2016年04月08日

未知なる研究会

 先日、ガイダンス業者が主催する面白い企画に参加した。この企画の当初の案内は、埼玉県内の教員を対象にした「進路指導研究会」となっており、本学は不参加としていた。なぜ、不参加にしたかは、他のガイダンス業者が主催する同様の企画に辟易していたからである。それは、「進路指導研究会」とは名ばかりの上級学校が、高校教員に対してのPR合戦だからであった。まあ、今回の企画も同様な結果だと思い込んでいた。その後、もう一度担当者から、私に直接電話があり「ぜひ参加してください」と懇願されたので、お付き合いだと思って参加した。

 しかし、この思い込みが新たな「進路指導研究会」で見事に覆されるとは予測していなかった。会場に入ってみると高校教員16名に対して、「公務員」、「理容・美容」、「栄養・調理・製菓」、「動物」、「音楽」、「コンピュータ」、「簿記・会計」、「保育・幼児教育」の分野の学校の担当者が座っていた。「保育・幼児教育」分野以外はすべて専門学校だったのが印象的だった。             

 そこで司会者が、各学校の自己紹介の後に、高校教員が知りたい、教えてほしい質問を用意していて、すべての学校に鋭い質問を浴びせた。その質問内容は「公務員」分野では、「高卒、大卒、専門卒の違いは?採用試験の難易度、職場、役職、給料の観点から。大学の公務員コース(○○大学など)で公務員を目指す必要はあるのか?」に対して、「大学からの公務員試験は、優秀な大学の方々と勝負になるので、ただ公務員を目指すのなら高卒や専門学校から進む方法を考えさせる手もある。」また、「動物」分野では、「動物分野は就職が厳しいというが、ドッグトレーナーは特に厳しいと聞く。ドッグトレーナーを目指す場合、就職や職場の状況は?また目指している生徒がいた場合、その厳しさの伝え方や諦めさせ方は?」という質問に、「はっきり言ってドッグトレーナーはそんなに簡単なものではない。私に相談があった場合は、危険性が高いのであきらめた方がいいと答える。」など、誰もが興味を示す質問に真摯に応える研究会であった。この冒頭の勢いのまま進んだ研究会は、質疑応答が活発に行われ有意義な時間があっという間に過ぎた。進路担当の教員にとっては、聞きたいけれどなかなか言い出せない質問だったと思う。この質問にしっかりと受け応えた、当該学校の方々は本当にあっ晴れだった。

 終了後は、司会を担当した二人の業者に賞賛を称え、次回の開催を期待していると伝えた。結局は当初のうがった見方を覆された気持ちのいい研究会となっていた。同時に今後は学校選びを本音で語り合える「場」を創って欲しいと願うばかりであった。しかし、内心は本音で語ってもいいのかという学校も多いことも承知しているので、ここは早急に学生のための大学改革を進めていただきたいと切に願うばかりである。
(秋草 誠)

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2016年03月03日

2016年度「大学アドミッション」のご案内

 昨年に引き続き、桜美林大学の大学院 大学アドミニストレーション研究科(修士課程・通学制)にて、私が担当している授業科目「大学アドミッション」のご案内をいたします。

 この授業科目は2014年度に新設され、今回で3年目となります。4月〜7月の春学期に都心(千駄ヶ谷)のキャンパスで開講しますが、遠隔地の方の履修の便を図りつつ、また受講者による課題報告とディスカッションを重視した授業展開も意図して、毎週ではなく月に1回の間隔で日曜日に集中開講します。

 昨年は14名の履修者数。遠くは沖縄や富山、愛知からもお越し頂き、様々な大学の興味深い事例報告とともに、活発なディスカッションが展開されました。

 2016年度の日程は4月17日、5月15日、6月19日、7月17日の4日間で、時間はいずれも10時〜17時(昼休み含む)です。2単位という限られた時間数の中、以下のようにシラバスを組み立てていますが、3年目の今年は少し変更を加えています。

