2017年06月07日

さようなら理科館!お別れ会

 去る4月22日(土)、表題のイベントが横浜市立大学の金沢八景キャンパスで開催されました。このイベントは、1970年に竣工した「理科館」(理系の研究室が入っていた建物)が、老朽化に伴い取り壊されるに際して、卒業生や学生・教職員によびかけて開催したものです。

 私自身はこの企画の直接の担当では無かったのですが、このイベントのアイデア自体は、私の発案が担当者を通じて実を結んだものでした。本当は先月号の小欄にて様子を報告するべく、私も楽しみに参加する予定でした。しかし前日の夜に突然体調を崩して救急搬送され、命に別状はなかったものの、数日は安静を強いられていたために、このイベントへの参加はおろか、原稿掲載も見送ってしまった次第です。

 さて当日の様子は、大学のWebサイトや、Facebook内に設けられたイベントページに掲載されていますが、300人以上の方々(上は70代の方から、比較的若い卒業生の赤ちゃんまで)が集まり、機器が撤収されて空になった建物の内部を見学し、一角に設けられた落書きコーナーに思い思いのメッセージを残し、懇親会にて旧交を温められたようです。Facebook内のアルバムには多くの写真が収められていますが、研究に明け暮れた学生時代の思い出を懐かしんでいる様子が、皆さんの愛おしそうな表情から伺えます。

 古い建物を壊す際にお別れのイベントを開く、というアイデアは、以前からうすうす考えていたものです。たしかFMICSの月例会か合宿のオールナイトの議論か何かだっと思いますが、卒業生にとって自分の記憶のある建物がキャンパスから無くなってしまうと、母校という感覚が失われてしまう、というような話しがあったのが、長らく印象に残っていました。また、数年前に東京電機大学が神田から北千住に移転した際に、古い校舎(それでも高層でなかなかのものですが)を使ってアート作品の展示イベントが行われ、それを実際に見に行った事もヒントになっています。

 今回取り壊しになった「理科館」は、それこそ昼夜を問わず学生達が研究に打ち込んでいた建物です。老朽化で新しい建物に変わっていくことは不可避であるにせよ、その建物が無くなる際には、当時の関係者に呼びかけたお別れの集いを持って“供養”をし、替わりの新しい建物を紹介して行くことが事が大切だと思います。

 自分自身が参加できなかったのは、つくづく残念でありましたが、イベントが実現した事ともにうれしかったのは、普段からキャンパスツアーを手伝ってくれている現役の学生で、しかもこの建物にはあまり縁のない文系の学生も何人かこのイベントに参加して、知られざる大学の一面を楽しんでくれた事でした。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

大学のアルアル

 5年前から、毎年6月と9月に青森県と秋田県に高校訪問に行っています。まずは、青森県の八戸からスタートします。今年、八戸の駅に到着して気づいたのは、降りるお客の多さです。駅の観光案内の人に「観光客が増えましたか」と質問すると「ハイ、最近増えてきました」という答えでした。同じようにレンタカー会社の人にも聞いてみると、やはり観光客は増えたというのです。レンタカー会社の方に「八戸の魅力が広がってきた結果ですね」と確認すると、「田舎なのにどこがいいのですかね〜」というのです。すかさず、「だって八戸には朝5時からやっている天然温泉の銭湯が市内に約50カ所もあるし、日曜日の朝市は多いときは500軒の屋台が出るし、平日は一般人でも市場で新鮮な海の幸が廉価でいただけるし、夜は26軒の屋台があるみろく横丁で楽しめるじゃないですか」というと「お客さん八戸のことをよく知っていますね」といわれました。「でも他の町では、朝5時から銭湯はやっていないのですか」と不思議な顔で尋ねられたのでで、「恐らく八戸だけだと思います」というと驚いていました。普通だと思っていたことが、地元だけだと気づくと驚きに変わるのです。

 私は、新しい土地に行くと必ず次のことを聞きます。その町の人口はどれくらいか、学生の住む家賃はどれくらいなのか、自慢の場所は何処か、地元の人が好んで食べる食べ物や飲むお酒は何かなどです。

 そして、そこで得られた情報を元に行ってみますし、食べたり飲んだりするのです。その次の行動は、高校訪問した先生方に、あの景色はきれいだったとか、美味しいごはんだったとか、お酒が最高だったという感想を伝えます。地元のことを褒められて悪い気がするはずがありません。そうすると会話が弾み、今度はあれを試してみてくださいとか情報をいただけます。それをまた試していくと地元の情報がドンドン集まります。このおかげで、先生方との距離がグーンと縮まります。

