2018年10月10日

お小遣いにもキャッシュレス

 10月1日は東京都民の日、公立の小中高の学校は休校日、施設の無料公開や記念行事が行われ、台風一過にもかかわらず多くの親子連れや子供たちをお昼休みに見かけた。ランチで入ったお店やコンビニでの会計待ちをしていた際に子供たちが現金支払いではなくキャッシュレス決済をしていたのに驚いたのもつかの間、日本経済新聞土曜版夕刊(2018年10月6日(土))にて「お小遣いにもキャッシュレス」の記事が1面トップ、貯金箱にお小遣いを貯めていた昭和生まれとしてはとても感慨深いものがあった。

 記事によると、電子マネーは親にとってはお金の使い道を把握しやすく、子供にとってはインターネット通販で使えたり買い物代金の最大2%のポイントが付いたりするのが魅力とのこと。具体的には親がスマートフォン(スマホ)のアプリで子供が持つプリペイド(前払い)方式の電子マネー「LINEペイカード」に入金、このカードはクレジットカードの国際ブランド「JCB」の加盟店で使える。また家計簿アプリに子供のLINEペイカードを登録でき、いつ、どこの店で、いくら使ったかチェックできるという。

 背景には、JCB、VISAといった国際ブランドが付いた「ブランドプリペイド」と呼ばれるカードの普及があり、カード番号を入力すればネット通販でも使えるため年齢制限でクレジットカードを持てない中高生らのニーズをつかんだとのこと。またポイントも魅力の一つで、ある女子高校生はお小遣いなど母親からもらうお金をすべてブランドプリペイド「Kyash(キャッシュ)」に切り替える予定、購入金額の2%が還元され6カ月の通
学定期券を買うとそれだけで数百円が浮く。期間限定キャンペーンでさらに高い還元率を打ち出すカードもあり、女子高校生は「アルバイトは禁止されているのでいつも金欠。ポイント還元率アップのキャンペーンは見逃せない。」とのこと。

 こうしたカードはメールアドレスや電話番号などの登録が必要、購買履歴なども運営会社が管理しているため、広告などで消費をあおられるリスクもあり。岐阜市の中学校で講師を招いて人生とお金について生徒らに話し合いをさせ、電子マネーを肯定的にとらえる生徒が多い中、数人からは「お金が減っても目に見えないから使いすぎてしまいそう」と心配する意見も出ていたとのこと。

 企業はAI(人工知能)を新卒採用選考に続々と導入し、就活生はAIの発達でなくなる職種を意識して企業選びをする時代。そして大学は生徒が自ら学習内容や活動の情報を入力して作る「eポートフォリオ」を入試の合否判定に使う動きが出ている。

 FMICS9月例会の参加者の気づきが楽しみである

(宮本 輝)

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入試不正の防ぎ方<後編>

<前編から>

 東京医科大学の入試不正を受けて実施された、文部科学省による「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係わる緊急調査」。9月4日付で速報が出た後、この稿を書いている10月上旬の段階では、その後の続報は出ていいませんが、おそらく速報で明らかになった事(男子の合格率が高い傾向に有るが、東京医科大学の他に意図的な不正を行った事例は無い)以上の結果は出てこないだろうと思います。

 今回の東京医科大学の不正は、募集要項に書いていない得点操作を秘密裏に行っていたというものですが、このような不正を防ぐ為に必要なポイントは、(1)複数の目による協同作業、(2)公益通報の仕組みの強化、という視点が大切と思います。

 秘密保持が必要な入試業務ですが、作業ミスや出題ミスを防ぐ上でも、「複数の目による協同作業」は重要なポイントです。例えば横浜市立大学の場合、採点答案からシステム入力したデータは、入力元と出力帳票を全件読み合わせをし、センター試験成績のように他のシステムから取り込んだデータであっても、一定数のサンプルのチェックを行います。その際は人手も必要な事から担当課の職員のみならず、多くの入試担当の教員も一緒になって読み合わせ作業を行います。こんな事務作業に教員を駆り出すはどうかと思う事もありましたが、今回の東京医科大学の事件をうけて、これは不正防止という点においても大切な作業なのだと、改めてその意義を実感しています。

