2021年07月07日

コロナが推す学び/はたらく細胞

 厚生労働省と講談社は人気漫画「はたらく細胞」のうち新型コロナウイルスに関する2編を動画配信サイト「ユーチューブ」で無料公開を始めた。正しい知識を楽しく学んで対策に生かしてもらうのが狙い。国際協力機構(JICA)の支援で、英語やヒンディー語への翻訳も進めている。

 日本経済新聞2021年7月2日(金)「ヒットのクスリ」(中村直文編集委員)でも取り上げている。近年話題になった漫画・アニメの「はたらく細胞」、2015年に始まった本編は終了したが、スピンオフ漫画や関連企画は継続中でシリーズ累計700万部を超えている。この「細胞擬人化漫画」を簡単に説明すると、身体が街というか都市、国に見立てられ、これを守るため、白血球(クールな男性)や赤血球(少しドジな女性)、血小板(少女たち)などが作業員あるいは戦士として活躍するドラマである。

 例えば、街(身体)に入り込んだ細菌やウイルスなど外敵を、戦隊シリーズのように苦戦しながらも撃退していく。敵は花粉症だったり、インフルエンザだったり、その都度、「イケメン」のB細胞や、キラーT細胞などがヒーローとして暴れまくる。

 この想像力あふれる着眼点のきっかけは、著者の清水茜さんの妹が生物の授業中に描いた「細胞の擬人化イラスト」がベース。これを基にした新人賞の読み切りが講談社で大賞を受賞し、連載化した。編集担当者によると、当時の編集長(月刊少年シリウス)が「これが売れなかったら、編集長を辞める」と言うほど期待が大きかったとのこと。

 今年2月に発売した第6巻には再生医療に使うiPS細胞が登場、最終話にはなかなか倒せないウルトラマンのゼットンのような「強敵」、新型コロナウイルスが現れる。こうした化学モノは男性からの人気が高いが、はたらく細胞は10〜20代の女性からの反響が大きく、2度も舞台化した。

 中村編集委員は、作家の井上ひさし氏の名言を引用し「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに」はコンテンツマーケティングの極意であると結ぶ。

(宮本 輝)

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2021年06月25日

FMICS BOOK PARTY 20-339 伊藤 亜紗 『手の倫理』

「FMICS BOOK PARTY」は、本を読んで=INPUT、人に伝えて=OUTPUT、理解を深めあうことができる「安全な場」です。ワイワイガヤガヤ、仲間とともに本を読むことの楽しさを共有します。指定図書を読破された方、読み込み中の方のご参加も歓迎いたします。

【日時】 2021年6月25日(金) 午後8時〜10時

【使用媒体】 Zoomミーティング

【指定図書】 伊藤 亜紗 『手の倫理』 講談社選書メチエ


【推薦者】 大山 範子 (神戸女子大学古典芸能研究センター 非常勤研究員)
「さわる」と「ふれる」という言葉を、皆さまはどのように使い分けていらっしゃいますか。
 『手の倫理』は、この二つの語の分析を議論の出発点として、さまざまな場面をあげて「接触」を通して生じるコミュニケーションを論じています。こうした触覚のありようは私にはとても新鮮で、皆さまからいろいろとお話をうかがえればと思ってこの本を選びました。

【参加要件】 指定図書を読破された方
 【参加費】 無料
 【申込先】 yoneda(アット)fmics.org 担当:米田 敬子
【申込締切】 2021年6月23日(木) ※定員15名
【事前課題】
 1.自己紹介 400字以内
 2.『手の倫理』の帯のポップコピーを考えてください。
 3.アウトプットする=読み聞かせをしたいと思う3箇所を選んでください。
 4.お勧めの一冊を、例えば、「絶対に、元気元気元気に成る一冊」のような冠を付けて紹介してください。
 5.次の二つのどちらか(両方とも可)を選んでください。
 @「さわりたい」ものと「ふれたい」ものをそれぞれ一つあげて、その理由も聞かせてください。
 A「さわる」「ふれる」という言葉を使ってお話を作ってください(詩や短歌・俳句、あるいは視覚的なオブジェも可)。