 初回は私による包括的なレクチャーで、「入学者選抜と高大接続をめぐる課題」を整理します。もちろんこの段階でも答申等の各種資料について事前に目を通して来てもらいます。

 2回目は「入学者選抜制度運用の実際」を実例を用いて検討すべく、最初の課題報告として自身の関係する大学等における具体的な入学者選抜制度を取り上げて、その特色や課題を報告します。

 3回目は「学生の目から見た大学選び」を検討すべく、2つ目の課題報告として、事前に3名以上の学生に対してインタビュー調査を行い、入学前の大学選びに関する意識や行動、受験のプロセス、大学入学後の適応などについてまとめ、報告します。

 4回目は、昨年までのエクセル演習に替わる内容となりますが、「広報活動の課題」を探るべく、関係者へのインタビューを含めた広報活動の実例を報告してもらう予定です。

 期末(8月上旬)には授業全体の学びを振り返るレポートを提出してもらい、各回の課題報告内容等を含めて成績評価を行います。

 この科目は、桜美林大学の正規の大学院生としてでなくとも、大卒やそれに準ずる学歴のある方であれば、科目等履修生(単位認定あり)や聴講生(単位認定無し)として、どなたでも履修する事が出来ます。入試広報部門の大学職員の方はもちろん、大学の入試広報や高大接続の課題に関心と何らかの接点をお持ちであれば、それ以外の部門や、大学以外の機関に所属されている皆様も歓迎いたします。

 科目等履修生や聴講生への出願締切は3月31日(木)必着。詳細なシラバスや手続きの詳細等は私のブログにてご案内します。
 
(出光 直樹)

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繁盛する理由

 私の住んでいる街は、志村けんで有名な東村山市です。隣は埼玉県なので東京の端っこにある街です。そんな街にある小さな「うなぎ屋」の話をします。このお店は駅から歩いて、7〜8分くらいに位置していて、決して立地のいいお店というわけではありません。10年くらい前に開店したので、老舗というわけでもありません。愛想の良い笑顔の絶えないおかみさんと几帳面な感じの職人気質のおやじさんと二人で、満席になると27名のお店を切り盛りしています。メニューも豊富でリーズナブルな価格帯なので、遠方の方も来店するお店です。このお店が予約をしないと入れないくらい繁盛している「うなぎ屋」なのです。

 多くのお客さんが帰り際に口にする言葉があります。それが「美味しかったよ。ありがとうね」です。お客さんから、気持ちのいいくらいに帰り際に聞こえてくるこの言葉が心地よくて、私が予約する時は出入り口近くの席をお願いします。このおかみさんの配慮がすごくて、見ていて大変勉強になります。座敷は4人席が3つあるのですが、すべて満席にしてしまうと少し空間が窮屈になるので、予約時に調整して3人、2人、4人くらいの感じで座らせています。常にお客さんのことを考えて、予約を取っているのでギュウギュウの席は作らないといっていました。開店当時は出前にも対応していたようですが、来店するお客さんに満足していただけるように、数年前から出前はしていないといっていました。

 私は東村山に移り住んで16年目になりますが、その間に数多くのお店が開店して閉店する様をたくさん見てきました。当初、この「うなぎ屋」も継続するのかという気持ちで入店してみたのですが、今では心地よい空間に魅せられて、沢山の友人に紹介もして行きたいお店の一つになっています。

 先日、このお店のおかみさんから、またしても魅力ある言葉を聞いてしまいました。それは、以前おかみさんが私に「どんなうなぎが好きですか?」という質問を受け、「あまり脂がのっていないうなぎが好きだ」と答えたのを覚えていて、私の予約時にはその日に入荷したうなぎの中でも、私好みのうなぎを取っておくという話だったのです。行くたびに感じていた、私好みのうなぎはこうして出されていたのでした。ここまでされているとはつゆ知らず、「美味しい」と感じて通っていたのです。多くの常連さんが感じる「美味しかったよ。ありがとう」の言葉は、このひとり一人のニーズを探り当て対応してきた賜物だったのです。繁盛する店の素敵な理由を見つけた瞬間です。

