2018年01月25日

「高大接続改革」の忘れもの<中編>

<前編から>

 現行の大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」と新たに導入する「高校生のための学びの基礎診断」。中央教育審議会の「高大接続改革答申」(2014年12月)の段階では、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」という名称で提起されたものです。またそれに先立つ教育再生実行会議の第4次提言(2013年10月)では、「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」および「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」という名称で提起されていて、ともに高校在学中に複数回受験出来る事と、学習の達成度の客観的把握ということがうたわれていました。

 そして、この段階での2つのテストという考え方に強く影響を与えたと思われるのが、「高大接続テスト(仮称)」の提案です。これは、2004年頃からの国立大学協会私立大学連盟等での議論において、高等学校における基礎的教科・科目の普遍的学習を担保し、その達成度を把握する新たな仕組みの構築が、大学入試や高大接続の課題であると指摘され、それらの議論が中央教育審議会の「学士課程答申」(2008年12月)や文部科学省の委託事業(2008年10月〜2010年9月)での調査研究に引き取られて提唱されたものでした。

 その議論の内容は、『高等学校段階の学力を客観的に把握・活用できる新たな仕組みに関する調査研究報告書』(2010年9月)や、その協議・研究委員であった佐々木隆生氏による『大学入試の終焉:高大接続テストによる再生』(2012年2月 北海道大学出版会)に記されていますが、その要点は以下の通りです。

  1. 諸外国のような中等教育の達成度を測る制度の無い中で、我が国は受験競争の圧力によって高大接続のための学力担保が図られてきたが、少子化による高等学校や大学への全入時代を迎え、高等学校の教育課程の多様化と大学の選抜機能の低下により、高等学校における基礎的教科・科目の普遍的な履修とその学力の担保が機能しなくなった。

  2. 大学入試センター試験は、基本的には各大学における選抜の判定資料となる集団準拠型の試験であり、これを基礎学力の達成度測定の為の試験として利用するのは不可能である。

  3. それゆえ高大接続テストはセンター試験の改変ではなく、目標準拠型の新たなテストとして設計し、段階評価や複数回実施を取り入れる。

 この高大接続テストの提言に対しては、新たなテストの導入ではなく大学入試センター試験の工夫改善により実施すべきという反対意見も寄せられたようですが、学力把握面からの高大接続インフラ構築には、テストの性格の違うセンター試験の改変ではない、新たなテストの構築・導入が求められたのです。

<後編へ>
(出光 直樹)

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大卒って、意味ありますか?

「え?この時代に『大学に入る意味』があると、本気で思ってるの……?」という人気ブロガー、イケダハヤトさんのブログを読んで。
大学好きだな、おまいら……。ごくフッツーに考えて、今の時代に大学行く意味ってないですよね。大学に行かなくても大抵のことは学べる。大学に行かなくても食べていける。大学に行かなくても人とのつながりはできる。
 大学はそもそもコスパが悪すぎる。よっぽどの目的意識がないかぎり、大学なんて行かなくていいと思いますけどね……。

といわれると、いけないこととわかっていながら「ですね」と答えたくなる自分がいます。

 私は業者主催のパネルディスカッション(四大、短大、専門学校、就職)に呼ばれ、高校生達の前で話すことがあり、高校を卒業してやりたいことや学びたいことがないのなら、進学ではなく一度就職を考えることもありだと伝えます。就職後にどうしても、学びたいことや取得したい資格が出てくれば、それから大学・短大や専門学校を考えてもいいと伝えます。なぜかというと、やりたいことや学びたいことがないのに、みんなが行くから進学して中退というのが、お互いに不幸だと思っているからです。

 最近、多くの大学関係者と話していても、大学の魅力というより学生募集のための対策をしている大学が多い気がしています。その大学の方たちが話すことの中に、必ず就職の話も含まれます。結局は、就職にどうつなげられる大学かという選択肢として、大学が見られているといえます。

 社会は少子高齢化が進み、人材不足に悩まされています。今後は過去にあった一過性の人材不足ではなく、永続的に続く人材不足の社会に突入するといっても過言ではないはずです。働く人が大切になる時代を迎えるということです。人材不足が進むと、何が起きるのか想像するとわかると思います。そこには、記憶力勝負の頭でっかちはいりません。学歴は問われなくなるでしょう。働く意欲のある人材が求められ、汗をかいて働きながら、目の前にある課題を解決する能力がある人材が欲しくなるはずです。ですから、アクティブラーニングが出てきたと思っています。しかし、中高でアクティブラーニングが進むと冒頭のイケダハヤトさんの話が、的を射ているといえるといえますね。