★7月の推薦図書★
 五味 太郎 『大人問題』 講談社文庫
 推薦者 田中 頌子 (湘南工科大学工学部 2年)

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2021年06月23日

FMICS 6月例会(第739回例会) わたしはコロナ禍の先を観る PART3 輝く大学を作るためにわたしたちは何をしたらよいのか

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■高等教育問題研究会 FMICS 2021年6月例会(第739回)をご案内いたします。

コロナ禍、世界的不況の中の大学活き残りのカギは、大学の主役で活きた資産である学生の可能性を引き出すために教職員はスクラムを組むべしという「学生教員職員三輪車論」を見える化することにかかってくるのではないかと強く思います。
 大学は、学生が主役の熱いストーリーを分かりやすく見える化することが求められます。
 「虫の目・鳥の目・魚の目、THINKBIGな視座に加えて、あったかさいっぱい」のミッション・パッション・アクションは、必要不可欠です。
 4、5、6月、3回シリーズで、私たちは何をすべきかを多くの皆さまとワイワイガヤガヤと考えることといたします。

 皆さまには、お仲間、学生・生徒さんにもお声かけいただき、ワイワイガヤガヤ、侃々諤々の月例会、さらには、日にちを跨ぐ茶話会にもご参加いただきたくお願いいたします。

 安田賢治さまからのメッセージです。
 新型コロナウイルスの感染拡大は収まりそうもなく、オンライン授業中心の大学もまだまだ少なくありません。実施が危ぶまれた今年の入試は、コロナ禍に負けずに万全の体制のもと無事に終了しました。また、今年の入試は大学入試改革元年の入試でもありました。紆余曲折の末、改革は小幅にとどまりましたが、これまでの経緯は今年の入試で浪人生が減るなど、大きな影響を及ぼしました。コロナ禍、入試改革、受験生は振り回されてばかりです。
 その一方で、コロナ禍の陰に隠れて、確実に大学無競争入学時代が近づいています。今年の私立大の戦後最大の志願者大幅減がそれを物語っています。大学にとっては存続の危機が近づいていると言っても過言ではありません。こんな状況の中、各大学が勝ち残っていくにはどうすればいいのか、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。


【日時】 2021年6月23日(水)
   研究会 午後8時〜10時30分(Breakoutsession 含む)
   茶話会 午後10時30分〜

【使用媒体】 Zoomミーティング

【テーマ】 わたしはコロナ禍の先を観る PART3
   輝く大学を作るためにわたしたちは何をしたらよいのか
   〜未来を切り拓くため私たちはチャレンジと失敗を束ねます〜


【問題提起】
 安田 賢治 (大学通信 常務取締役情報調査編集部ゼネラルマネージャー)
【コメンテーター】
 出光 直樹 (横浜市立大学 アドミッション課専門職・学務准教授)
 黒沼 靖史 (光英VERITAS中学高等学校 美術教諭)
 菊地 勇次 (筑波大学 教育推進部教育推進課長)
 近藤 浩 (帝塚山大学 東生駒キャンパス学生生活課長)
 田中 頌子 (湘南工科大学 工学部総合デザイン学科2年)
 今西 はな (渋谷教育学園幕張高等学校 卒業生・米国大学進学)
【司会】
 高橋 真義 (桜美林大学 名誉教授)

【参加費】 社会人2,000円(年会費を完納している場合は無料) 学生(会員・非会員問わず)無料

【申込&問合先】 yoneda(アット)fmics.org 担当:米田 敬子
 参加定員 40名
 申込締切 2021年6月21日(月)
*お名前、ご所属、連絡方法、本月例会を何によってお知りになられたかをお知らせください。
*参加エントリーをいただきますと参加費の入金を確認の上、資料を送付いたします。
*当日、ミーティングへのご招待をいたします。

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2021年06月10日

新企画のご案内 FMICS 茶話会 LOUNGE 「ある女子大学生のぽわシャキ劇場」

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 FMICSは、“あったかさの自己表現”をグルーブアイデンティティとしています。多くのFMICS人の発表の場を創るため、2021年6月から、『FMICS 茶話会 LOUNGE』を立ち上げました。毎月第2と第5木曜日。少し遅めの午後10時(22:00PM)スタート。原則30分間としますが、30分間の延長はOKとします。
 皆さまの積極的なご参加をお願いいたします。

