、慶應義塾高等学校(2年生の夏にハワイへ短期留学を経験)から慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、そこから留学したワシントンDCのジョージタウン大学(スクール・オブ・フォーリン・サーヴィス)を卒業して、1977年にソニー株式会社に入社。会社の留学制度を利用して、1981年8月から1984年5月までジョージタウン大学のロースクール(3年制JD課程)に学び、同年7月にニューヨーク州の司法試験を受験します。そして受験後も会社の了解を得て米国滞在を延長し、8月から翌1985年3月まで、ニューヨークの法律事務所で働いてから帰国し、毎月会社に提出していた報告書を基にして本書を世に出します。

 その内容は、当時の日米関係のイシューであった通商問題を担当していた会社員として、交渉相手として接するアメリカの弁護士の存在やその有り様への関心から始まって、LSAT受験やエッセイ・推薦状をとりまとめてのアドミッションのプロセス、毎学期のハードな授業内容や死力を尽くしきるような期末試験、多様な教員やクラスメートの生態、夏休みの法律事務所での実習生体験、司法試験の受験から弁護士登録に至るまで、アメリカの弁護士養成の世界が、生き生きと描かれていています。

 30年も前に刊行された本ですが、最近どこかで紹介されていたので気になり手に取ってみたところ、引き込まれるように一気に読み進めてしまいました。新品でも中古でも入手は容易なようですが、おそらく日本語で書かれたアメリカのロースクール体験記(特に外国人留学生向けの1年制LLM課程ではなく、米国の司法試験受験の要件となる3年制JD課程のもの)としては、未だに貴重な文献でしょう。

 職能集団が成立する社会のシステムや養成制度とは何なのか。典型的な資格専門職である弁護士であれ、我々のような大学職員であれ、昨今の我が国で議論されている専門職養成(特に文系)の課題を考える上でも、とても示唆に富んだ一冊と思います。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

たった一夜の大宴会

 今年の四大入試はまるで、シャンパンタワーのようなものでした(不謹慎だと思う方はこの先は読まないでください)。テレビで見たこともある方はいると思いますが、シャンパングラスをピラミッド状に積み上げて頂点にグラスを一つ置いたカタチにして、上からシャンパンを注ぐとゆっくりと下へ下へとシャンパンが流れ落ち、注ぎ続けると下のグラスまでシャンパンがいっぱいになり溢れる。それが今年の四大入試の受験生のカタチに似ていると感じました。当然、下までは溢れることはなかったのですが、文科省が定員管理を厳格化した結果が表れたといってもいいでしょう。

 これを感じたのは2月中旬に、中規模大学の友人と話をしていて、「今年の入試は、例年通りの合格者を出したが、歩留まりが良く124%を超えてしまうかと思って焦りました」という話を聞いたからです。まさに今年の入試では、小規模大学ではわかりにくい現象が起きていたのです。

 文科省が2016年から定員管理の厳格化政策をスタートし、2017年度は収容定員8,000人以上の大規模大学に関して114%、中規模大学(4,000人以上8,000人未満)は124%超過すると私学助成全額不交付になるため各大学が厳格に守った結果、受験生は下へ下へと流れていったのでした。最終的には、18年度からは110%、100%と厳格化されます。16年度に大規模、中規模大学は新たな学部・学科設置や定員増をして対策した大学もありましたが、以前のように合格者を多く出せなかったというのが、今回の結果に繋がりました。

 文科省の定員管理は、外から見るとしっかりと厳守されているように感じる入試だったといえるのではないでしょうか。対策をした大学も結果的に定員増が成功し、上手くいったように感じているはずです。言い方を変えると、シャンパンタワーの途中に、グラスを追加したようなものですから。これにより一番下の段にあるグラスには、やはりシャンパンが届かないままになりました。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。人気のある大学が、定員管理を厳守した結果、下で待ち構えていた大学に自動的に学生が流れただけの話なのでしょうか。このカタチのまま、上手くいけばいいのですが、学生のニーズやひとり一人の成長を見守ることを語らない大学が、制度を変えただけで生き残れるような時代ではなくなったと思っています。次にやってくるのは入試改革と高大接続の波です。この波に飲み込まれないように、立ち位置をしっかりと決めて、学生とどのように関わればいいのかを考えた大学が生き残ると思っています。

 規模が大きいとか、もう一つグラスを用意すればいいとか、甘く考えていると、いずれ真下のグラスをよけて自らグラスを選ぶシャンパンが多くなる現実が訪れるはずです。大きいから生き残れると思ったら大間違いです。選ばれるグラスに変わることが出来るかが問われているのです。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年03月01日

『21世紀の大学:職員の希望とリテラシー』


寺ア 昌男 ・ 立教学院職員研究会 編著 東信堂(2016/12)

第T講  大学職員にはどのようなリテラシーと能力が求められているか
第U講 「大衆化」の響きを前に ― 高まる大学志願率、紛争、そして大学設置基準の大綱化
第V講 学問環境の変化の中でリベラル・アーツを考える
第W講 求められている新しい学力と大学教育の課題
第X講 立教学院の歴史をふりかえる(1) ― 独自性と建学の理念
第Y講 立教学院の歴史をふりかえる(2) ― 戦中・戦後の実態と問題
エッセイ集
座談会 職員像の探求 ―「大学人」としての出発を控えて

 索引を含めて300ページを超える比較的大部な本書は、(1)立教学院の若手事務職員による自主的な勉強会「立教学院職員研究会」にて2014年6月〜2015年2月に行われた寺ア昌男先生の連続講義の記録(第T講〜第Y講)、(2)各講の内容に対して2名ずつ計12名の執筆者(勉強会参加者)によるエッセイ集、そして(3)勉強会の中心メンバーと寺ア先生、それに立教学院の副総長もゲスト交えて、このユニークなSD活動を振り返る座談会という内容で構成されています。

 寺ア先生は、東京大学で教育史、特に大学史を専攻されて博士課程を修了された後、野間教育研究所の研究員を経て、1974〜1979年立教大学、1979〜1993年東京大学、1993〜1998年に再び立教大学、そして1998〜2003年の桜美林大学を最後に専任教員は退かれるものの、2003年〜2015年まで立教学院の本部調査役を務められます。

 全体として立教大学のお話が色濃く反映された内容となっていますが、もっともそれゆえに、本書を貫くコンセプト・大学職員に最低限必要な3つのリテラシー・「大学とは(または大学という職場は)何を特質とする場なのか」「自分の勤務する大学のことをよく知っているか」「大学政策はどう動いているか」を身につけていることが、いかに大切なのか具体性をもって訴えかけてくる、読み応えのある内容となっています。

 寺ア先生が大学の同僚としての職員の存在を強く認識し、専門とする大学史を熱心に聴いてくれるオーディエンスであることを発見して、職員リテラシーの意義に気づかれたのは、桜美林大学(大学院)で教鞭をとられていた頃のお話。初期の受講生(科目等履修生)として当時・日本私学振興財団におれれた高橋真義さんの名前も出てきますので、ぜひお手に取ってご覧ください。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言