 複数の目による協同作業が行われているだけでも、かなりの不正は防げると思いますが、それと共に、公益通報の仕組みを強化していくことも重要でしょう。東京医科大学の内部調査委員会がまとめた報告書では、東京医科大学には私立学校法によって必置の監事の他、法令違反行為や医療安全等に関する相談・通報を受ける内部監査室が設けられていたものの、それが機能しなかった事が今回の事件を防ぐことの出来なかった原因の1つであると記しています。今回の不正は得点集計段階で密かに行われてきたものの、やはり当時の理事長や学長の指示に従って実際に操作した職員が何名かいたわけで、その内の1人でも良心に従って行動を起こし、その行動をサポートする仕組みがどこかにあれば、防ぐ事が出来たはずです。

 ただし大学に限らずわが国の現状では、通報者の保護の面などで公益通報の仕組みはまだまだ脆弱であり、自分が不正に関与させられた立場であれば、はたして声を上げられただろうかと自問した方も多いでしょう。

 数多の報告書を求めるだけでなく、不正を見聞きした現場の教職員が安心して通報・相談できる仕組みを整備することが、行政の役割として大切だと思います。

(出光 直樹)

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2018年09月13日

入試不正の防ぎ方<前編>

 文部科学省幹部職員の逮捕を発端に明るみになった東京医科大学の入試不正を受けて、文部科学省は、医学部医学科を設置する81大学に対して、以下の項目からなる「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係わる緊急調査」を実施しました。

1.入学者選抜に関する学内規則・マニュアル等の整備状況について
(1)入学者選抜に関する学内規則・マニュアル等の設備、(2)採点や合否判定の基準を明確に定めているか、(3)採点や合否判定の際に受験者の氏名は匿名化されているか、(4)採点や合否判定の際、受験者の属性(性別、年齢等)はマスキングしてるか、(5)不合格者等から入試成績の開示請求があった際に開示しているか。

2.各年度(2013〜2018)別の募集人員、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数の男女別・年齢別割合と、その結果に対する大学としての分析(@男性の合格率が女性の合格率を上回っている場合の理由、A年齢毎の合格率が大きく乖離している場合の理由)

3.入学者選抜の詳細な実施状況について
(1〜2)特定の受験者について事前説明のない特別な加点等の有無、(3〜11)性別、年齢、その他の属性による合否判定に至る取扱の差異の有無、(12〜13)募集要項等に定めていない採点・合否判定の手続の有無、(14〜15)採点・合否資料の保存の有無。

 以上の結果の速報は、9月4日付けで報道発表があり、多くの大学で男子の合格率が女子の合格率を上回る傾向がみられたものの、特定の受験者に対して特別な加点を行ったと回答した大学は、皆無でした。

 過去6年間の合格率の平均の男女格差は、東京女子医科大学を除く共学の80大学中、男子の合格率が女子の合格率の1.67倍となった順天堂大学を筆頭に、63大学が男子の合格率の方が高くなっていました。逆に女子の合格率が最も優位になったのは弘前大学で、男子の合格率は女子の0.75倍にまで下がります。80大学の平均は1.18倍で、ちなみに我が横浜市立大学は1.21倍です。

 この速報結果が報道されると、やはり不自然であるとか、大学側の説明が不十分であるといった声が上がり、引き続き文部科学省による訪問調査などが行われていますが、現場の担当者の1人として、少なくとも本学では不正な事は行ってはいないと断言します。そして今回の調査や文部科学省の対応には、不正を防ぐという観点からみて大切なポイントが抜けている事を指摘したいと思います。

<後編へ>
(出光 直樹)

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原点回帰

 7年前から、日本私立短期大学協会の入試広報担当者研修会の運営に委員として携わっています。今年は、事前研修を含めて9月5日〜7日の二泊三日でした。研修会場は、実践女子大学の渋谷キャンパスで、オープニングの基調講演は井原理事長にお願いいたしました。実は井原理事長とは、数年前から年に2〜3回情報交換を兼ねてお会いさせていただいています。そのご縁もあって、今回の会場と基調講演までお願いしてしまいました。井原理事長曰く、「秋草さんに頼まれたら仕方ないからな」というわけで、AO入試前日にもかかわらず、会場をお借りした次第です。