■参加資格
 FMICS会員。皆さまが責任を持って紹介されるお仲間は、ゲストとしてご参加いただきます。

■タイムスケジュール
 挨拶TIME: 5分間 参加者全員一言自己紹介
 発表TIME:10分間 最大延長+5分間
  「日常」(拡大解釈を歓迎します)を切り取ってください。発表者は、話しの内容を圧縮したCATCH COPYにします。
 応援TIME:15分間 発表者がホクホクするように、参加者はほめます。

■発表
○2021.6.10(木) 田中 頌子 (湘南工科大学工学部 2年)
「ある女子大学生のぽわシャキ劇場」

■問合先 米田 敬子 yoneda(アット)fmics.org

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2021年06月09日

塩1つまみで味付けは劇的に変わる!

 徒然なるままに、夜中にPCに向かいて…ではないが、今回は雑談で紙面を埋めてみようと思う。

 先月の例会、一番のポイントは参加者のどなたかの発言「学生が万引きで捕まったが、店長から『お宅の学校はどういう教育をしているのか?』と言われた」に凝縮されていると思う。要は、学生を育成するに当たって大学の責任はどの範囲まで及ぶのかということである。読者が中高校関係者であれば生徒、小学校関係者であれば児童に置き換えても全く同様に成り立つ。様々な観点で語る事ができるが、若者が児童・生徒・学生になるに連れて何が変わるかと言えば、彼らの行動範囲である。それに反比例する形で、若者に対する学校関係者の直接的責任は小さくなる。この対応関係は保護者においても本質的差異ないであろう。結局の所、学校関係者が若者に対して負う直接的責任は、学校が直接提供する有形無形の教育サービスにおける質量の両面の保証しかない。正直な話、学校を卒業した児童・生徒・学生の卒業後における行動に対する責任は、学校が負う余地はグンと小さくなり、それは卒業後の時間が経過するほど益々小さくなる。

 例外的事例が数多あることを承知で言わせてもらえば、ここ十数年で企業の人材育成機能が急速に低下したような気がしてならない。無論、それと同時に、学校組織における人材育成力の低下も甚だしいのは間違いない。企業人が大学で学生相手に授業をすることは少し前の高大連携・高大接続と同様で、学生の学びを刺激するための企画である。少々下心を持てば、大学側には大学卒業後の就職先の確保を狙っている、企業側は少しでも優秀な人材を早期発見するきっかけを狙っているのかもしれない。

 これはこれで今のモードに合わせるという意味では重要な対応ではあるが、企業がこういう人材を(即戦力として)欲しているという理由からカリキュラムの大半を企業人育成にシフトさせるのはいかがなものか?企業人の教えを大学での学びにどう落とし込むのかという観点でカリキュラムを再検討することに意義はあるが、国際化と称して海外留学のルートを組織の許容を越えて拡張すること、コミュニケーション能力の育成と称して知識獲得のきっかけになる保証のないアクティブラーニングを無駄に拡張すること、データサイエンス隆盛の流れに乗ることを名目に統計学やプログラミングの授業を組織の許容を越えて拡張すること。実例の枚挙に暇がないが、本来の大学における、大学でしか担えない役割を放棄する事にどこまで正当性があるのか?ここをまず検討しなければならないだろう。

 とかく人間は帰属する組織の安定性を希求する反面、組織変革の名のもとにその不安定性を希求する存在でもある。この匙加減をどこに置くのか?今後の組織運営はより繊細な匙加減が要求されるのかもしれない。

(中村 勝之)

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お風呂が沸きました

 2021年5月29日(土)毎日新聞夕刊1面に“念願の商標登録”の見出し。住宅機器メーカー「ノーリツ」(神戸市中央区)製の給湯器のメロディーと声が今春商標登録されたとのこと。1997年以降の製品から浴槽の湯張りが完了した時にリモコンから流れるようになり、ドイツ人作曲家テオドール・エステン(オースティン)のピアノ曲「人形の夢と目覚め」の第2部「夢を見ているところ」の「ソファミ〜ソドシ〜ソレド〜ミ〜」というメロディーを奏でた後、「お風呂が沸きました」と告げる。