 ふと大学も同じ対応が求められる時代が来るのではないか。ひとり一人を大切にして、ニーズを探り卒業時に、「先生ありがとう。この大学で本当に良かった」といわれるくらいの大学を目指したいと東村山の「うなぎ屋」から学びました。
(秋草 誠)

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2016年01月26日

センター試験で24泊25日

 小笠原村議会議員・一木重夫さんの表題のブログ記事が、反響を呼んでいます。

 東京都の離島・小笠原村には生徒数50人弱の小笠原高校がありますが、センター試験の受験会場は島内に設定されていないため、受験のためには定期船で本土に出向かなければなりません。しかし、毎年この時期は定期船の定期検査があり、約20日間も定期船が父島から出港せず、そのためセンター試験を受験する受験生は、このような長期間の外泊を強いられるとの事です。

 定期船はこの時期がもっとも利用が少ないらしく定期検査の日程変更は難しいようですし、センター試験の会場設置にしても、人数の少なさとともに距離の遠さからも、難しいようです。

 一木さんのブログ記事が掲載されたのは1/12(火)。早々に注目を浴びたらしく、センター試験前日の1/15(金)の段階で「大反響12000件超え・センター試験で24泊25日」と報告されています。

 私がこのブログに気づいたのはセンター試験が終わって3日過ぎた1/20(水)の夜。忙殺された業務も一段落したころでした。この記事を見て最初に感じたのは、新テストに向けてのICT活用が声高に検討されているにもかかわらず、こうした離島の受験生のハンデの問題が省みられていないことや、私自身も思いもよらずにいたことに、大学人の端くれとして愕然とする思いでした。

 センター試験は、リスニングの導入や、地歴公民や理科における2科目選択方式の導入など、年々複雑化してきましたが、費用対効果の疑わしい小手先の仕組みを導入していく前に、地域的な受験機会や環境格差の解消を優先することが、教育インフラとして国家規模で実施する共通試験のあるべき姿ではないかと、長年現場にかかわる人間として強く思います。

 この問題についてはその後、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんが「センター試験で24泊25日!〜離島高校生の受験格差を考える」(1/23付)、「小笠原高校生徒の『センター試験24泊25日』はどうすればいい?」(1/24付)と、Yahoo!ニュースに取り上げてくれた事もあり、より広く注目されているようです。

 ネットによる現場からの発信の可能性を感じさせる問題提起ですが、一木さんのプロフィールを見て、別の観点からも、なるほどと思いました。一木さんは小笠原の出身ではなく、千葉に生まれ東京や神奈川で育ち、北海道大学で水産学を学び海藻研究で博士号を取得されてから小笠原に移住しています。やはり外からの視点と学識の経験が、地域の課題解決に向けた活動の支えになられているような気がするのです。
(出光 直樹)


【2017/1/17 追記】
その後の動きを記した石渡さん、一木さんの記事です。

2016/2/10 「センター試験24泊25日」を変えたい!〜一木重夫・小笠原村議インタビュー(石渡嶺司) - Y!ニュース

2016/6/17 センター試験・24泊25日から9泊10日へ - 小笠原村議会議員 一木重夫の政治日記 - Yahoo!ブログ

2016/12/2 センター試験会場・全国から選べるように - 小笠原村議会議員 一木重夫の政治日記 - Yahoo!ブログ

2017/1/13 「センター試験24泊25日」は「9泊10日」へ〜一木重夫・小笠原村議インタビュー再び(石渡嶺司) - Y!ニュース


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ニーズと危機感

 先日、そろそろ正月気分も抜けたかな〜と感じていた時に、来年度のオープンキャンパスリーフレットを作成するための打ち合わせを、業者さん(以下、Tさん)を交えてしました。Tさんは、様々な学校に出入りしていて、学校関係のコンサルと広報の印刷物を作成している方なので、多くの情報を持っていて様々な視点から話ができる稀有な方です。Tさんと話をすると、いつもピーンと何かが引っかかることが多くあります。

