導入の目的は「生徒の学びの充実や障害等による学習上の困難の低減」とされている。「デジタル」の良さを、生徒の資質・能力の育成に取り入れることによって、教科書での学びの可能性を大きく広げることを目指す。つまり、教育効果を高めるためにあらたな選択肢を追加する、という取り組みだ。
デジタル教科書の提供は、少しずつ進められている。現状ではすべての小中学校と高校の約59%にすでに提供済みだという。科目別では、英語が約100%、算数・数学は約55%だ。活用については、調査において、6割以上の教師が「1/4回〜毎回授業で使用している」と回答している(文科省資料:デジタル教科書をめぐる状況について)。
一方、海外に目を向けると、デジタル化を見直す動きも見られる。健康面への影響や、学力低下が主たる懸念材料だと言われている。例えば、デジタル教育を進めてきたスウェーデンでは、2022年の政権交代に伴い、アナログの教材費を支援する予算措置がとられた。これに対し、文科省は「デジタル教育推進後のスウェーデンの国際学力調査の成績は向上し、直近の2022年の成績のみ低下している」とし、また「教科書検定による質保証の仕組みがない中でデジタル化が進められており、わが国とは状況が異なる」という見解も示している。文科省は、紙かデジタルかという「二項対立ではなく、どちらの良さも考慮し、教育課程・授業全体として紙・デジタル・リアルを適切に組み合わせてデザインすることが重要」だとしている。
紙ではない形態の教科書が導入されるのは、これまでで初めての試みだ。教える側の指導力向上や教員研修のコストをはじめ、新たな対応も求められる。しかし、新しい物事を検討する場合、生じうる影響すべてに対して、見通しを立てるには限度があるし、リスクはつきものだ。可能な限りのリスク評価を行い、対価の総量と比較した上で、総合的な判断を行うことが重要となるだろう。様々な試行錯誤を経て導入される新しい時代の「教科書」は、どんなものとなるのだろうか。
(佐藤 琢磨)
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