 それより前はブザー音だったそうだが、目の不自由な方々の利便性を高めるため、分かりやすい内容に変更。担当者によると「聞き飽きず、流行に左右されない」との理由からクラシック音楽に絞り、「風呂に入る高揚感や幸福感を感じられる」としてこの曲を選んだという。

 メロディー、文言ともに97年から一貫しているが、実は細かい変更が繰り返されている。2000〜01年の製品からメロディーが更新、リモコンのバージョンアップに伴い給湯温度の変更など搭載する音声案内が増え、データを圧縮する必要が出てきたため。どうせ変更するならと、コンピューターで鉄琴の音に変換していた従来の方法を改め、シンセサイザーの生演奏に変えた。演奏は当時の従業員が担い、譜面の正確な再現は機械に劣ったものの、「耳になじみがいい」と評判はよかったという。

 湯張りの完了を告げる女性の声は声優に頼んでいる。現在は3代目も務めた5代目の声優が担っている。リモコンは5〜10年で新しいものに切り替えるため、案内する内容や種類の変更に合わせて音声も定期的に録音し直している。

 各家庭に流れ続けてきた音楽と音声だが、商標は長年文字や図形だけだったため、これまで商標登録されることはなかった。2015年4月から音も認められるようになった。特許庁が新たに「音商標」の登録を始め、小林製薬の「ブルーレット置くだけ」、大正製薬の「ファイトー、イッパーツ」などテレビCMでなじみ深い音声も認められている。

 ノーリツは2017年7月に特許庁へ商標登録を出願したものの、2018年6月オリジナル曲ではない上に、社名や商品名が入っておらず「ノーリツと識別できない」として却下された。それでも諦めず、テレビ番組で取り上げられたことやCMの放映回数、導入当時の製品カタログなど四半世紀にわたり親しまれてきた実績を追加で資料提出し、2021年3月に念願の登録がかなった。ノーリツによると、クラシック音楽を含む音声としては初の登録、音声は同社の公式ユーチューブチャンネルで聴けるとのこと。

(宮本 輝)

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2021年05月28日

FMICS BOOK PARTY 19-338 アンデシュ・ハンセン 『スマホ脳』

「FMICS BOOK PARTY」は、本を読んで=INPUT、人に伝えて=OUTPUT、理解を深めあうことができる「安全な場」です。ワイワイガヤガヤ、仲間とともに本を読むことの楽しさを共有します。指定図書を読破された方、読み込み中の方のご参加も歓迎いたします。

【日時】 2021年5月28日(金) 午後8時〜10時

【使用媒体】 Zoomミーティング

【指定図書】 アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』


【推薦者】 小西 英行 (多摩大学 経済学部教授)

【参加要件】 指定図書を読破・読み込み中の方
 【参加費】 無料
 【申込先】 yoneda(アット)fmics.org 担当:米田 敬子
【申込締切】 2021年5月27日(木) ※定員15名

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2021年05月21日

FMICS 5月例会(第738回例会) 企業人の視座からコロナ禍の先を観る PART2 大学は企業が欲しい超優秀な学生を育てられるのか

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 コロナ禍、世界的不況の中の大学活き残りのカギは、大学の主役で活きた資産である学生の可能性を引き出すために教職員はスクラムを組むべしという「学生教員職員三輪車論」を見える化することにかかってくるのではないかと強く思います。
 大学は、学生が主役の熱いストーリーを分かりやすく見える化することが求められます。
「虫の目・鳥の目・魚の目、THINKBIGな視座に加えて、あったかさいっぱい」のミッション・パッション・アクションは、必要不可欠です。
 4、5、6月、3回シリーズで、私たちは何をすべきかを多くの皆さまとワイワイガヤガヤと考えることといたします。