 大学の目的は、違うだろうといっても現状の大学の売り文句が就職率を謳っているので、この話につなげられても仕方ないことだと思うのです。大学に進学することが本当に必要なことなのか、大学に携わる我々が考え直さなければいけない時代になったということですね。

 卒業後10年経って「大学に入学して良かった!」といってもらえるような大学創りが、課題です。

(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2018年2月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2018年1月25日(木) 午後6時〜9時+食事会

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2018年01月18日

FMICS SD 310

■激動の時代を教育業界の枠にとらわれることなく、多面的・大局的視座からじっくりと展望いたします。新聞・雑誌等から教育&経済トピックスを持ちより、侃々諤々とディスカッションいたします。トピックスは、厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、簡単なMEMOを付してご持参ください。10分間程度のコメントをしていただきます。

【日時】 2018年1月18日(木) 午後6時30分〜8時30分

【会場】 四谷・蔵や
(JR・東京メトロ 四ツ谷駅 徒歩1分)
*会場の予約名は「フミックスの高橋」です。


【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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2018年01月16日

FMICS 1月例会(第695回例会) 若者の未来はどうなるか 明るくなるか 明るくならないか

 高等教育界にとって、ターニングポイントとなる2018年がスタートします。大きく変化する時代を大局観を持って読み解くために、新しい試みとして、語り合う月例会といたします。
 ディスカッションのテーマは「若者の未来はどうなるか 明るくなるか 明るくならないか」です。教育ジャーナリストの後藤さんから、テーマを読み解くカギを提示していただきました。皆さまには、正月休みに、このカギについてチェックした上でご参加くださいますようお願いいたします。
 テーマに添ったディスカッションします。その後に、読み解くカギについて後藤さんから解説していただき、皆さまと振り返りをします。
 皆さまには、お仲間とお近くの学生に声をかけられて、ご参加いただきたくお願いいたします。

■テーマを読み解くカギ
 人工知能の進化
 未曾有の少子高齢化
 複雑化する国際社会
 地方消滅の危機
 人生100年時代
 働き方改革
 一生、学び続けて働き続ける時代
 自己の能力を客観的に示す時代
 Edtech の浸透
 eポートフォリオ

■後藤さんからのメッセージ
 「共有する未来」 これからの若者たちの未来はどうなるのか。
 年明けにも、ミサイルが飛び戦争が始まると囁かれている。世界平和の構築をめざす教育を受けたところで独裁者の後継では目も当てられない。フェイクニュースに乗っかった大統領が生まれる。何が正しく何がフェイクなのかわからない。
 人工知能が進化して、人間とコンピュータが文化交流をする時代がやってくる。現代の魔法使いがレトルトカレーをストローで飲む姿に世間は驚きの声をあげる。自動翻訳機が会話を助けてくれる。誰がその訳したものを正しいと判断するのか。
 LGBTではおさまらない性の多様化。混迷の中で多様な価値観の受容を求められる。
 さて、若者の未来は明るいだろうか。明るくするために、教育は何ができるか。年初のこの日に一緒に考えてみたい。

【日時】 2018年1月16日(火)
  受 付 午後6時30分
  研究会 午後7時〜9時
  懇親会 午後9時15分〜10時15分

【会場】 桜美林大学 四谷(千駄ヶ谷)キャンパス 1階ホール
   (JR 千駄ヶ谷駅 徒歩6分 / 地下鉄 北参道駅 徒歩5分)

【テーマ】 2018年のミッション・パッション・アクション
  若者の未来を読み解く 鳥の目 虫の目 魚の目
  〜 若者の未来はどうなるか 明るくなるか 明るくならないか 〜


【問題提起】
 発表者 後藤 健夫 (教育ジャーナリスト)
 司会者 高橋 真義 (桜美林大学名誉教授)

【参加費】 会員1,000円 非会員2,000円 学生(会員・非会員問わず)500円

【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
 *お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
 *当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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2018年01月01日

FMICSについて・入会案内

 FMICS(フミックス)とは、"Fusion for the Management of Independent Colleges and Schools"の頭文字をとった名称です。「高等教育問題研究会」や「まずはじめよう会」とも言います。

 会員数は約300名、主として私立大学の事務系職員が多いものの、理事・教員・学生等の国公私立にまたがる大学関係者、各種団体・民間企業・官公庁などからも、様々な方々が参加しています。

 これから大学職員をめざす方のご参加も、歓迎いたします。

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FMICS会員のWebサイト&ブログ

 リンクをご希望の方は、 mail2018@fmics.org (サイト管理者: 出光 直樹)までお知らせ下さい。

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2017年12月26日

「高大接続改革」の忘れもの<前編>

 もう2年近く前になる2016年4月の小欄に、『「高等学校基礎学力テスト」への期待』という一文を書きました。教育再生実行会議の第4次提言(2013年10月)、中央教育審議会の「高大接続改革答申」(2014年12月)、文部科学大臣決定の「高大接続改革実行プラン」(2015年1月)そして高大システム改革会議の「最終報告」(2016年3月)が出そろい、現行の大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と、新たに導入する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の方向性が固まってきたタイミングでの事です。