 今回もリーフレットの打ち合わせというより、主に最近の高校生の受験動向の話になりました。その時にとても気になった話です。Tさん曰く、昨年から高校生の学校選びに大きな変化が訪れたというのです。よく話を聞いてみると、専門学校で人気のあった声優・マンガ・アニメ・ゲームなどの夢に近い願望分野が、軒並み人気が落ちているということでした。なかでも、代々木にある専門学校は極度に受験者が減ったといっていました。そういえば、どこかでそんな話を聞いていたな〜と思いつつ、その原因は何なのか?聞いてみました。

 Tさんは、高校生が夢を見て進学するのではなく、現実的な視点で進学先を考え始めたというのです。すごく興味深い話なので、なぜ、そうなっているのか突っ込んで聞きました。すると、自分の親たちが、リーマンショック後に経済が不安定で苦しんでいる姿を見て、危機感を感じた子供の行動が、現実的な分野への就職ができる学校選びをしているということでした。そういえば以前、声優の専門学校の方に聞いた話を思い出しました。それは私が、「声優は就職できるのですか?」と質問した時に、その方が平然と「オープンキャンパスなどで、声優にはなれないと説明しているから、その件で質問はありません」という言葉でした。「声優になりたい」という興味がある分野に進みたい気持ちがあって、最初から声優になれないといわれても、その学校にいってしまうという話が、印象的だったので覚えていました。

 結局は、高校生の「現実的な進学先は何処なのか?」と聞くとFランクの文系大学に流れたというのです。生徒たちは、とりあえず四大へ進学した方がまだましだと考えたようです。夢を追ってなんとなく専門学校に進学していた生徒たちの学校選びが、終焉を迎えたといえるのではないでしょうか。大人たちが感じていて黙っていた真実を、生徒たちに見抜かれてしまったといっても過言ではないでしょう。それにしても、その次の行き先が…決まっていないからとりあえず大学ですか…なんだかおかしな話ですね。そのうち、とりあえず大学も効かなくなる時が訪れるのでしょう。その時に慌てないように、専門学校が今後どう動くのか、しっかりと見ておくことです。
(秋草 誠)

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2015年12月28日

還暦の研修医

 去る12月2日水曜日の読売新聞に掲載された、「還暦の研修医 命を支えたい」という記事(12/9付でオンライン版にも掲載されていますに目がとまりました。2015年4月から青森県の十和田市立中央病院での研修を始めた、水野隆史さんという60歳の新人医師が紹介されています。

 水野さんが医師を目指したのは10年前の50歳の時。大学を卒業して農林省に入り農業政策づくりに打ち込んできたところ、50代で医学部に合格した女性の記事を見つけたのがきっかけとなり、仕事をしながら朝3時に起きて勉強をし、受験は国立大学の編入試験に絞って5年間で延べ30校にチャレンジします。

 やはり筆記試験で合格しても面接で落とされる事が続き、「医師として何年働けるのですか」「あなたが編入した分、若い誰かの目を積むことになる」という厳しい指摘に対しは、「100歳までやります」と答えたそうです。

 我が横浜市立大学も医学部を有するので、ある程度の年齢になってから医師を目指そうとする方の受験相談を受けることがあります。対応する質問者はせいぜい30代までの方が多く、そのぐらいだと実際に入学する人も珍しくはないのですが、50代の事例は私の知る限りでは無いので、とても参考になる良い記事に巡り合いました。