 皆さまには、お仲間、学生・生徒さんにもお声かけいただき、ワイワイガヤガヤ、侃々諤々の月例会、さらには、日にちを跨ぐ茶話会にもご参加いただきたくお願いいたします。

 3名のプロフェッショナルに問題提起をお願いします。

 高木伸治さまからのメッセージです。
 就社から就職へ――。この言葉を一体、何度聞いたことだろう。1980年代前半、日経記者として企業取材を始めたころから、経営者たちは採用や労務管理の話をする度にそう言っていた。だが正直、日本企業には無理だと思っていた。
その後のバブル崩壊、リーマンショックなどを経て、企業が固定費削減に動く度に年功序列制の廃止、成果主義の導入が声高に叫ばれる。そして新型コロナ。今度はジョブ型雇用制度が現実味を帯びる。企業には新卒者全員に投資し、ゼネラリストを育てる余裕はもう、ない。無理だと思っていた方向へ企業が本当に変わり出している。
社会の二極化と並行して進む社員の二極化。七十歳雇用の義務化もにらみ、企業内で入社前から選別が進む。女性活用、外国人採用、シニア雇用と多様な人材を否応なく抱え込む企業は経営者も含めた専門職集団と化す。
 大学も大学生もそれをどこまで分かっているのだろうか。

野村典文さまからのメッセージです。
<企業が未来に向けてほしい人材と産学連携について>
 ここ4年程、データサイエンス分野における産学連携による社会人教育に携わってきました。当初、大学は専門教育(数理統計、AI技術)を提供し、企業側はビジネス課題やデータを提供することでお互いの得意分野を共有することができ、うまく回るのではないかと考えてきました。しかし、結果は思うように進んでいません。なぜでしょうか。
 現在の日本では、ビジネスの意思決定を任される人材は文系出身者が多いと言えます。その人たちにいきなり数理統計や微分積分を教え、さらにプログラミングまで教えるという大学教育のスタイルは、企業になじみませんでした。また、ビジネスドメインを知らない大学にとっては、いきなり企業課題やデータを提供されても扱いきれなかったのです。
 そこで、この問題を解決する新たなやり方を検討し、試行し始めています。今回は新たな産学連携での人材教育に関して皆様と共有し、考えていきたいと思います。

 片山英治さまからのメッセージです。
「これからの「大学学生教員職員三輪車論」再考:実現に向けた取り組みを改めて考える」
 2019年7月のFMICS例会では、「ネット時代の児童・生徒・学生を活き活き主役にする『学生教員職員三輪車論』の推進と学校経営」と題し、大学改革の鏡としてよく引き合いに出される日本企業と米国大学の鏡に「ひび」が入りつつある状況を紹介し、これからの新しい「大学学生教員職員三輪車論」のイメージを、仮説として参加の皆様にぶつけさせていただいた。
 新しい三輪車論とは、前輪が学生であり続けることに変わりはないものの、後輪の一つが「学内役員・教職員(=学生のキャリア支援力)。学生に焦点を当てた中長期経営計画の策定・実行を通じた一体感の醸成が鍵となる。もう一つが、「学外家庭・企業・地域等」(=コミュニティ支援力)。大学には、継続的なコミュニケーションによりコアファンの醸成・維持拡大を図り、学内役員・教職員と同様の車輪サイズとなるよう関係の構築に努めていくことが期待される。
 私は今でも新・三輪車論の有用性を信じているが、その後のコロナ禍を含む環境変化を踏まえ、新たな視点を加えて具体的な取り組みについて改めてご参加の皆様と一緒に考えてみたい。


【日時】 2021年5月21日(金)
   研究会 午後8時〜10時30分(Breakoutsession 含む)
   茶話会 午後10時30分〜

【使用媒体】 Zoomミーティング

【テーマ】 企業人の視座からコロナ禍の先を観る PART2
   大学は企業が欲しい超優秀な学生を育てられるのか


【問題提起】
 高木 伸治 (テレビ愛知 取締役専務執行役員)
 野村 典文 (伊藤忠テクノソリューション 技監・エグゼクティブプロデューサー)
 片山 英治 (野村證券 法人企画部主任研究員)

【コメンテーター】
 小西 英行 (多摩大学 経営学部教授)
 原田 健 (千葉商科大学 経営企画室)
 長沼 昭太郎 (テルモ 東北支社)
 柳澤 明良 (湘南工科大学 工学部4年・ロボット研究会前部長)
 木原 真穂 (富山大学 工学部4年)