 ここで気づいたことは、先生方は「自分たちは好きだけれど、ここは都会の人には田舎過ぎて、理解されないだろうな」という気持ちがどこかにあるということでした。せっかくの魅力を他県の人には伝えていないということです。

 まるで、大学と同じだと感じました。大学の教職員で自大学の悪いところを沢山見つけて発信している人の多いこと。どんな土地だって、大学だって魅力はあるはずなのに、あまりにも身近過ぎて見えなくなってしまうのでしょう。どんな組織だって、どんな場所にだって、他人が見たらいいところがあるはずです。それを見つけて魅力発信していくことが、重要だということを改めて感じます。あれがない、これがないと悩むより、アルアルを見つけましょうよ。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年04月27日

元気な大学創り

 最近、学生募集に苦しむ大学の方々から、相談を受けることが多くなりました。そういった事情の大学の方々との面談の中で感じたことがあります。それは、どこの大学も悩みは同じだということです。以前からの知り合いも、人づてに初めてお会いする方も、同じような悩みなのです。その方たちがいう学生が集まらない理由として挙げられるのが、「広報戦略がない」「広報担当者が勉強をしていない」「新たな企画を提案をしてもコンセンサスが得られない」「組織が上手く回らない」「上がいうことを理解してくれない」等です。最近は、相手から相談を切り出す前に、「現在、あなたの大学では上記のようなことが起きていて悩んでいるのですよね。」と具体的な話を交えながら質問をします。すると、みなさん「なぜ、わかるのですか?」と不思議そうな顔で私を見ます。種明かしをすると、まずは相談の電話が入ってくると、HPや広報関係で付き合いのある業者から情報収集します。そして、高校の進路担当の先生方に何気なく、当該大学の印象などを聞き込みします。大体、それで状況は掴めますから相手が私の前に現れた瞬間で、ほとんどのことができます。というわけで、そこからは内部と外部の対策を少しずつ気づかせながら話します。

 先ずは、入学者のエリアと対象高校の偏差値の確認です。この質問にさえ、答えられない方が大半ですので、ここは宿題とします。次に広報予算の配分がどのようになっているかです。これも明確に応えられる人は少ないです。次に、高校生との直接接触の重要性を理解していただきます。具体的には、オープンキャンパスとガイダンス状況の確認と変更点です。オープンキャンパスについては、とにかく在校生と高校生が数多く接触する機会を作ることです。ガイダンスについては、なぜガイダンスに参加できないのか、高校から呼んでもらえるようにするには、どうするのかです。

 このあたりまで、話を進めると大体自大学の進む方向が見えてくるようです。ここからは、学内事情に言及します。多くの方は、自分は一生懸命に大学を思って、頑張っているといいます。他の人たちは危機感がなく、何も考えていないというニュアンスです。しかし、ここがポイントなのです。「アナタは、学内の人たちに現状を理解してもらえるうな行動をしましたか? もし、動いたとしたら、どんな方法で動きましたか?」と質問します。ほとんどの方は、理解してもらうための行動をしていません。ここで若干アドバイスします。

 まあ、ここまで気づきを得られれば、元気になってくれて、翌日はお礼のメールが届きます。この返信には、多くの方からお礼メールを頂くが、モチベーションは3日以内に下がることを伝えます。そして、モチベーション維持のため FMICS の参加行動という言葉があればいいことも。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年04月04日

『アメリカン・ロイヤーの誕生: ジョージタウン・ロースクール留学記』


 阿川 尚之 著 中公新書(1986/10)

プロローグ 三人のロイヤー
T ジョージタウン・ロー・スクールへ
U 第一学年秋学期
V 第一学年春学期
W ワシントンの夢、ニューヨークの夢
X お茶の子さいさい
Y 司法試験狂騒曲
エピローグ ロイヤー誕生

 慶應義塾大学総合政策学部の教授や学部長、駐米大使館の公使を歴任した著者は、今でこそ著名な法学者・エッセイストとして、多くの著作を残していますが、本書はその最初となるものです。 1951年生まれの著者は、慶應義塾高等学校(2年生の夏にハワイへ短期留学を経験)から慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、そこから留学したワシントンDCのジョージタウン大学(スクール・オブ・フォーリン・サーヴィス)を卒業して、1977年にソニー株式会社に入社。会社の留学制度を利用して、1981年8月から1984年5月までジョージタウン大学のロースクール(3年制JD課程)に学び、同年7月にニューヨーク州の司法試験を受験します。そして受験後も会社の了解を得て米国滞在を延長し、8月から翌1985年3月まで、ニューヨークの法律事務所で働いてから帰国し、毎月会社に提出していた報告書を基にして本書を世に出します。