 本学の医学部医学科の入試(一般選抜)は、学科試験(センター試験+2次試験)の合計点により順位を決め、段階評価による小論文や面接が一定水準以下の場合には、順位に関係なく不合格となると明示しています。中には、学科試験の採点も年齢による差別があるのかと聞いてくる人もいますが、少なくとも本学では受験番号・氏名を伏せて公正に採点していることを説明します。そもそも限られた時間で必死に採点を行っているので、採点者にしてみれば受験者の年齢に構っている暇など無いのです。

 一方で面接においては、年齢等の個人的属性を把握した上での評価となり、年齢という要素が評価に無関係な訳ではありません。ただ、客観的な筆記試験の結果を覆してまで不合格にする判断を、単に年齢が高いかどうかという印象レベルで行っている訳ではなく、面接のやりとりの中で、医師や医学の道へ進む適性を丁寧に判断している事をお話します。

 もちろん、水野さんの記事で紹介されていたような、医師になって活躍できる年数を懸念する考え方も、当然有ることは伝えます。そうした指摘に対して、どれだけ本気で応える事が出来るのかも求められる適性の一つ。そこがブレるようであれば、医師になってからも苦労するし、そんな自信の無い人に診察される患者さんも迷惑なので、困難を乗り越える覚悟が無ければ、そもそも医師を目指してはいけません、とお話しするようにしています。
(出光 直樹)

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大学の「コスパ」

「○○はコスパがいい!」なんていう言葉をよく耳にします。最初は何の意味なのか分かりませんでした。ウィキペディアで調べてみると、「コストパフォーマンス(cost performance)とは、あるものが持つコスト(費用)とパフォーマンス(効果)を対比させた度合い。コスパやCPと略されることもあるほか、費用対効果や対費用効果ともいう。費用が安く、効果が高いほど、コストパフォーマンスが高い。」という意味でした。

 最近は、何にでも使われているような言葉です。その内にいわれるのでしょうが、まだ大学の「コスパ」については、出てきませんね。実はこの「コスパ」保育系の学科を持っている短大勤務の私には、重要な話なのです。今年、メディアで盛んに保育士の勤務状況や収入などの待遇が悪いといわれてきました。ガイダンスなどで、高校生にこの件について知っているか、手を挙げてもらうと少ない所でも2割、多い所では5割の生徒が手を挙げます。そして、大変な仕事なんだと思っている生徒が増えてきています。先生方も同様に、保育士は安くて大変な仕事なのですねといいます。この問題について、危機感を感じている私は、様々な場面で出会う生徒や先生方にしっかりと現状を伝えるようにしています。

 報道されている給与については、全国平均で手取りが14万前後といわれていますが、東京、埼玉については、初任給の平均的な手取りは16〜17万円です。高い園になると、19〜20万円の園もあります。一方で、東北のある県では、高卒の初任給が10万円強で短大を卒業した保育士が同様の金額なので、全国平均を下げています。その上に正職員になるためには、2〜3年を要する地域もあると説明します。

 この話を伝えると、高校生も先生方も納得してくれています。私は、広報室の課員に対してはもちろんですが、他大学の広報担当者にもこの話を伝えて、同じような説明をするようにお願いしています。

 なぜ、このような話を伝えなければならないのかというと、ずいぶん前になりますが福祉系の人気が上がり、各大学が学部・学科を設置して数年も経たないうちに、福祉は3Kだというレッテルが張られ、あれよ、あれよという間に人気が無くなってしまいました。その時に似ているような予感がするからなのです。まさに生徒や先生方から、福祉は「コスパが悪い」と判断された結果だと思っています。ですから、同じようなカタチにならないように全国の広報に携わる友人たちに、メールやファイスブックなどで注意を促しています。それは、保育業界全体が風評によって衰退させられるのを、少しでも避けたいからです。
(秋草 誠)

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2015年12月02日

『女子学生はなぜ就活で騙されるのか ― 志望企業全滅まっしぐらの罠』



 大学選びや就活に関わるテーマを得意とし、書籍デビューしたての頃にはFMICSの月例会でお話を頂いた事もあるライター・石渡嶺司さんの最新刊。朝日新書から11月30日に発行されました。