【司会】 高橋 真義 (桜美林大学 名誉教授)

【参加費】 社会人2,000円(年会費を完納している場合は無料) 学生(会員・非会員問わず)無料

【申込&問合先】 yoneda(アット)fmics.org 担当:米田 敬子
 参加定員 40名
 申込締切 2021年5月19日(水)
*お名前、ご所属、連絡方法、本月例会を何によってお知りになられたかをお知らせください。
*参加エントリーをいただきますと参加費の入金を確認の上、資料を送付いたします。
*当日、ミーティングへのご招待をいたします。

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2021年05月05日

「くじ」と「くじ」の狭間で

 今回は先月の例会でも出た「最適停止問題」から話を発展させていこう。これは様々な形で定式化されているが、以下では「秘書問題」として状況設定を説明することから始めよう。
  1. ある企業が秘書1名の採用募集をしたところ、n人の応募があった(nは既知)。
  2. 応募者には順位をつけることができ、複数の応募者が同じ順位になることはない。
  3. n人から無作為に1人選んで面接を行い(ゆえに、最良の秘書が何番目に来るのかが不明)、採用の可否は面接終了直後に決める。
  4. 採用者はそれまで面接した者のうち相対順位の一番高い者である。また、採用された者はその旨を断らない。
  5. 採用が決まればそれ以降の面接は行わない。また、一度不採用とした応募者を後から採用することはできない。

 この問題は経済学の言う「非対称情報問題」の典型である。採用に当たって、応募者の中で誰が最良の人材なのかが選考前の段階で分からない(仮定(3)より)からだ。事前に応募者の内実が不明な状況では事前審査(スクリーニング。大学入学者を選ぶ状況なら各種入試や出願の際の各種要件)を行うのが普通だが、今の設定では面接以外の判断材料がない。そこで、企業は次のような採用過程を踏むだろう。
  • 最初のk人までは相対順位をつけつつ無条件に不採用とする。
  • k+1人目以降は最初に@で定めた相対順位を上回った応募者を採用する。

この時、企業の直面する問題は、最良の人材を獲得する確率を最大にするように、すなわち無条件に不採用にする応募者数をどのように制御すればいいのかに帰着する。その結果は、k=n/e、すなわち応募者の1/3強を無条件に不採用とし、その直後に面接した応募者を採用すれば、その人は確率約37%で最良の人材であると話したのは例会の通りである。そして、この問題の美しい所は、この確率の大きさが応募者の大きさに依存しない事である。

 さて、上の話を応募者の立場で少々深堀りしてみよう。

 第1に、応募者はその企業の業態や業績・評判、秘書業務がどのような物であるのかについての知識を持っている必要がある。就活を控える大学生は本質的に同じ事が要求されるが、高校生の場合、出願を考える大学の評判や学部で何を勉強するかについての情報が必要だという事である。第2に、採用者はそれ以前までの面接者の中で相対順位が1位だっただけで、その基準は応募者から見れば不明である。逆に言えば、採用者が採用されたのは「くじに当たった」程度の意味合いしか持たない事である。変な話、真面目に努力を積み重ねても採用され(合格し)ないケースもあれば、適当にやっていても採用され(合格す)るケースもあるのである。第3に、選考段階でスクリーニングするのは本質的に企業が主体的に行うのであって、応募者は行えないという事である。無論、第1の点を踏まえれば、応募(出願)段階で適切な情報を入手した上で取捨選択したのであれば、それなりのスクリーニングを行ったと言えなくもない。だが、第4に、企業側から見て約63%の確率で採用者が最良の秘書ではないのと同様に、応募者側から見ても採用されて働いた結果に満足するかが全く分からない事だし、そもそも論として、採用後の話は秘書問題には存在しない事である。仮定(4)から、採用者は企業からの申入れに断ることはないというのは、第1の点から、応募企業に関する情報や秘書業務の内容を知っているからであって、この点を持ち出すこと自体がナンセンスである。だが、現実はそうは行くまい。

 以上を踏まえて、高校生向けにどのような日常生活を営めばいいのかについてアドバイスしてみようと思う。無論、この話は全ての年代で直面する事項に当てはめても同様に成立する。