 内容は基調講演、事例報告T・U、分科会から懇親会、二日目はガイダンス業者の入試広報セミナー・分科会と盛りだくさんです。なんといっても運営委員を含めた参加者114名中、懇親会後の2次会参加者が91名という他には見られない参加率の高い懇親会があります。これは、参加者のリピート率と満足度が高い証だと思っています。参加者の顔は、最初は緊張しながらも、私が初めてFMICSに参加した時のような、興奮と期待感が溢れた笑顔にみるみると変わっていきます。この笑顔に出会うたびに思うことがあります。

 これは、多くの職員の方も体験していると思うのですが、FMICSのような勉強会やセミナー、研修会などに参加して、学生募集や業務改善に役立てるような話を聞くと、早速そのまま職場に持ち帰り提案・、実行しようとしても、周囲との温度差にげっそりとすることが多々あります。聞いてきた話をダウンサイズすることなく、職場に持ち帰ると何が起きるか。まったりとした空気で、ネガティブ要素一杯の職場では、受け入れられないのです。「ムリダメうちでは出来るわけがない」といわれるのが落ちです。ですから、熱くなった参加者にぜひ伝えておきたいのは、まず今日の気づきや出来事をA4一枚にまとめておくことです。そして職場に帰って、まず全部話すのではなく、周囲に同調してくれる仲間を作るのです。そして、その仲間を味方に、A4の紙に書いてあるうちの簡単なことから、ダウンサイズして取り組んでみることです。それが、ネガティブ要素一杯の職場に飲み込まれないで、ポジティブに実行できるコツです。

 皆さんの仕事は、外に出て情報を集めてダウンサイズして、職場で再現することです。その上に、多くの職員と出会いネットワークを作って、困ったときには相談できる関係を築くことです。私も多くの人と出会って人の話をよく聞いて、困ったときはお互い様、相手の喜ぶことをしようと思っていました。そうすると今回のように、井原理事長にも快諾していただけました。感謝ですね〜

(秋草 誠)

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2018年07月27日

国際バカロレア入試の新展開<後編>

<中編から>

 横浜市立大学医学部医学科の国際バカロレア入試について、私が具体的な検討に着手したのは昨2017年の6月頃からでした。メインの学会としてほぼ欠かさず参加している大学教育学会の大会が広島大学で開催された機会を捉え、以前から気になっていた岡山大学まで足を延ばしてみたところ、副学長・アドミッションズセンター長の田原誠先生がご対応くださり、同大学の国際バカロレア入試について詳しくお話しを伺う事が出来たのです。

 またちょうどその頃、本学医学部医学科の中でも国際バカロレアについてのFD講演会を企画する動きがあり、本学の担当者から相談を受けた私が、田原先生を訪問した際にその講師を打診したところご快諾いただき、同年9月に本学にお招きしてのFD講演会が実現しました。しかも同じ9月には、岡山大学でも「国際バカロレア修了生の国内大学進学と今後の展望について」と題した大学教育再生加速プログラム(AP)採択事業シンポジウムが行われ、これには私がシンポジストの1人として招かれて、横浜市立大学の事例を報告する事となりました。

 こうして一気に環境が整いだした中で、医学部医学科における国際バカロレア入試の具体的な制度設計に着手しました。その際、国際バカロレア資格の成績等の出願要件については、実績のある岡山大学のものと全く同じにすることとしたのは、先に述べたとおりです。ただし、その要件をクリアした出願者の中から、合格者を選抜する方法については、岡山大学のように書類審査(基本的にIBDPの成績や出身校からの評価書、自己推薦書等)で行うのではなく、本学の医学部医学科で培ってきたMMI(Multiple Mini Interview)方式の面接で行うことにしたのです。

 2017年9月〜11月の小欄で紹介しましたように、このMMI方式の面接は、2016年度入試より導入した特別推薦入試で取り入れたもので、受験生は観点別の5つの面接室(1面接室あたり10分程度)を巡り、それぞれ独立して審査を受けるものです。実施初年度からこの面接方式での手応え(優秀な学生を引き付けて評価できる)を、とても強く感じていましたが、今年の3月には、この面接を経て入学した最初の学生達が医学の専門教育が始まった2年生を終えた段階で、やはり入学後一貫して一般選抜入学者よりも高い成績を修めている事が明らかとなりました。

 このようなエビデンスも弾みになり、本学の医学部医学科の国際バカロレア入試は、先行する他大学での実践と自大学での実践の成果を共に取り入れて誕生しました。この新しい入試に、どのような志願者が応募してきてくれるのか、とても楽しみにしています。