 その内容は、当時の日米関係のイシューであった通商問題を担当していた会社員として、交渉相手として接するアメリカの弁護士の存在やその有り様への関心から始まって、LSAT受験やエッセイ・推薦状をとりまとめてのアドミッションのプロセス、毎学期のハードな授業内容や死力を尽くしきるような期末試験、多様な教員やクラスメートの生態、夏休みの法律事務所での実習生体験、司法試験の受験から弁護士登録に至るまで、アメリカの弁護士養成の世界が、生き生きと描かれていています。

 30年も前に刊行された本ですが、最近どこかで紹介されていたので気になり手に取ってみたところ、引き込まれるように一気に読み進めてしまいました。新品でも中古でも入手は容易なようですが、おそらく日本語で書かれたアメリカのロースクール体験記(特に外国人留学生向けの1年制LLM課程ではなく、米国の司法試験受験の要件となる3年制JD課程のもの)としては、未だに貴重な文献でしょう。

 職能集団が成立する社会のシステムや養成制度とは何なのか。典型的な資格専門職である弁護士であれ、我々のような大学職員であれ、昨今の我が国で議論されている専門職養成(特に文系)の課題を考える上でも、とても示唆に富んだ一冊と思います。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

たった一夜の大宴会

 今年の四大入試はまるで、シャンパンタワーのようなものでした(不謹慎だと思う方はこの先は読まないでください)。テレビで見たこともある方はいると思いますが、シャンパングラスをピラミッド状に積み上げて頂点にグラスを一つ置いたカタチにして、上からシャンパンを注ぐとゆっくりと下へ下へとシャンパンが流れ落ち、注ぎ続けると下のグラスまでシャンパンがいっぱいになり溢れる。それが今年の四大入試の受験生のカタチに似ていると感じました。当然、下までは溢れることはなかったのですが、文科省が定員管理を厳格化した結果が表れたといってもいいでしょう。

 これを感じたのは2月中旬に、中規模大学の友人と話をしていて、「今年の入試は、例年通りの合格者を出したが、歩留まりが良く124%を超えてしまうかと思って焦りました」という話を聞いたからです。まさに今年の入試では、小規模大学ではわかりにくい現象が起きていたのです。

 文科省が2016年から定員管理の厳格化政策をスタートし、2017年度は収容定員8,000人以上の大規模大学に関して114%、中規模大学(4,000人以上8,000人未満)は124%超過すると私学助成全額不交付になるため各大学が厳格に守った結果、受験生は下へ下へと流れていったのでした。最終的には、18年度からは110%、100%と厳格化されます。16年度に大規模、中規模大学は新たな学部・学科設置や定員増をして対策した大学もありましたが、以前のように合格者を多く出せなかったというのが、今回の結果に繋がりました。

 文科省の定員管理は、外から見るとしっかりと厳守されているように感じる入試だったといえるのではないでしょうか。対策をした大学も結果的に定員増が成功し、上手くいったように感じているはずです。言い方を変えると、シャンパンタワーの途中に、グラスを追加したようなものですから。これにより一番下の段にあるグラスには、やはりシャンパンが届かないままになりました。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。人気のある大学が、定員管理を厳守した結果、下で待ち構えていた大学に自動的に学生が流れただけの話なのでしょうか。このカタチのまま、上手くいけばいいのですが、学生のニーズやひとり一人の成長を見守ることを語らない大学が、制度を変えただけで生き残れるような時代ではなくなったと思っています。次にやってくるのは入試改革と高大接続の波です。この波に飲み込まれないように、立ち位置をしっかりと決めて、学生とどのように関わればいいのかを考えた大学が生き残ると思っています。

 規模が大きいとか、もう一つグラスを用意すればいいとか、甘く考えていると、いずれ真下のグラスをよけて自らグラスを選ぶシャンパンが多くなる現実が訪れるはずです。大きいから生き残れると思ったら大間違いです。選ばれるグラスに変わることが出来るかが問われているのです。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年03月01日

『21世紀の大学:職員の希望とリテラシー』


寺ア 昌男 ・ 立教学院職員研究会 編著 東信堂(2016/12)