 高校卒業後の進路の主軸は大学にあるのだろう。その数約800。ここから大学卒業後の進路や大学で学びたい分野、居住地等を勘案して選択肢を絞り込む。その際、実は学力(偏差値)や評定平均に基づいた階層が成り立っている。実は、高校生たちが絞り込む選択肢には階層が存在する。なので、大学進学後に何をするのかと同時に選択肢の階層も見定めなければならない。そして、現状と比較して目標とする階層と食い違いがあるのなら、そこにある程度合致するための行動を取らねばならない。

 さらに、選択肢を絞り込むためにオープンキャンパス等に積極的に参加して選択肢の実情を知っておくことが必要である。ただ、失礼な言い方だが、大学関係者は高校生に対してありきたりな事しか言わない傾向にある。そのまま受け取れば選択肢の絞り込みができなくなってしまう。その意味では、相手を見抜く「目」と「耳」を持つ必要がある。目標階層に合致するためのあらゆる行動、それと同時に「目」と「耳」を磨くあらゆる行動、これらは「くじ」を引くまでに継続できていなければならない。「くじ」を引く直前段階で何をやっても本質的に無駄である。現状に合致する階層を変更することは本質的に無理なのだから。

 人生のキーポイントには必ずといっていいほど「くじ引き」がある。その結果そのものは確率事象なのでそれ自体を大きく変えることはできない。だが、ある「くじ引き」と次の「くじ引き」には時間的間隔がある。その間に何を為すべきか? ここを考えるのが高校生目線で見た高大連携・高大接続の本質の1つである。

(中村 勝之)

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強い会社は「学びの場」

 大学は仕切り直しの春のはずが新型コロナ変異株「第4波」急拡大に伴い対面授業を中止または最小限にして実施している。日本経済新聞2021年4月8日オピニオン欄「強い会社は学びの場」にて会社を学習インフラ化する動きを見ていきたい。

仕事の場を「学びの場」にする試みとして不動産関連サービスのLIFULL(ライフル)が手がけるリビング・エニウェア・コモンズという事業がある。全国各地の遊休施設を転用し、仕事ができる滞在型の拠点として貸し出す。現地の人との交流で自分の知らない世界と出合い、新たな着想がわいたという声が利用者から上がる。フリーランスなど個人の利用が中心だったが、今「オフィス」として関心を寄せる会社が増えている。働きながら従業員が成長するのを促す。「こういう自由な働き方を認める会社に若い人は集まる」。事業責任者は予想する。人材を丸抱えして自社のカラーに染め上げる手法はもう通用しない。寿命が延び、人生設計は転職や起業が当たり前になる。キャリアアップのため会社を去る従業員がふつうに出てくる。従業員を支援する手を抜く会社は求心力を失う。

 学びは年齢を超えたテーマになった。20年創業のスタートアップ、コノセル(東京・新宿)が運営する「コノ塾」・小中学生がタブレット端末で取り組む学習カリキュラムはアルゴリズムで個別につくられ、進捗や理解度をデータで把握する。システム任せではなく、人によるサポートで子供たちを励ます。CEOが言う。「勉強したら成長するという成功体験をもつ子供を増やしたい」。新しい学び方に慣れ親しんだ世代が台頭する。大人になった彼らが「ここは学べる。自分を磨ける」と感じる会社でなければ、選択肢からふるい落とされる。新入社員を迎えまずは研修という会社が多い。「わが社は若い人たちの学びのニーズを満たせているか」経営者が自己点検すべき事柄である。

 哲学者の鷲田清一さんは大阪大学の学長として、かつて入学式で語りかけている。「森のなかでいちど道に迷うこと、方向喪失の状態に陥ることが、じつは大学で学ぶことの意義なのです」。なぜわざわざ道に迷わねばならないのか。鷲田さんは言葉を継いでいる。「答えがわからないまま、それでもたえず何らかの方向を選択していかなければならないのが現実世界というものです」(『岐路の前にいる君たちに』)。鷲田さんは告辞で言っている。「大学には膨大な知見とスキルがある。」(読売新聞2021年4月3日「よみうり寸評」より)

(宮本 輝)

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