(出光 直樹)

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大学に主体性は必要なのか

 「高等教育に関するアンケート結果」によると、企業が求める学生の資質の第1位は主体性・実行力だそうです。RECRUITが発行している『Career Guidance』7月10日発行vol.423別冊付録に、企業が求める主体性について載っていました。企業の人材採用コンサルティングを手がける株式会社人材研究所代表取締役社長の曽和利光氏は、企業が求める主体性は2つのタイプに分かれるといいます。
一つは、環境や組織が求めるものを自らくみ取って、実行できる力のことです。<中略> もう一つは、外部の環境や既存のルールにとらわれず、自分のやりたいように内発的な動機で考え、行動するタイプ。いわばルールブレイカーです。

 曽和氏は“主体性”のイメージをAからDの4つに分類していました。Aタイプは、自ら変革を起こすルールブレイカー。Bタイプは、相手のニーズをくみ取り、自ら行動を起こす。Cタイプは、指示に従って適切に行動できる。Dタイプは、指示をされても適切に行動できない。AとBの二つが“主体的”があると評価される。Aタイプは個人の資質に負うところが大きく、BタイプとCタイプは、教育によって伸ばせるといっています。

 上記のタイプを、私が出会った大学職員に当てはめてみると、Aタイプの人は、若干いると思いますが、大学の組織からはみ出しているように感じます。Bタイプの人は、主体性を持って行動しているように感じますが、多数とはいえません。Cタイプの人が圧倒的に多く、この中から組織のリーダーも生まれているような気がしています。曽和氏の4つのタイプに加えて、Dの下のEタイプもいます。Eタイプは、指示を出されても行動しようともしない人達です。

 俗にいうパレートの法則2:6:2の下の2割です。企業ではEタイプが少ないのかもしれませんが、大学にはEタイプが多くいるような気がします。(それでも法則通り2割程度)曽和氏はCタイプのようなタイプをAタイプに育てようとしても無理が生じやすい。それよりも、CタイプをBタイプに育てることが教育に求められる役割だといっていますが、実際にCタイプをBタイプに育てられる教育が大学にあるのか、ないのか、ある大学があるかもしれませんが多くの大学にはないでしょう。そういえるのは、大学の組織がそうなっていないからです。CタイプからBタイプに変われる人材育成が、必要なことは理解できますが、それをどうするのかを大学は考えていないと思います。まさに大学の組織に「隗より始めよ」といいたくなりますね。
(秋草 誠)

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2018年07月13日

国際バカロレア入試の新展開<中編>

<前編から>

 医学部医学科で何らかの入試を導入するとなると、難関のレベルに相応しい学力担保の仕組みが必要となります。そこで、2019年度の入学生より導入する横浜市立大学医学部医学科の国際バカロレア入試では、国際バカロレア資格(IBDP)において、次の(1)〜(3)のいずれにも該当する(見込の)者という要件を設けました。

(1) 全体の成績評価が39以上
(2) 言語Aを日本語(HL・SLのいずれでも可)により履修し成績評価4以上、または言語Bを日本語(HL)により履修し成績評価6以上
(3) 物理、化学、生物から2科目および数学の3科目を履修し、うち1科目はHL成績評価4以上、他の2科目はSL成績評価5以上又はHL成績評価3以上

 国際教養学部・国際商学部・理学部・データサイエンス学部の国際バカロレア入試では、IBDPは(基本的に全体成績45点満点中の24点以上で)取得(見込み)であれば良く、履修科目の要件も全く設けていないのに対して、かなり高水準なものです。このレベルのIB生であれば、北米等の大学から奨学金付きの合格がもらえ、日本の普通の大学には見向きもしないと言われるレベルですが、この要件は、岡山大学医学部医学科の国際バカロレア入試の出願要件と同じで、それをそのまま用いることにしたのです。

 岡山大学は、2012年度に国立大学で最初に国際バカロレア入試を4つの学部で導入し、2015年度にはすべての学部で実施するに至っています。その特色は、国際バカロレア教育の質とIBDPの成績を高く評価し、大学独自の筆記試験は課さず、基本的にIBDPの成績や出身校からの評価書、自己推薦書等の書類審査のみで合否を決めている点にあります。