第T講  大学職員にはどのようなリテラシーと能力が求められているか
第U講 「大衆化」の響きを前に ― 高まる大学志願率、紛争、そして大学設置基準の大綱化
第V講 学問環境の変化の中でリベラル・アーツを考える
第W講 求められている新しい学力と大学教育の課題
第X講 立教学院の歴史をふりかえる(1) ― 独自性と建学の理念
第Y講 立教学院の歴史をふりかえる(2) ― 戦中・戦後の実態と問題
エッセイ集
座談会 職員像の探求 ―「大学人」としての出発を控えて

 索引を含めて300ページを超える比較的大部な本書は、(1)立教学院の若手事務職員による自主的な勉強会「立教学院職員研究会」にて2014年6月〜2015年2月に行われた寺ア昌男先生の連続講義の記録(第T講〜第Y講)、(2)各講の内容に対して2名ずつ計12名の執筆者(勉強会参加者)によるエッセイ集、そして(3)勉強会の中心メンバーと寺ア先生、それに立教学院の副総長もゲスト交えて、このユニークなSD活動を振り返る座談会という内容で構成されています。

 寺ア先生は、東京大学で教育史、特に大学史を専攻されて博士課程を修了された後、野間教育研究所の研究員を経て、1974〜1979年立教大学、1979〜1993年東京大学、1993〜1998年に再び立教大学、そして1998〜2003年の桜美林大学を最後に専任教員は退かれるものの、2003年〜2015年まで立教学院の本部調査役を務められます。

 全体として立教大学のお話が色濃く反映された内容となっていますが、もっともそれゆえに、本書を貫くコンセプト・大学職員に最低限必要な3つのリテラシー・「大学とは(または大学という職場は)何を特質とする場なのか」「自分の勤務する大学のことをよく知っているか」「大学政策はどう動いているか」を身につけていることが、いかに大切なのか具体性をもって訴えかけてくる、読み応えのある内容となっています。

 寺ア先生が大学の同僚としての職員の存在を強く認識し、専門とする大学史を熱心に聴いてくれるオーディエンスであることを発見して、職員リテラシーの意義に気づかれたのは、桜美林大学(大学院)で教鞭をとられていた頃のお話。初期の受講生(科目等履修生)として当時・日本私学振興財団におれれた高橋真義さんの名前も出てきますので、ぜひお手に取ってご覧ください。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

混迷からの脱出

 はじめしゃちょーHIKAKIN(ヒカキン)さんを知っていますか?この二人は有名なユーチューバーです。彼らがユーチューブに情報を流すと、商品が売れるという話です。若干情報に遅れ気味だと思いますが、最近様々な方向から、ユーチューブの話が聞こえてきます。

 電通の知り合いは、このところテレビの広告費が減って、そのかわりユーチューブ広告へ予算が移ってきているという話を教えてくれました。また、卒業生や学生たちにテレビを見るかリサーチすると、テレビよりユーチューブを見るという人の方が圧倒的に多かったのです。気づかないうちに情報の取り方が大きく変化しているようでした。私のように家に帰ると、すぐに見もしないテレビをつけっぱなしにする人が減ってきたのだと思います。

 先日、友人が小学生の子供に「大人になったら、何になりたい」と質問をすると、ユーチューバーと答えられ戸惑ったという話がありました。友人曰くプロ野球選手とかサッカー選手といわれると思っていたが、流石にユーチューバーには驚いたということです。

 オックスフォード大学が認定した、あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種が本当になりそうな予感がしました。その上、今後10〜20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクがあるともいわれています。きっと子供たちはその変化を肌で感じ取って、言動に表れてきているのではないかと思いました。まさに5年後、10年後にその小中学生が大学に入学する頃には、職業に対する意識は大きく変化していると思います。

 そろそろ大学も勝ち組と負け組のラインが見え隠れしてきた頃だと思いますが、これからの2〜3年は、今まで以上に入学者の動向に大きな変化が如実に表れることは間違いないでしょう。自大学が変わらなければいけないことは、誰もが理解しているとは思いますが、危機感の温度差に問題があります。大きく変わらなければいけないのか、今までの延長線上を少し変化させればいいのか、このカタチを示すことが出来ない大学が多数です。現状の変化に気づき、自大学に合わせた改革をしていない大学が果たしてこのまま生き残れるのかは、結果を見るよりも明らかだと思います。2018年問題といいながら、どのようにして自大学を改革したらいいのか分からない、大学のトップマネジメント達が、耳心地のいい改革案を出してくれるコンサルタントに頼るのは必然のことです。今後は多くの大学がコンサルタントを頼り、学生不在の改革案に乗り学内が混迷すると思います。