第1章 世間の空気で騙される ( 就活後ろ倒しだからゆっくりでいい / あの手この手でインターンシップに騙される )

第2章 親で騙される ( 一般職は就職しやすい / 親の感情、百害あって一利なし )

第3章 大学で騙される ( 資格は「安心安全高利回り」? / 自己分析本で自分探しの迷子の旅へ / 就活に不利な大学・学部のウソホント / キャリアセンターは怖いかムダか使えるか )

第4章 就活産業で騙される ( エアライン就活の沙汰は金次第? / 就職ナビサイトの使い方で一喜一憂、人生迷子も? )

第5章 企業で騙される ( 女性不在企業はダメ企業か? / 「営業は嫌!」で専門職志向が強すぎると / 場所・転勤・マミートラック )

 本書の構成は、各章の大見出し(上記カッコ内)毎に、就活にまつわるエピソード(取材を元に構成されたフィクション)が提示されて、それに関する解説が続くスタイルになっています。

 基本情報の提示がフィクションということに抵抗感がある方もいるかもしれませんが、少なくとも私には、就活を巡るリアルな問題状況の理解に、大いに役立つスタイルでした。そもそも長年の徹底した取材の蓄積が無ければ、これほどのエピソードは書けるものでは無いでしょう。

 書名や章題が一貫して「●●“で”騙される」となっているのには理由があり、就活をめぐる問題には、●●が主体的・意図的に学生を騙しているという構図だけではなく、学生が思い込みによって結果的に騙されているという側面もあるということです。

 毎年の様に目まぐるしく変化する就職活動の時期ですが、雇用のあり方(新卒一括採用など)が根本的に変わらない限り、就活と大学教育とのコンフリクトは避けれらず、関係者の本音と建前が入り乱れるような状況は続いていくでしょう。

 刺激的なタイトルや、ズバズバとした筆致により、感情的な批判を受けることの多い石渡さんですが、ベースにあるのは当事者を思うあったかい問題意識。本書が指摘している問題には、女子に固有のものだけでなく、男子にも共通する問題も多くあります。混沌とした就活の問題に翻弄されぬよう、女子学生だけでなく男子学生にも、そして学生さんを支援する多くの大学人に一読をお勧めします。
(出光 直樹)

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定員充足率の苦悩

『学研・進学情報』(2015.12)の中に興味深い記事が載っていました。タイトルは「特集 国立大追加合格・入学辞退率一覧 人気国立大は安定だが 入学辞退者は増加に転じる」です。内容は「国立大学の入学辞退者は、今年度、81大学で合計8,278名(昨年7,870名)と昨年より408名増加している。大学側では、合格者を決めるときに最初から入学辞退率を見込んでいる。入学辞退率者が予想より多いと追加合格者をだし、さらに2次募集も実施する。2015年度で追加合格者が20名以上となったのは、愛媛大39名、長崎大26名、筑波大22名、信州大21名、埼玉大20名である。」私のような小さな短大の入試広報の立場から見ると、国立大でこのような状況だとは思いもよりませんでした。私大がもっと大変なことは想像できます。ましてや入学定員が数千人規模の大学を考えると、入学者の読みが難しいだろうということは理解できます。

 とまあ、こんな話を読んでいてふと思ったのが、平成27年7月10日付けで文部科学省高等教育局より、各大学に通知されたお知らせです。タイトルが「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常経費補助金の取り扱いについて」内容は今まで私立大学等経常費補助金について、入学定員の充足状況による不交付処置を行っていましたが、いよいよ不交付の入学定員超過率が変更になるというものです。これにより、不交付の入学定員超過率が段階的に下がり、来年度から平成30年度までに収容定員8,000人以上の大学は1.10倍以上、収容定員8,000人未満4,000人以上の中規模大学は1.20倍以上と厳格化することとなりました。この下に※印で「なお、一般補助の学生単価の計算において、入学定員充足率1.0倍を超える学生分は算定人数に含めないという現状の取り扱いに加えて、平成31年度から1.0倍を超えた学生に見合う分の減額処置を行う予定。」と書かれていました。