 岡山大学でも医学部医学科や教育学部などの対人専門職養成の学部では面接も行っていますが、あくまでも総合評価の一部として位置づけられ、基本的にはIB生が受けてきた国際バカロレア教育の評価を中心とする書類審査の枠組みで合否を決定しています。

 『朝日新聞GLOBE+』2018年6月30日付の記事「国立大初のバカロレア入試は岡山大学 狙いは『コミュニケーション力』」などで詳しく紹介されていますが、岡山大学が国際バカロレアを高く評価する入試を導入した背景には、現在、副学長・アドミッションセンター長の田原誠先生(専門は植物遺伝学)が中心になり、2009年頃から国内外のIB認定校を精力的に訪問調査するとともに、学内での説明会や議論を重ねて来たことにありました。

<後編へ>
(出光 直樹)

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2018年07月11日

高大連携の先は「短」

 定員割れしていて厳しいと数年前までこぼしていた大学職員の担当者の方に、お会いすると必ず聞く質問があります。今年の入試状況と、併設短大がある大学は定員充足率の経緯などです。ある大学では、一般入試の入学者の中に4ランクくらい上の入学者がいてビックリしたとか。加えて、今年の短大入学者の保護者から「併設大学へ編入するための成績は、どれくらいなのか」という質問が多く寄せられていますという話でした。

 この話を聞いて思い出したのが、都内の大学で北海道の空知郡に短大を設置している大学の担当者と話した時のことです。空知郡の三笠市は私の出生地でもあります。今や市の人口約9,000人という人口減少のスピードをよく知っていて、その地域にある大学の募集が厳しいこともよくわかっていました。その方と話したのは、5〜6年くらい前の話だったと思いますが、短大の募集が厳しくて大変だから閉鎖も視野に入れなくてはならないというような話でした。

 現状はどうなっているのか。当該地域の大学併設短大の入学者の推移を調べてみました。T短大は定員230名、入学者は平成30年217名、平成29年194名、平成28年186名。K短大は定員225名、入学者は平成30年244名、平成29年262名、平成28年205名でした。驚きの数字でした。2校は札幌から旭川に向かう途中の約100キロの場所に位置しています。こういう場所にある短大が定員オーバーや若干割れで収まる現象が生まれているのです。

 恐ろしいもので、大学シャンパンタワー現象の波は、北海道の短大にまでいきわたったっているのです。この短大に入学した学生たちの中には、全国から編入狙いで北海道まで行った人も多数いると思います。この現象を感じ取り、数年後に起きることは予測できるはずです。来年の大学入試は定員充足率100%を目指し、補欠合格でスレスレの受け入れをするはずです。入学時は100%だったのが3年も経つと中退等で、大目に見ても90%強になるでしょう。その結果、大学の収入減が確実に起きるということになります。その先に大学が考えるのはきっと、今まで以上に編入の受け入れを多くするべきだということです。きっと短大や専門学校から多くの卒業生が、編入で大学に入学する現象が起きることになります。

 さあ、大学の入試担当者みなさん、定員が満たされたとにんまりしていないで、3年後の自大学のために全国で定員割れに苦しんでいる短大に営業に行きましょうよ。高大連携もいいですが、これからは短・大連携ですよ。
(秋草 誠)

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2018年06月06日

国際バカロレア入試の新展開<前編>

 横浜市立大学では、2014年度入試に国際総合科学部(国際教養学系・国際都市学系・経営科学系・理学系)にて国際バカロレア資格を有する者を対象とする「国際バカロレア入試」を導入し、この春、この入試制度での最初の入学者が無事に卒業しました。

 この入試制度については2014年7月2014年11月の小欄でも紹介したとおり、分野ごとに同一の筆記試験問題と面接で選抜を行っていた海外帰国生・外国人留学生・社会人対象の特別入試の枠組みに、国際バカロレア資格を有する(見込み)の者を対象とする出願区分を追加したものであり、とりたてて新たな選考方法や試験問題を開発したわけではありません。また既存の海外帰国生入試の入学者の中には、海外のIB認定校で学び国際バカロレア取得を修得した者も、極少数ではありましたが含まれていました。