 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に改革のエネルギーを注ぐよりも、高等学校段階の基礎学力の定着度合いを客観的に把握する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」をしっかりと作り上げることが、高校教育の質の向上につながり、高大接続の土台となると期待を表明しました。4年制大学志願者の約7割を超える50万人以上が志願するセンター試験ですが、センター試験を利用する選抜方式で大学に入学する者は3割ほどに過ぎません。短期大学・専門学校進学者や就職者も含めた教育接続や質の担保の為には、センター試験をいじることでは無く、より基礎的で包括的な学力把握のインフラを、高校と大学の関係者が連携して構築しなければ、意味がないからです。

 しかしその後の展開を見ると、ある程度予想もしてましたが、残念な方向に変わってしまったように思います。2017年7月に公表された「高大接続改革の実施方針等の策定について」において、それまで議論してきた「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の正式名称は、それぞれ「大学入学共通テスト」と「高校生のための学びの基礎診断」とする事になりました。「大学入学共通テスト」は、大学入試センターが引き続きその実施運営の中心組織になるのに対し、「高校生のための学びの基礎診断」については、それまで検討していた大学入試センター(ないしはこれを改組した新組織)による直接実施案などは退けられ、一定の要件を満たした民間の試験等を認定するという仕組みになることになってしまいました。なお、現在その認定基準・手続等についてのパブリックコメント(意見)募集が、1月13日締切で実施されています。

 高大システム改革会議の「最終報告」(2016年3月)の段階でも、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」について、当面は大学入学者選抜(や就職)には活用しないとするなど、腰の引けたスタンスが気にはなっていましたが、結局のところ改革のリソースは、「大学入学共通テスト」にばかり注がれてしまったようです。

<中編へ>
(出光 直樹)

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大学50分以内選択

 先日、数校の大学関係者と忘年会がありました。各大学の理事長や事務局長や理事のそうそうたるメンバーでした。その時の会話で印象に残っているのが、「最近の学生の通学時間」です。参加していた大学の方から、高校生から選ばれる通学時間がドアツードアで50分だというのです。自分の偏差値で、推薦合格できる50分圏内の大学に進学するというのです。まるで、短大と同じような話に驚きました。その後、どれくらいのレベルの大学なのか聞きたくて「日東駒専は違うでしょ」というと「いやいや、同じようなもんですよ」というのです。では、どのくらいのレベルの大学が通学時間を考えないで受験するのか聞くと、MARCHクラスでギリギリだというのです。以前、高校の進路の先生方に聞いて驚いたのは、「私の成績で60分で、自転車で通える大学ありませんか」という話でしたが、それが10分短縮していることに驚きました。都心に住む高校生は、通学時間ドアツードア50分が当たり前の感覚になってきているということです。

 なんとなく思い当たるフシがあります。私は、現在東村山に住んでいますが、20年前は高田馬場に住み、職場は新宿や日本橋でした。当時は、時刻表など確認せずに日々通勤していました。なんといっても、池袋や新宿で呑んでいてもタクシーに乗っても2,000円以内で帰宅できる環境でした。都内に住んでいると、どこに行くにも近い感じがしていました。それが、東村山に移り住んで変わったことは、家を出る時には時刻表を確認するという習慣が身についたということです。住んでいる地域によって、人間の行動が変わることを、身を以て知りました。

 ふと気になって、最近の電車の時刻表を調べてみました。山手線のピーク時は、9時台で1時間に22本の電車が走っていました。東西線は8時台で24本、銀座線は8時台で27本です。都内では、ピーク時は当たり前に2〜3分毎に電車が走っている状況です。少し地方の時刻表も調べてみました。栃木県宇都宮駅からJRで東京方面行きは、6時台5本、群馬県高崎駅からJRで東京方面行きは、8本でした。やはり、10分前後に1本という感じです。通学に不便すぎるというわけでもなさそうです。

 現状の高校生たちにとって、何かが変化し通学時間の許容範囲が50分に変わったということだと思います。

 ここで気づかなければいけないのは、50分圏内の大学という表現でくくられている重要性です。高校生にとって、大学のブランド力など関係なく、自分の偏差値で推薦入学できる50分圏内の大学を選択しているということです。大学改革、特色ある大学と騒いだ結果、50分圏内大学選択になっていたという皮肉ですね。

(秋草 誠)

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会報 『BIG EGG』 2018年1月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

【日時】 2017年12月26日(火) 午後6時〜9時+食事会

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