 この状況を打開できるのは、上杉鷹山のような灰の中から残り火を見つけ、新たな炭に火を移せる作業が出来る人がいる大学だと思いました。そんな人を目指したいですね。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2017年02月01日

2017年度「大学アドミッション」のご案内

 例年に引き続き、桜美林大学 大学院 大学アドミニストレーション研究科(修士課程)にて、私が非常勤講師として担当している授業科目「大学アドミッション」のご案内です。シラバスの詳細等は、追々私のブログにて更新して行きますので、あわせてご覧ください。

 この授業科目は2014年度に新設され、今回で4年目となります。4月〜7月の春学期に都心部(千駄ヶ谷)のキャンパスで開講しますが、研究科の通信教育課程に在籍するの遠隔地の方等への履修の便を図りつつ、受講者による課題報告とディスカッションを重視した授業展開を意図して、毎週ではなく月に1回の間隔で日曜日に集中開講します。2017年度の授業日は4月23日、5月21日、6月18日、7月16日の4日間で、時間はいずれも10時〜17時(昼休み含む)です。2単位という限られた時間数の中、以下の展開を予定しています。

 初回は私による包括的なレクチャーで、「入学者選抜と高大接続をめぐる課題」を整理します。もちろんこの段階でも答申等の各種資料について事前に目を通して来てもらいます。2回目は「入学者選抜制度運用の実際」を実例を用いて検討すべく、最初の課題報告として自身の関係する大学等における具体的な入学者選抜制度を取り上げて、その特色や課題を報告します。3回目は「広報活動の課題」を探るべく、関係者へのインタビューを含めた広報活動の実例を報告します。4回目は「学生の目から見た大学選び」を検討すべく、3名以上の学生に対してインタビュー調査を行い、入学前の大学選びに関する意識や行動、受験のプロセス、大学入学後の適応などについてまとめ、報告します。

 昨年は9名の履修者と1名の過年度履修者の計10名がこの授業に参加。遠くは愛知県や新潟県からもお越し頂いくとともに、所属先も大学のみならず、コンサルタント会社や専門学校、大学に留学生を送り出す日本語学校の方も参加されていましたので、様々な興味深い事例報告とともに、活発なディスカッションが展開されました。このように入試広報部門の大学職員の方はもちろん、大学の入試広報や高大接続の課題に関心と何らかの接点をお持ちであれば、それ以外の部門や大学以外の機関に所属されている皆様も、大歓迎です。

 大学アドミニストレーション研究科の4月入学に向けた出願締切は、通学課程・通信教育課程ともに2月27日(月)ですので、正規の大学院生への応募もまだ間に合います。また正規の大学院生とならなくとも、大卒やそれに準ずる学歴のある方であれば、科目等履修生(単位認定あり)や聴講生(単位認定無し)として、気軽に履修する事が出来ます。科目等履修生・聴講生の出願締切は、3月31日(金)となっています。

(出光 直樹)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言

そこここにある改革案

 ゴルフ場に行くと、以前からこんな話が聞こえていました。「最近は若い人がゴルフしなくなったよな〜」「明らかにゴルフ人口が減っているよ」「平日のゴルフ場はおじいさんとおばあさんが目立つよね」「このままだとそのうちドンドン経営が苦しくなって、閉鎖するゴルフ場が増加するかもね」「ある名門コースは、若い人が入会しないのでガラガラのコースもあるし、おじいさんだと18ホール回らずに9ホールでお昼を食べて帰る人もいるらしいよ」「そうなると一般のお客さんを入れないと経営が苦しくなるし、収入が減ってコースのメンテナンスが出来なくなるだろうな」「このままだと、そういうゴルフ場も出てくるかもね」というどの業界にも当てはまる話でした。未だに古くからあるゴルフ場の中では、ビジターでは予約できずプレーができないというシステムが残っています。そういう古くからあるゴルフ場は、慣習に縛られメンバーの意見や世間体を気にして、安価でプレーできる企画を打ち出して集客を図ることは、なかなか実行できないのが現状でした。