 ただこの制度を開始するまでは、日本国内のIB認定校に学んで国際バカロレア資格を取得した者は、在籍校が1条校であれインターナショナルスクールであれ、この特別入試の枠組みの対象ではなく、一般選抜やAO入試などで受験することは当然可能ではあるものの、それらの入試制度と国際バカロレア資格取得(とてもハードな世界統一の最終試験がある)との両立の難しさなどから、実際にそうした入試制度を受験する者は、ほぼ皆無でありました。

 2014年度に「国際バカロレア入試」という枠組みを掲げてからは、狙い通りに日本国内で国際バカロレア資格を修得した者が応募するようになり、以来今春2018年度までの国際バカロレア入試での入学者総計11名の大多数は、日本国内のIB認定校(全て1条校)の出身者となりました。年あたりの入学者数はまだ2〜3名程度ですが、2015年の統計で日本国内での国際バカロレア資格取得者数382人(うち日本人258人)なので、それでも日本の大学としては比較的多数の人数を受け入れていることになります。

 なお本学には、国際総合科学部(2019年度から国際教養学部・国際商学部・理学部に改組予定)の他に、古くからの医学部(医学科・看護学科)、そして2018年度新設のデータサイエンス学部があります。

 データサイエンス学部についても国際総合科学部と同様な仕組みによる国際バカロレア入試を実施しましたが、医学部では単純に活用できる一般選抜以外の選抜の仕組みがなかったため、国際バカロレア入試は実施していませんでした。

 しかし2019年度より、医学部医学科でも国際バカロレア入試を導入することになりました。それに際しては、他大学の方法を大いに参考にしながら、難関の医学部医学科に相応しい選抜の仕組みを考案しました。

<中編へ>
(出光 直樹)

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自信が無くなる入試

 最近、高校訪問に出向くと多くの進路の先生方から、今年度の大学入試が厳しかったことを伝えられます。進路指導をしている先生方の中には、大学定員の厳格化が原因で起きた結果だったと気づいていない先生方も多くいます。大学の入試担当の職員と話をすると、あるブランド大学では、例年なら合格を出している受験者の歩留まりを考慮しつつ、6割を補欠合格にしたという話もありました。一番衝撃的だった話は、ずっと定員割れが続いていた大学が、入学定員の140%入学してしまったと慌てていた話でした。この担当者曰く、AO入試と指定校入試は前年並みだったので、一般入試では歩留まりを見越して、ほぼ全員に合格を出したら、ほとんどの受験者が手続きをしてくれた。こんなことは、今までなかったので補助金がカットされるのではないかと焦ったというのです。その担当者に来年の方針を伺うと、来年度は大学始まって以来、初めて補欠合格も視野に入れるというのです。昨年4月FMICSに書いたシャンパンタワー現象が、より下へ下へと流れ落ちた結果だったといえます。こんな話を訪問先の先生方に伝えると、来年はどうなるのでしょうかと質問をされるので、文部科学省の方向性を説明しています。

 「文科省は2016年度から2018年度にかけての定員超過による私立大学等経常費補助金不交付基準の段階的引き下げについて通知する際、2019年度以降については『1.0倍を超える入学者数に応じて学生経費相当額を減額』『定員超過率を0.95〜1.0倍にした大学に補助金を上乗せ』という方向性を示した。」というわけで、来年度は各大学100%を目指すので、首都圏にある多くの大学の入試は、今年以上に厳しくなるでしょうと伝えています。

 最も印象に残っているのは、高大連携の話で埼玉県の校長先生と教頭先生に上記の話をした時でした。この高校は偏差値50くらいの中堅校ですが、近年、四大進学者を増やそうと方針を決め、一般受験で実績をあげると宣言していた高校です。この先生方が私の話を聞いて、ここ数年はAO入試と指定校入試で受験させた方が生徒にとっていいですね。と念を押されたので、大学入試改革もしっかりと方向性が見えてこない状況も説明しつつ、AO入試と指定校推薦入試で受験指導した方が良いとお勧めしました。

 それにしても、今の学生は自信がない自信がないといいつつ、入学段階から自信が失せる補欠合格で入学させて、その後学生のメンタルはどうなるのでしょうか。どうせ自分は補欠だと逃げる学生が増えそうな、いやな予感がします。

 気になるのは、シャンパンタワーの零れ落ちる先の大学は、どの地域まで波及するのか今後関心の高いテーマです。

(秋草 誠)

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