近年、大学では「SDGs」や「カーボンニュートラル」「ダイバーシティ」に関わる社会からの要請に応えるために、上述のような組織を新設する動きがみられる。教員や職員を配属する場合もあるが、とりわけ専門度の高い分野では、「専門人材」を外部から採用するケースが一般的のようだ。
大学業務の多様化や高度化に伴い、教員と職員が管轄する二つの領域にまたがる、もしくは個別に専門性が求められる「第三の領域」は、一層拡大しているのではないだろうか。2015年に、文科省が行った調査(大学における専門的職員の活用実態把握に関する調査)から10年が経過している。この間、多様化や高度化が進展し、URA、産学連携コーディネーター、IRerやFDer、教育支援コーディネーター、地域連携コーディネーター以外にも、その領域は以前より多岐に渡っていると推察される。
現在、私の配下には、特許など知財管理を行う専門嘱託と、産学連携コーディネーターが置かれている。外部から登用している専門職のマネジメントは初めての経験だ。これまでの部局におけるプレーヤーとしての知識や経験を活用できないこともあり、新たな知識やマネジメントスキルの必要性を日々痛感している。専門性が高い領域のため、自分がプレイングマネージャーとして関わるにも限度がある。思うように組織としての成果を残せず、悪戦苦闘する毎日だ。
専門人材の登用が増加すれば、既存の教職員や組織との連携、専門人材のマネジメントなどをはじめとした、新たな課題が顕在化していくかもしれない。そうなれば、関連する職員には、これまでとは異なる業務やスキルが求められることになるだろう。
「誰が、どんな仕事を行うか」という問題は、多様な業務で構成される大学組織には、常に付きまとう問題だ。「第三の領域」に求められるような新たな人材や、「AI」や「IT」などの新しい技術を、問題の解決に活用できる「選択肢」ととらえ、前向きに取り組みたい。
一方、大学の雇用や人事制度の考え方は、変わらず旧来のままだ。新たな選択肢が増えていることを踏まえれば、組織作りの設計図を描き直すことは、一層重要になってくるだろう。今ある人材の配置方法や組織の連携に関する仕組みの在り方を工夫することによって組織を活性化することができるかもしれない。私たちが、大学にある「古いシステム」から脱却することができるかどうかが焦点となりそうだ。
(佐藤 琢磨)

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