 この話の解決策を最近発見しました。スポニチゴルファーズ倶楽部やゴルフレッスンで有名な米田プロが薦めるハッピーゴルフアカデミーの企画がまさに現状を打開する策です。この二つの企画の特徴は、ある一定条件を満たす会員を募って年会費を取り予約やゴルフコンペが出来るようにしたのです。今までは出来なかったことを具現化したのです。業界にとっては、切実な問題を解決する一助だと思いました。20年前では考えられなかった企画です。結局は、古いシステムが回らなくなり、その業界の構造に歪が生まれ、その現状を打開する新たな企画が生まれるのは当然のことです。今まさに至る所で起きている構造改革のひとつの打対策を見せていただきました。大学も同じように「ムリダメできない」といわず、斬新なアイディアが必要ですね。そのためには、自大学の身丈にあった「ニーズ」は何処にあるのかを、見つけ出すことが重要課題です。新しい企画を打ち出すために、必死になって探れば案外この「ニーズ」は近い所で発見できるはずです。とはいえ、すぐに出来ないといわれそうなので、やってはいけない一例をお伝えします。それは、探し出さなければいけない「ニーズ」をコンサルなどに頼むことです。これをしてしまうと、一瞬は成功するけれど、教職員が育たないことに加え不信感が生まれてしまうからです。人を涵養しなければならない組織にすぐに答えを出す仕組みだけが残ってしまい、「考えない、動かない」組織へと変えてしまうからです。問題は、従来の慣習で生きてきた古い思考の人が、若手を信用して新たな時代を一緒に走れるかということだと思っています。

(秋草 誠)

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:秋草 誠
posted by fmics at 18:02 | TrackBack(0) | 巻頭言

2016年12月28日

『流しの公務員の冒険: 霞が関から現場への旅』


 山田 朝夫 著 時事通信社(2016/10)

  序章 「自分の仕事」をつくる
 第1章 病院再生(動かす / 巻き込む / 創り上げる)
 第2章 霞が関の憂鬱
 第3章 流しの公務員の誕生
 第4章 トイレを磨く
  終章 流しの公務員「仕事の流儀」

 私にとって2016年最高の一冊でした。所々に傍線を引いてしまい、何度も何度もうなずかされ、感動の涙すら誘う、組織の中にあって組織に拘束されない「自分の仕事」の実践記録。カバー写真には、作業着を着てトイレを磨いている著者の、素敵な笑顔が写っています。

 1961年生まれの著者は、1986年に東大法学部を経て当時の自治省に入省。鹿児島県庁、衆議院法制局、自治省選挙課、大分県庁の課長、自治大学校教授を経て、1997年に大分県久住町に赴任。キャリア官僚で初めて町役場の一般職員になり、以後、地方自治体を渡り歩く「流しの公務員」を自称します。

 2015年に愛知県常滑市の副市長を退き、現在は同県安城市の八千代病院の理事兼法人事務部長を務めていますが、本書の半分近い分量を占める第1章は、流しの公務員最後の赴任地での、常滑市民病院再生の壮大な物語がつづられています。累積赤字を抱え「死人病院」とまで揶揄された市民病院を、市民や病院職員の参画による100人会議を立ち上げ、関係者を当事者に巻き込む手法により、劇的な経営改善と新病院建設を果たします。

 第2章〜第4章は、法案作成の激務を担った霞が関の行政官から、地方行政の現場に入り、ワークショップの手法で地域の人々を巻き込み、潜在力を引き出しながら課題を解決していった「流しの公務員の誕生」の物語が、失敗経験の振り返りも含めて語られます。

 終章は、現場に根ざした「仕事の流儀」のまとめ。琴線にふれるフレーズが満載です。 “問題解決で大事なのは「本質=真の原因」に迫ることです。” “現場に入り込んで、自分の体で感じることが必要です。” “人の心を動かすのは「戦略の正しさ」ではない。「ゴール」のイメージとそこに至る「物語」です。” “リーダーの一番の仕事は「こうやれ、ああやれ」と命令する事ではなく、「場を整える」ことだと私は思います。…コーヒーを用意する。朝早く来て部屋に掃除機をかける。会議の準備で一緒にホッチキス止めをやる。これらはみな「場」を整える作業です。”

 非営利の公的セクターであり、立場の違う関係者が複雑に絡み合うという点でも、地方行政と大学運営の現場は共通する点は多く、FMICS人には本書から大きな示唆が得られること、間違いありません。
(出光 直樹)

【追記】Youtubeに、本書で登場する場面の動画がありました!

常滑市民病院竣工式 いきものがかり「風が吹いている」合唱 <本書p138〜144>


山田朝夫常滑市副市長 退任セレモニー@ <本書p290>


山田朝夫常滑市副市長 退任セレモニーA <本書p291>


にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
タグ:出光 直樹
posted by fmics at 18:04 | TrackBack(0) | 巻頭言