 入学辞退者の読みをしっかりとしなければ危険な状況になる事は必須です。人気のある私学は低め低めの定員確保という安全策を取ってくることが予測できます。これで助かる中規模大学さんは、確実に増えるでしょう。しかし、これは大学が倒産しないように文部科学省が延命だけしているように感じるのは私だけでしょうか?私は大学が学生の能力を引き出す「場」に変化して欲しいと強く願っています。

 そろそろ、400人500人で講義をしている大学名をズラーと並べてこれでは、「学生の能力が上がりません大学」のリスト作って欲しいな〜これからは確実に一人ひとりを大切にして、育成できるプログラムを持っている大学が人気になるはずです。大学は研究機関で人材育成の場ではない!なんていつまでも言っててよ。その内キャンパスに学生がいなくなる日が来るはずですよ。

(秋草 誠)

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2015年10月23日

国公立大学と私立大学の学費の話

 近隣の高等学校に出向いての進学説明会などで横浜市立大学の話をする際には、国公立大学に共通するポイントに触れながら、以下のような話をしています。

 センター試験を中心に分離・分割方式といった共通のルールで運用している入試制度はその1つで、当然話の大半はそれに費やしますし、国公立大学の入試そのものにあまり馴染みがない学校の場合には、他大学の例も紹介しながらより丁寧に話をします。

 2つ目は、教員1人あたりの学生数が少なく、少人数授業が多く、ゼミや卒業論文が必修でシッカリと勉強する傾向にあることです。

 そして学費のことです。おおざっぱに言って国公立大学の納付金は、入学金が30万円程度にプラスして、毎年の授業料等は60万円弱程度で学部の分野による差は微々たるものです。また公立大学の場合、設置自治体出身の学生は入学金が半額程度になることが一般的です。

 それに対して私立大学の場合、文部科学省が公表している『私立大学等の平成25年度入学者に係る学生納付金等調査結果』よると、入学金・授業料・施設設備費を合わせた初年度納付金の平均額は、文科系学部は約115万円、理系学部が約150万円、医歯系学部だと約466万円にもなります。初年度納付金のうちの入学金(文科系学部約25万円、理科系学部約27万円、医歯系学部約104万円)は入学時のみであるものの、これ以外にも実習費等の費用がかかる事も多いようで、2年目以降もこの程度かそれ以上の金額が必要になってきます。

 学費の事を説明する際には、ただ違いがあると話すだけでなく、「なんでこんな違いがあるのかわかりますか?」と問いかけるようにしています。国公立大学は多くの費用が税金でまかなわれていること、私立大学にも補助金が交付されるもののその額は国公立大学に比べて圧倒的に少なく、運営にかかるコストがほぼそのまま学費に反映する事を話します。

 横浜市立大学の場合、年間100億円近い運営費交付金が横浜市から交付されていますので、横浜市民約370万人で割ると1人当たり2千7百円くらいになり、例えば4人家族だと毎年1万円以上も負担して支えている事を強調します。

 「皆さんの税金から頂いたお金は、私の給料にもなっています、ありがとうございます!」「横浜市民の皆さんは、何としてでも横浜市立大学に入って、納めた税金を取り戻しましょう!」などと冗談交じりに呼びかけて笑いを誘うのですが、「でもこれって、私立大学に通っている人たちには不公平なことですよね」と、国公立大学と私立大学との公費負担の格差についても指摘します。

 私自身、中学校以上で卒業や修了した学校は、(特殊な位置づけの放送大学の除き)全て私学であり、前職も私学でしたので、その点は忘れる訳にはいきません。

(出光 直樹)

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